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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第5章「公安」編

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第135話「怪物と妖怪」

首から切断された死体が廊下に転がっているのに、誰一人として顔色が変わらない。辻村元中将のメンバーはもちろん、岸川信男も5歳の幼女である上田理子も。


「あーあ、汚れちゃった。お母さんから『偉い人の前に出るから綺麗な服で』って言われてたのに」


その言葉に岸川信男だけが笑う。


「面白い子だ。お嬢さん、名前は?」


生成りに花柄のワンピースに返り血が数滴ついて、赤くなっているのを擦る手を止めて、理子が返す。


「元なでしこ少女隊、上田理子兵曹長です」

「兵曹長?その歳で、かい?」

「B29を2機、B25を8機落としたので、その階級だと司令官から階級証を賜りました」

「『天才』じゃない!」


横から声が響く。辻村元中将の横にいる女の声だった。だが、理子にはそれが不満だったようでそれが顔に出ていた。


「たった2文字で片づけないで!精神感応のせいでお腹の中にいた時から自我が与えられ、暗闇で数ヶ月を過ごし、やっと外に出たと思っても声帯が発育してないから声もあげられない気持ち、あなたにわかる?」


言われた女は黙り、代わりに岸川がうなづく。


「なるほど。『怪物』だね」

「また2文字!」


怒る理子を見て、また岸川は笑う。


「それだけで君を表現できるとは思っていないよ。だが、誰かに『説明』する時、短い方が齟齬が少ないし、わかりやすい。違うかい?」


一瞬、理子が言い淀む。

生まれて初めてかもしれない。


「……そう言うおじさんは『妖怪』!」


悪口にしか聞こえないが、岸川はそれを気にしない。


「何故、そう思った?」

「さっきから『思考』が読めない。つまり、人間じゃない!」


今度こそ、岸川は声に出して笑った。


「わぁはは!愉快だ!……タネ明かしをするとね、半島で研究していた『異能少女』にも思考が読める者がいた。だが、10個の事を同時に考えると途端に相手は読めなくなった。君も複数の能力を使えるようだしね」

「おじさん、凄い!」

「おじさんじゃない、岸川信男と言う。今は無職だが、10年後には首相になる男だ」

「10年後…首相……その時、わたし何してるんだろ?」


岸川の言葉を反芻しながら、理子が何かを考えている。岸川にはそれが手に取るようにわかった。なぜならこの2人は『同類』だったからだ。


「今から手紙を書くから、お母さん宛と私の弟宛に2通。お母さんに見せて了承を得たら弟を頼るといい。鉄道省の役人だ。私より性格に難があるが無下にはしないはずだ」


すっかり蚊帳の外に置かれていた辻村元中将がやっと声を上げる。


「総裁。我々は?」

「大陸にでも行ったらどうですか?我々がいなくなった事で、内戦の只中でしょう?他のアジアも独立運動や戦争が起こるでしょう。奥方の『転移』を使えば、難なく行けるでしょう?」


その言葉に辻村が前を向く。


「君らは『戦争』以外を知らないから、不安なだけでしょう?ならば『戦争』のあるところに行きなさい」

「は。由美子頼んだ!」

「はい、あなた。『転移』!」


辻村元中将のメンバーが消える。


「あ!『照銀事件』の犯人!」

「……君はその事件を追ってここに来たのですね?『異能』や『魔法』は秘匿するものです。私から適当な人間を逮捕するように言っておきます」

「牢屋の中なのにできるの?」

「『自由の国』風に言えば『ギブ・アンド・テイク』ですよ。GHQのトップは大統領選に出るらしいし、やり方はいくらでもあります。日本語では『懐柔策』と言います。覚えておきなさい」

「わかった……。いえ、わかりました」


こうして怪物と妖怪は出会った。

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