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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第5章「公安」編

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第139話「1日秘書」

東京都港区白金台。


(「ユウさん、おにぎりで大丈夫かしら?若い人だからサンドイッチとかの方がーー」)


伊都子の脳内に、孝子の思考が流れ込んで来る。昨日は全く思考が読めなかったというのに。


だがーー


スマホの着信と共に、再び思考が読めなくなる。


さすがに伊都子は気づく。


(……同時に複数の事を考えると、『読めない』って事もあるのね)


おむつ交換や着替えを済ませて、和室を出る。リビングに面して、小上がりになったそこは襖を閉める事でもう1部屋増えるように設計されていた。


そもそも、昨日は孝子のマンションに泊まらせてもらったのだった。


「……おはようございます」

「おはよう、よく眠れた?」


ポットからお湯を注ぎ、インスタントの味噌汁をかき混ぜながら、孝子が聞いた。


「……可もなく、不可もなく」

「正直でいいわね。インスタントの味噌汁とおにぎりで悪いけど、朝ごはんにしましょう」


テーブルに湯気が立ったおにぎりと味噌汁が2つ置かれている。


「「いただきます」」


互いにタイミングを見計らって声を合わせていただく。おにぎりは中に昆布の佃煮が入っていて、コンビニのそれより塩が効いていて、不思議と伊都子の好みの味だった。


伊都子がパクパクと食べ進めるのを見て、安心したように、孝子はタブレットを開く。


「ユウさん、今日は1日、お願いね」


昨日、寝る前に言われて了承していた事だった。すなわち、『孝子の1日秘書』だった。


やる事は簡単、ただ孝子に1日付き添っているだけだ。公安としての『内部潜入』にこれほど、うってつけな提案はなかった。


「まずは服をどうにかしましょうね。その服だと秘書には見えないわ」


確かに白のブラウスはともかく、ワインレッドのロングプリーツスカートでは『秘書』には見えない。


♦︎♦︎♦︎


マンションのロビーで待っていた高級ワンボックスに乗り込み、車は昨日集会をやっていたホテルの近くに止まる。


「1時間ぐらいで戻るわ」


運転手にそう告げて、車を降りて向かったのはブティックなのかセレクトショップなのかわからない、個人経営っぽいファッション店だった。


「しーちゃん、ごめん。この子よ。よろしく!」


顔見知りらしく、伊都子を店主らしき女性の前へ連れて行く。


「連絡もらってたから、大丈夫よ。この体型ならここにあるもので充分だし。リクエストは?」

「『デキる秘書』っぽく!」


その号令とともに、店の2人がテキパキと決めて行く。


20分で服や小物が決まっていく。グレーシュ色のジャケットと膝丈のスカートに、先程より少しだけ胸元の開いた白のブラウスに金のネックレス。パンプスからヒールのある靴へと履き替える。髪型もオールバックから後ろで1つにまとめて、薄く化粧までやってもらう。


45分で伊都子は別人に変身した。


「青森から元旦那さんが追っかけて来ても、これならわからないわね」

「流石、私でしょ!あ、代金26,000円です」


鏡を見ている伊都子の両隣で声がする。


「相変わらず、商売が下手ね。はいこれ。お釣りはいいわ。営業時間前に無理言ったし。ユウさん、どう?」

「……最初に鏡を見た時、『誰?』って思いました」

「正直でいいわね」


来ていた服を受け取り、店を出て、車へ向かって歩き出す。だが、ヒールに慣れてない伊都子は歩き方がぎこちなくなる。


その様子を見て孝子が少しだけ笑う。


「その服は鎧よ。だから最初は動きにくいものなの。じきに慣れるわ。自転車と同じよ」


伊都子はそれだけで先輩達の偉大さを知る。佐藤ゆりあに水田マリ、そして目の前にいる宮本孝子にも。

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