第144話「ユウのレポート」
「ユウちゃんの言った通りだわ。宮本孝子も大将の胃の中からも毒物は検出されなかった」
田中管理官が検死結果を電話で聞いてそう言った。
「毒じゃないなら、死因は?」
「大将も宮本も心不全だって。山岡幹事長も同じだったけど、救急隊のAEDで一命を取り留めたって聞いたわ」
「1番『なんでもあり』な死に方だよね」
ボクが投げやりに言った。
「それから、この事件。公安主導での捜査が決定したわ」
「お宮入り前提?」
「いいえ、『事件自体を非公開』にするらしいわ」
与党幹事長が毒殺(と言っていいのか不明だが)未遂。しかも使われた毒物も、手口も不明。そもそも『事件』なのかもわからない。マスコミが喜びそうな素材がゴロゴロある。
「1番いいのは『事故』にしちゃう事だよね」
「確かに。上に言ってみるわ」
「『世界調和協会』は?伊都子さんから何か連絡あった?」
「まだよ。宮本孝子に『擬態』して潜入してるから、連絡は少し時間がかかると思うわ」
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同じ頃、東京都千代田区永田町、文部科学大臣室。
「ごめんね。忙しい時に」
「全くよ。総理も官房長官も大慌てよ」
佐藤ゆりあが訪問して来た水田マリに愚痴をこぼす。
「それで用件は?」
「コレよ。椎葉ユウちゃんのレポート」
「ああ、そう言えば昨夜『エシュロン・ミラーリンク』の使用申請を許可したわね」
「ええ、それで結構、刺激的なレポートが上がったわ」
「『長田洋子が複数存在する可能性について』ですって!」
「内容を要約すると可能性は2点よ」
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1.藤原さくらと同じく『長田洋子』自身のクローン。
・既に藤原さくらでその存在は証明されている。
・複製した時点で『1点モノ』とは考えづらい
・藤原さくらの例だと条件は2つ。
①高レベルである事
②少なくとも母親が不妊治療を行なっている事
・以上2点を満たす魔法少女は3人。
2.前田優子医師による論文により、母親が『魔法少女・魔女』だった場合、子供のDNAが自然界では考えづらい確率で一致する。
長田洋子(上田理子)の場合、『妹』が誕生した可能性が存在する。
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ゆりあが珍しく絶句して驚く。
「椎葉ユウちゃんが『このタイミング』でこちらにこのレポートを提出した。多分、疑っているのよ」
マリの分析に、ゆりあもうなづきつつ言う。
「至急、全魔法少女をDNA検査して。ユウちゃんは3名ピックアップしているけど、こうなったら全員対象にしましょう」
「それで、長田洋子のコピーが出てきたらどうするの?さくらちゃんみたいに封印する?」
「いや、この先もまだまだ出てくる可能性すらあるわ。むしろ、さくらちゃんの方を『抑止力』として復活させる事も考慮しないと……」
そう言ってゆりあが思考の海に沈む。
こうなったゆりあはしばらく動かない。それをわかっているマリは静かに大臣室を後にした。




