第156話「魔法の使えない私」
東京都文京区、私立・明王義塾学園・秘匿施設、魔法少女寮。
「精密検査の結果、異常ナシよ。いたって健康。それじゃ、最後に古典的、魔法検査をやるわね」
前田優子先生がそう言った。魔法少女のために医者になった元・魔法少女で『魔法とは何か?』を追求する研究者でもあった。
体重計の上に乗る。
「では、何でもいいわ。呪文を唱えて。さくらちゃん」
「はい。アイスキューブ!」
何も起こらない。本来なら、箱状の氷が出るはずだった。
「やっぱり。大気中から魔力を取り込めていないわ。だから、魔法が使えない」
前田先生がそう結論づけた。
「前田先生。魔法が使えなくてもおもらしが起こるんですが?」
「それは普通よ。だって、さくらちゃんは魔法少女になってから『おむつにするのが普通』だって思っているでしょう?元々、あなたは世界で1番『魔法を使える』人間だったーー」
魔法少女ワールドカップで、『欧州3大魔女』を含むトーナメントを勝ち抜き、優勝した。
「ーーそれはつまり、1番、大気中から水分を取り込める人間だったのよ」
要約すると、私は魔法も使えない、おむつをしてる中学3年生の女の子であるって事だ。
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「へぇ、魔法が急に使えなくなる事もあるんだ」
そう言いながら、髪にハサミが入る。
ここは学校近くの美容室で、魔法少女御用達。というか、元・魔法少女が経営している美容室なのだ。
「はい。眠っていた影響なのかなぁ………」
「それはないと思うわ。ゆりあさんの魔法はAランク。最低値だもの」
連合王国で行われたワールドカップから帰国直後、私はゆりあ大臣によって眠らされ、気がついたら3ヶ月経っていた。その間にユウ君はルマニア国に出向し、『チーム・スプリング』は3名の体制に戻っていた。
「前髪どうする?」
私の不安をよそに、カットは続いていく。
「前と同じで。あと、ストパーもお願いします。どうせ、出動もないですから」
「ふふん、そうね。前は途中で出動になったわね」
笑いながらも、嶺さんのハサミは動いていく。
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『人民の国』東部、某島。
「ねえ、そろそろ教えてくれない?あと1人について」
エマ=ブラウンが紅青に聞いた。
「あら、エマ。訓練はいいの?」
「あまり派手にやると周辺国にバレるのよ。それより、誰なのよ?」
その言葉に紅青が笑う。
「うふふ。『もう1人』はね。いないの。でも、1つ余っている事に意味があるの」
「なるほど!」
納得したようにエマも笑う。
答え合わせのように続ける。
「存在しない『もう1人』をずっと探す事になる。確かに消耗戦を強いる結果になるわね!」
「そう。勝っても負けてもね」
だが、エマは少しだけ気に入らない表情を見せた。いや、懸念していた。
「いい案だと思う。でも同時にそれはこちらの戦力が減る事を意味するわ。だから、相手も弱くなってもらいましょう」
紅青をもってしても、意味がわからない。
「具体的に言って」
「簡単よ『分断』を使うの。それだけで相手の数が減るのよ」
総統や宣伝相を裏で操ったエマ=ブラウンの本領発揮だった。




