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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第6章「勃発?第3次世界大戦」編

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第152話「情報」

ロクライナ南西部、チルノフクィー市。


戦争のたびにこの地は支配者が変わり、この都市は多民族都市として機能していた。20キロも走れば隣国である『ダキア公国』との国境にも程近く、現在では昨年まで続いた『北の大国』との戦争で産み出された難民の避難先にもなっていた。


マリア=ティモシェンコは石畳の通りを歩いていた。実は彼女のお気に入りの街である。それはこの街に『旧ソ連』の匂いのしない、『ヨーロッパ文化』を感じられる景観が残っていたからである。


その中心が世界遺産・チルノフクィー大学である。ビザンティン様式、ロマネスク様式、ゴシック様式、ムーア様式が融合した美しい赤レンガの建物があり、正教系の主教の邸宅として建てられた。中に入ればフレスコ画や大理石でできたホールなど美しい内装が保存され、圧倒されたはずだった。


そこには人の立ち入りを規制するテープが張られ、荘厳さを汚していた。


「キリノ、どんな感じ?」


キリノ=トルチノフ。マリアの右腕であるアレキアンドル=トルチノフの長女で30代半ばの女性だった。


「『事故』に見せかけた、『事件』。いえ、『テロ』ね」


3日前、避難民のためにシュトーレンを用意して配ろうとしたボランティアが聖堂で12人も死亡した。それを捜査するために2人は、このチルノフクィーまでやってきたのだった。


「どういう事?」


マリアが聞いた。


「硫黄を含む入浴剤に酸素系洗剤が混ざると硫化水素が発生する」


即座にキリノがそう言って、更に続ける。


「問題はそういう『事故』があったから、メーカーはPH値を調整して、硫化水素の発生を微量に抑えて販売していた」

「それで?」

「今回はアルカリ性の薬品を混ぜる事で大量の硫化水素が発生、12人もの命を奪ったんだ」


『北の大国』がボランティアを殺害する訳がない。いや、可能性として低い。彼らなら、首都・キウイで行うだろう。


マリアが即座に思考に沈むが、それをキリノが遮る。


「聖堂内の防犯カメラは硫化水素の腐食で駄目だった。けれど、屋外の大学のカメラは生きてた」


そう言って、スマホを操作してマリアのスマホに動画を共有する。


それを見たマリアが見るからに怒りを露わにする。


「やってくれたわね。あのアマ!」


動画を見たキリノには誰かわからなかった。


「エレン=チャウシェーク。『ダキア公国』の元・大統領夫人よ」


不快感を隠しもせずに、マリアが吐き捨てるように言った。



♦︎♦︎♦︎


同じ頃、ルマニア共和国。首都・ルピアール。大統領官邸。


「新婚の友達の家に行く時にケーキを買う事にしました。ケーキは何個必要でしょう?」


椎葉ユウがクイズ番組のように聞いた。

聞かれた斉藤フミが即答する。


「夫婦だから2つ。自分も食べるなら3つ」

「残念。正解は4つか5つなんだ。旦那さんは再婚で連れ子が2人いたんだ」


不服そうにフミが言う。


「そんなの言ってないじゃない」

「そう。でもその可能性を探っておくのが『インテリジェンス』だよ。外交の場合、知らない事でとんでもない問題や戦争になったりするからね」


それを目を細めて聞いている人物がいる。日本人よりもやや濃い褐色の肌に、スーツに身を包んでもわかる筋肉質な身体。この国の初代大統領、ユーリ=シトロエンだった。この国が軍政だった時代に、情報部門出身だったからだ。


なおもユウの説明は続く。


「ーー直接でも、近所に聞くのもアリだし。中には洗濯物から推測する人もいる。やり方は色々ある」


それを遮るように、勢いよくドアが開いて数名が入ってきた。岸本梓大統領補佐官、張リャンシャン交通大臣、ルイス=ジョンソン商務大臣にスミス=チャーウィン大蔵大臣だった。


それもそのはず、この部屋は大統領執務室なのだ。


「2人ともそのままでいいわ。一緒に参加して」


梓が2人に向かって言った。ユウが即座に出て行こうとしたのを気づかれたらしい。


「あなた達、2人にも関係ある話なの」


そう言われては退出できない。2人とも空いた席に腰を下ろす。

即座に大統領を中心とした閣議が始まった。


「首都ルピアールの東、ラシフォン州の国境付近の街、コートデューで妙な動きがあるの」


ラシフォン州は州都ベイボンで、世界遺産の壁画があったはずだとユウは思う。つまりは観光州で外国人の出入りが多い。それ以外の産業は歴史的に酪農家が多い。


梓の説明は続いていく。


「ベイボンの観光受け入れを目的に『人民の国』主導で建てられたホテルが、4年前、コロナの影響で閉業した。ここに犯罪者集団が住み着いているようなの。日本式に言えば『トクリュウ』ね」

「なるほど……この国にとって重要な賓客を招いての結婚式は2週間後だ。どうする?」


ユーリ大統領が梓だけでなく、全員を見回して聞いた。


「先程の例え話で言えば、出発まで時間のない中でケーキを用意しなければならない訳だが?」


ポツリとユウが呟いたが、日本語であったため、『なんだ?』と怪訝な顔をする者もいる。


「犯罪者集団とわかっているならば、遠慮なく潰した方がいいのでは?」


ニコリと笑って今度ははっきりと言った。


「不在なら、ケーキを買う必要もない訳です」


ユウの発言に梓だけが笑ってうなづいた。

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