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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第6章「勃発?第3次世界大戦」編

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第166話「ワールドサタデーグラフィティ」

土曜日、19:00。

長崎県沖、月島。


日はとっくに落ち、付近の島にある灯台と貨物線だけが水平線上にある灯りだった。

黄=リンシャンは周囲に誰もいないのを確認して、スマホを取り出した。


「周首席。突然失礼します。本日の訓練でフジワラ=サクラが負傷しました。ドクターヘリで運ばれましたが命に別状はないそうです。ただ、治療は1月程かかるようです」


♦︎♦︎♦︎


現地時間18:00。

人民の国、首都・京北特別市。

人民労働党本部、書記長室。


「そうか。それで原因は?そうか。ただの事故なら仕方がないな。何かあればまた連絡をくれ。今回は助かった。知っているかいないかで判断が変わる事もある情報だった」


日は落ちたが、付近のビルには煌々と明かりが灯り、車や人々が行き交っている。

週末を前に、誰も彼も浮かれていた。


♦︎♦︎♦︎


現地時間17:00。

ルマニア共和国、首都・ルピアール。大統領官邸。


「そう。連絡ありがとう。ハルちゃん」


大統領官邸の北側、小さな窓から外を眺めながら、岸本梓はスマホをスピーカーモードで通話していた。


日が傾き、一斉に夜市のあかりが灯る。

それを見ながらワインを口にする。


「ゆりあさんの演出か、本当に事故なのか、わからないけれど、他の生徒をよく見ていて。欧州の生徒は特に。きっと慌てているはずよ」


笑いながら、そう告げた。


♦︎♦︎♦︎


現地時間、12:00。

ロクライナ、首都・キウイ。とあるカフェ。


「さくらちゃんがケガって本当なの?」


旧市街の古い街並みに溶け込む、アンティーク調の店内。それを台無しにしているのがマリア=ティモシェンコが持ち込んだ銀色のノートPCだった。


土曜日の休みをハンドメイドのチョコレートとコーヒーで楽しむ人々の中で、オンライン会議をするマリアだけが浮いていた。


「やっぱりさくらちゃん、『魔法』が使えないのね。使えていれば身体強化でケガなんてしてないはずだもの」


今日のチョコレートはやけにビターに感じた。


♦︎♦︎♦︎


現地時間、11:00。

欧州最大の工業国、首都・リーンベル。


ユンゲラ=メルケンは少しだけため息をついた。視線の先にはスーパーの紙袋。

この国では空港などの1部の例外を除いて、明日の日曜日はスーパーは閉まってしまう。

スーパーから帰りついた時、ちょうど通信が入ったのだった。


『やっぱりさくらちゃん、『魔法』が使えないのね。使えていれば身体強化でケガなんてしてないはずだもの』


生ものだけでも冷蔵庫に入れてしまいたい。特に明日の昼のロースト用の塊肉だけは。それを個人的事情と受け止め、『欧州3大魔女』であるという責任感がそれを許さない。


「やはり失策でしたね。3ヶ国のうち、どこか1つ、1人でも送り込んでおくべきでした」


モニターには2人の別の魔女が映る。


『一応、7:MIに情報収集を頼んでいるが離島ゆえに難しいらしい。ただし、運ばれた病院の医療データは手に入った。全治1ヶ月らしい』


流石に女子中高生の中に潜り込む事は、世界最高の諜報機関でも難しかったらしい。


「一応、『森林の国』経由で情報は入っています。魔法の訓練中に水蒸気爆発が発生。爆風で枝が刺さったようです」


まだまだ会議は続きそうだった。


♦︎♦︎♦︎


現地時間、10:00。

連合王国、首都・ドンロン。バーミンガム宮殿。


窓の外は霧が立ち込め、輪郭すら掴めない。


確認はできないが、この霧でもドンロン市民はカフェやパブに向かい、思い思いの朝食を取り、談笑し、時には議論を交わしているだろう。


そこから最も遠い人物である女王エリザードはパソコンでオンライン会議の真っ最中だった。


『「森林の国」経由で情報は入っています。魔法の訓練中に水蒸気爆発が発生。爆風で枝が刺さったようです』


彼女の在位中に世界は目紛しく変わった。

ラジオからテレビへ。そして、インターネットやSNSへ。Wi-Fiさえあれば、後は電源さえあればいいパソコンは非常に便利だと思う。


何しろ、築200年以上なのだ。電話線の工事をしては無駄になったし、テレビのアンテナ線だって同様だ。


その点、パソコンやスマホはいい。どこでも繋がる。しかも擬似的に対面で会議までできてしまう。


「とにかくだ。マリアの言う通り、さくら女史が魔法を使えないと言うのは事実だろう。つまり日本は。いや、ゆりあ女史は我々を信用し、情報を公開したのだ」

『そう捉えるしかないわね』

『わたしもそう考えます』


マリアとユンゲラも同意する。


「2期があれば我々も参加すべきだな」

『それまであちらが待ってくれれば。だけどね』


マリアが皮肉で返した。いや、最悪を想定しておくのも政治家の本懐というべきだろうか。


♦︎♦︎♦︎


現地時間、5:00。

自由の国、首都近郊。アーリントン州、リングレー。CIF(Central Intelligence Freedom-country)本部。


3ヶ月前にCIF長官をプラント大統領が突然、罷免した。新任のポーター=コールマンは目の回るような忙しさだった。


早朝だというのに駐車場は車で埋まり、不眠不休で対応する情報分析官やサイバー部門の者たちの呪咀にも似た弱音がそこかしこできこえる。


もうすぐ夜が明ける。

それは選挙前、最後の週末。


不意に東京のエージェント・スポットから報告が入る。


『日本でワールドカップ優勝者の魔法少女が負傷した』


ポーターは優先度が低い判断した。


♦︎♦︎♦︎


現地時間、19:00。東京都千代田区永田町、第2議員会館。


「さすがさくらちゃん、上手いわね」


佐藤ゆりあが報告を聞くなりそう言った。


「各国とも、想定通りの反応をしているわ」


水田マリがさらにそう報告する。

そして、ここからがマリの本音だった。


「これをチャンスと思って仕掛けてくれれば嬉しいけれど、そうは問屋が卸さない。でしょうね」

「そうね。20世紀のレジェンド達ですもの。それでも魔法少女側では一枚岩にはなったはずよ。私が向こう側なら、分断させて各個撃破を狙うもの」


東京は不夜城のようにどこも明るい。

週末の夜は特に。

かもしれない。


世界は今日も回り続けていた。

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