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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第6章「勃発?第3次世界大戦」編

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第170話「代打要員」

2週間前。香川県丸亀市。丸亀競艇場。


夜だというのに来場者は1万人を超えていた。実況が叫ぶように言った。


「さあ、丸亀の夜空に鳴り響くファンファーレ! 10月の瀬戸内、ここブルーナイター丸亀を舞台に争われた『SGボートレースダービー』、ついにファイナルの優勝戦を迎えています!

秋も深まり、年末の住之江・グランプリへのカウントダウンが始まるこの時期。

すでに今年SG4冠、ここで勝てば12月を待たずして『賞金王当確』の歴史的大記録に手をかける1号艇・嶺龍一。 しかし、その独走を阻まんと、ピットに集いし5人の執念が夜の水面に火花を散らします。

現在の潮は満潮へ向かう時間帯。水面にはわずかにうねりが見られます。これが各選手のスタート、そしてターンにどう影響するか!

ピットアウトが迫ります……さあ、6艇が一斉に飛び出した! 注目の進入、内枠勢はがっちりと主張。6号艇の宇龍正義もここは動きを見せず、最終的な進入並びは、3対3の枠なり。 『123 / 456』で固まりました!」


観客が固唾を飲んで見守る。

1万人の観客がいるにもかかわらず、水音とモーター音が聞こえる。


「インコースには、1号艇の絶対王者・嶺龍一。

2コースには、昨年還暦にして初の賞金王に輝くも、1月の地元・下関で骨折、一時は引退さえ囁かれながらも9月に奇跡のカムバックを果たした不屈の艇王、2号艇・上木通也!

3コース、今年だけで嶺に3度も目の前で栄冠をさらわれ、辛酸を舐め尽くしてきた男。今度こそ打倒・嶺に燃える『ナイターキング』、3号艇・結島慎!

そして、カド4コース! 4年目の最年少、青い勝負服を身にまとった紅一点、4号艇・植村優希! 5月のオールスターで女子2人目のSG覇者となり、8月の地元・蒲郡ではレコードを叩き出した、異次元のスピードスターがここから牙を剥く!

5コース、昨年の琵琶湖を台風の荒れ水面で制したディフェンディングチャンピオン、5号艇・加原紀。この丸亀のうねりも味方にするか!

6コース、3月のクラシック覇者ながら、以降は予選敗退が続きグランプリ出場へ赤信号、背水の陣で挑む歴戦の雄、6号艇・宇龍正義!

大時計の針が動き始めました。 それぞれのドラマ、それぞれの執念を乗せて、ブルーナイターの照明が水面を照らす中、優勝戦12レース、今スタートしました!!

綺麗……いや! 3コースから3号艇の結島慎が、執念の超絶トップスタート!! 一気に内を叩き潰しに行くか結島! しかし、ここはフライングの恐怖がよぎったか、結島はわずかにアジャスト! これを見て4号艇の植村優希がぐんぐんと伸びていく! だが、1号艇の嶺、2号艇の上木も引かない! さあ、運命の1マークの攻防ーーー!!」


白い勝負服の1号艇と黒い勝負服の2号艇が接触する。


「1号艇の嶺がインから先マイを放つ! そこに2コースから上木が鋭く差し込んでいく! 意地と意地、新旧王者が1マークで激しく接触! 両者大きく膨らんだーーー!!

そこに空いた絶好のスペース! 4号艇の植村が、冷静沈着な差しハンドルを突き刺した!! 植村が差した! しかし、わずかに届かない! 接触しながらも脅威のリカバリーを見せた1号艇の嶺が、意地のバックストレッチ伸びを披露! 植村との差は半艇身! ここからは直線のスピード勝負!!

しかし、ここで生きてくるのが植村優希の素質! 身長142cm、体重下限ギリギリの軽さが生む、圧倒的なトップスピード! 8月に蒲郡のレコードを塗り替えたあの伸びが、絶対王者・嶺を捕らえに行く! バックストレッチ後半、4号艇の植村が並ぶ! わずかに植村が前に出るか、しかし嶺も食い下がる! 勝負は2マークへ突入!!」


1号艇と4号艇がほぼ並んでコース左側の第2マークへ近づく。


「1号艇の嶺龍一が内側から力でねじ伏せにくる! しかし、4号艇の植村優希、迷いなき先マイ!!

決まったーーー!!!

4号艇・植村優希、舳先が美しく跳ね上がる! 出口で完璧に決まった高速ウィリーターン!! 丸亀の夜空に、ダイナミックな水しぶきが舞い上がる!

1号艇の嶺も必死に食い下がりますが、植村の艇が完全に前に出た! ホームストレッチ、4号艇の植村優希が単独トップに浮上! 百戦錬磨の怪物たちを相手に回し、弱冠4年目の天才少女が丸亀の夜を支配した! 女子3回目のSG制覇、そして初のダービー女王の栄光へ向けて、今、植村優希が先頭でゴールへと突き進みます!!」


そのまま順位は変わらず、4号艇、植村優希がトップでゴールした。


♦︎♦︎♦︎


「優勝おめでとう。でも、少しいただけないわね。3号艇にスタートタイミングが早いと思わせるためと1マーク、2号艇に魔法を使ったでしょう?その後は実力でねじ伏せたみたいだけど」


競艇選手には拘束解除という言葉がある。

レース期間は外部と連絡が取れないようにスマホや通信機器を預ける事になっている。


自分のスマホを受け取り、電源を入れようとした矢先に声をかけられた。不思議な事に、普段なら出入り口でたむろする先輩達が誰もいなかった。


「あたしはアンタが嫌いだって伝わってなかった?高野舞先生」

「知っているわ。私が梓ちゃんを育てたせいで、関西圏は梓・沙織の『りす組』1チームでまわるようになった。あなた達、『くま組』は南九州に異動となった」


結論だけを舞が告げる。


「『水気(すいき)(きた)れ』!」


その瞬間、天井に水道の蛇口でも現れたかのように水が落ちてくる。ちょうど目一杯、コックを捻った程度の。その効果を知っている舞は横に飛んでかわす。


「今の魔法の威力が強いものを使ったのね。水流に押された3号艇はアクセルレバーを離し、2号艇は1号艇と接触した」


植村優希は元・魔法少女だった。18歳で定年退職後、競艇学校に入学し、競艇選手となった。


「で、その天才教官サマが何の用だい?あたしの様な魔女になれなかった、出来損ないを訪ねて来るなんてさ」


魔法をかわされた事も、レース中に魔法の使用がバレた事も流して優希が聞いた。


「単刀直入に言うわ。来週、長崎県の月島で世界の魔法少女を集めた授業を行うの。主教官は私。副教官は藤原さくらを予定してる」

「それで?」

「その藤原さくらは1週間程で、訓練中のトラブルで退場してもらう予定なの」

「話が見えてきた。その後釜をあたしにやれって事だね。だから、普段なら三国の女子リーグに斡旋されるところを大村の競艇祭に斡旋されたんだ」


それに答えず、舞は「待ってるわ」と言いながら去っていった。

できれば、いいねとかお気に入り登録していただけると嬉しいです。


7/9・10とランクインしました。みなさんのおかげです。ありがとうございます。

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