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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第6章「勃発?第3次世界大戦」編

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第165話「『森林の国』の魔法少女 その6」

「ここがおむつ交換用の部屋よ。そこの戸棚に各サイズが入っているわ。また、申請しておけば部屋にも届けてくれるわ」


セラフィナがそう言ってトイレの反対側、食堂手前の空き教室だと思っていた部屋に案内する。先客を見つけてセラフィナが声をかける。


「ハル。いたんだ」


11人の留学生の中では最年少の9歳。

確か、アズサ=キシカワが大統領夫人のルマニア共和国出身だったはずだ。ハルちゃんも利用していたらしい。訓練中も食堂でも、そんな素振りは一度も見せなかった。本人が上手く隠しているのか、日本のおむつが優秀なのか、その両方なのか。


「ノーラもなんだ。実は昨日からリンシャンも使っているよ」

「ノーラとリンシャンはここ2日で、すごく魔力消費が伸びたからね」


プライバシーなど気にもせず、ハルちゃんとセラフィナがそんな会話をしていた。


私は恥ずかしさから何も言えず、そそくさと交換を済ませて交換室を後にした。


♦︎♦︎♦︎


「コルホネン。今日はさくら副教官とマンツーマン指導だ。あの無人島まで2人でホウキで行ってくれ」


マイ先生が午後の実技指導が始まると共に言った。


周囲から向けられる視線はさまざまだった。嫉妬のような単純な者から、そこに追いつくといった目標を据える者。気になったのが諦めた視線を送る数人だ。


「私、魔法が使えないから、2人乗りで行こうか。あの島まで」


缶に入ったジュースを飲みながら、サクラ副教官が軽く言った。まるで残された10人の視線がないかのようだった。


言われた通り、2人乗りで無人島を目指す。


「ここには焼却場があったんだって。向こうが炭鉱だから、火を使うのが危ないって事でこの島にあったらしいよ」


その説明を聞くと、ここが少し開けた平地なのもうなづける。そこに先程まで飲んでいた缶を置いた。


「この辺かな?缶を凹ませないように注意して、倒して」


距離にして100m。わざわざこの島で行う意味があったのだろうか?


「ウォーター・シュート」


全力とは程遠い、水鉄砲程の水流・威力。

難なく空き缶は倒れた。


「流石だね。次は同じ条件だけど、氷でやって。今度は缶が潰れてもいいから」


環境税の明細書を渡すようにサクラ副教官が言った。


「別に八百屋にサーモンを注文するような事、言ってるつもりはないけれど?」


そう言ってその辺に落ちていた、木の枝で地面に書く。出来上がったのは午前中によく見る関数の座標平面だった。


「ノーラさんは今、缶を撃つ時、量とスピードとか形状をイメージして撃ってるよね?それを点Pとする」


つまりは量がX軸。スピードや形状がY軸だろう。確かにそうだと思う。


原点Oに今まで書いていた、枝を立てた。


「それにZ軸、温度を入れて見て?」


その瞬間、脳のどこかで音がした。

鍵が開いたとかドアノブを捻った時のような『カチリ』と。


同時に『できる』と思う。


「やってみます。『アイス・シュート』!」


缶からは外れたし、何より途中で溶けた。結果だけ見れば水の魔法と変わらない。


だが、氷は確実に出た。


「できた!外れちゃったけど…」

「うん。これでまた制御を高めていけば魔法の幅は増えるね」


サクラ副教官も嬉しそうに一緒に笑う。


「もっと試していいですか?」

「うん。いいよ。けれど約束して、島の他の留学生にはまだ教えない。制御が甘いと危険な事もあるの」

「危険な事?」

「温度を操るって、冷やすだけじゃないんだよ」


まさに私が試そうとしていた事だった。


「制御が甘いと90℃のお湯でカップラーメンを作れるぐらいのイメージがバケツをひっくり返したみたいになっちゃう。どうなるかぐらいわかるよね?」


私は息を飲んだ。


「だから、舞先生の科した制御訓練をクリアした者にしか教えないと決まったの」


私は納得する。

マイ先生の課題は2段階。『テンペスト』による限界の更新と綿密な制御だ。


先程の視線を思い出す。

この方法なら、制御をクリアできない者でも複数の選択肢を産むだろう。ただし、同時に魔法は危険なものになる。


「じゃあ、もう少し慣れたらあっちに戻ろうか」

「はい!」


嬉しくなって訓練を繰り返した。


だが。


氷の柱を作って、これの温度を変えられないか試している時だった。


「ノーラ!それは…!」


ボンッ!と衝撃波が走る。

知っていたはずなのに、忘れていた。

いや、盲点だった。


水蒸気爆発。


風圧で土が舞い上がり、思わず目を閉じる。


咳き込みながら目を開けた。


サクラ副教官のお腹には、さっきZ軸に見立てて地面へ立てた枝が深々と突き刺さっていた。

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