第154話「20世紀からの使者(後編)」
衛星軌道上、『おりひめ2号」。
ダキア公国の独裁者の婦人、エレン=チャウシェ。
夫のマルコシアス政権下で豪奢を極めた、イルアナ=マルコシアス。
『ファシスト』の代名詞の妻、エマ=ブラウン。
そして、自らの手で数万人を亡きものにした魔女、紅青。
4人の復活の情報に場が完全に沈黙する。
「タイミングからして、『繋がり』があるのだろうが。現状、4人全員の『5W1H』がわからんからな。対策のしようがない」
20世紀から女王として君臨するエリザードがそれを破った。他の者は21世紀になって政治に携わった者が多い。
「情報収集を行うのは当然として……ゆりあ大臣、お願いがあるのだけど……」
メルケンがそれを継いで言った。
「何でしょう?」
「そちらも紅青の対策をしなければいけないのはわかる。だが、非常時には藤原さくらを貸していただけないだろうか?」
意外な事に、ゆりあは首を縦に振らなかった。
「残念ですが、対応できかねます。と、いうより藤原さくらは現在、魔法が使えません。原因を探っていますが不明です」
「何と!さくら女史が?」
女王エリザードすら声が裏返る程驚く。
要請したメルケンもそんな事態は想定していないようだった。
「日本の魔法少女の現状を正直にお話しします。『魔法少女ワールドカップ』の時から、日本の最大戦力トップ3人が戦闘投入不可能です」
全員が梓を見る。
「ご存知のとおり、岸本梓は明日から『ルマニア共和国大統領夫人』です。そして、先程説明したとおり、藤原さくらは魔法が使えない。最終に広井夏樹は魔法少女ワールドカップ決勝戦以降、失踪しています。彼女の目的は明確に『魔法のゼロ化』ですから、今回の件とは無関係でしょう」
全員を代表したようにエリザードが口を開く。
「日本の置かれた状況はわかった。さくら女史が戦えない以上、別の対策を考えねばならんな……」
その言葉を待っていたように、ゆりあが再び発言する。
「そこで提案ですが、『将来有望な魔法少女』を数名日本に預けてもらえないでしょうか?広井夏樹、岸本梓を育てた教官、高野舞が日本で指導いたします」
その提案に全員がうなづいた。
「なるほどな。連合王国としても問題ない。すぐに人選させて送り込もう」
エリザードの言葉にメルケンも同意する。
「こちらも異論ないわ」
今まで黙っていたマリア=ティモシェンコが意見する。
「基本的に問題なし、けれど『北の大国』も入れてあげて。ずっと考えていたけれど、『残り1人』ってやっぱり、『北の大国』か『自由の国』だと思うのよね」
「それ、私も思いました。『宇宙兄弟』を手玉にした『女優』とか『NKVD』出身の『女スパイ』とか」
梓が同意する。
それを聞いてマリアが笑う。
「人選がマニアックね」
「過去の失敗に学べるのが現代の強みですから」
その梓の言葉を全員が眩しそうに見る。
「ともかくだ。まずは情報収集。並行して日本で若手を育成し、対抗する。皆、異論はないか?」
まとめるようなエリザードの言葉に、全員がうなづいて会議が終了する。
「それはそうと。すまないな、梓女史。結婚式前日までこんな話に付き合わせて」
「いえ、わざわざ『20世紀から使者』まで来てお祝いしてくれるのです。『歓迎』してやりましょう」
梓は魔女らしく笑った。




