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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第5章「公安」編

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202/230

第133話「照銀事件」

昭和23年(1948年)3月、神奈川県川崎市。


国鉄川崎駅の東口のあたりに、ワタシと理子は『なでしこ少女小隊』解散後は住んでいた。旧軍に顔がきいて、終戦のどさくさで手に入れた物資を販売していた。そのうち駐留軍にも伝手ができて、親娘2人の衣食住には困らない程度には稼げていた。いわゆる『闇市』と呼ばれるものだった。


「上田中尉、息災そうだね」


ワタシがやっている店に来たのは、上田光夫『元』少佐。今田少佐が沖縄戦にいった後、後任で来た人だった。帝大を学徒動員で休学し海軍に士官候補として入った彼は軍にいた時と同じく、柔らかい笑顔が印象的だった。さらに軍に入る前、又従兄弟で親交もあった。


「理子ちゃんも、大きくなったね」


そう言って、5歳になった理子の頭を撫でる。理子は直立不動で敬礼した。


「ははは、もう『少佐』じゃないんだ。今は『警部補』さ」


理子が首をかしげる。


「大学に復学して、すぐに卒業さ。実家が原爆で全滅したからね。今は警視庁にいる。簡単に言えば警察官になったんだ」


上田元少佐、いや警部補は理子に言っているようでワタシにそう言った。


「単刀直入に言う。『照銀事件』を調べている」


2ヶ月前、東京都豊島区、照國銀行・要町支店。


閉店直後に「東京都防疫班の職員」を名乗る男が銀行を訪れ、行員・関係者12人を毒殺し、現金20万円(現在の価値換算で1000万円相当)が奪われた事件が起こった。その当時、2か月たった今でも世間を騒がせていた。


「被害者が吐血した事で、下足跡が残っている。21cmだ。女性の可能性が高いが、生存者は男性だったと言っている。また、被害者には子供もいた。それらも含めて全員が同じ瞬間で薬品を2回も飲んでいるーー」

「まさか、『催眠』?」


ワタシのできれば当たらなければいいと思う気持ちを即座に上田警部補が否定する。


「僕もその可能性があると思っている。上田中尉。いや、ヨネさん。できれば手伝ってください。あなたの方が『魔法』に詳しい」


ワタシの答えを聞く事なく、事態は進む。


「……そこまでわかっているなら、最悪の事も考えるべきじゃない?」


理子の声だった。上田警部補が怪訝そうにこちらを見た。


「理子は5歳なのに読み書き、計算、交渉までこなすわ。仕入れの間に1万円の店の売り上げがあったぐらいに」


それを証明するように丁度、店に来た客に缶詰を売っていく。


「はい、お釣り20銭ね」


それを見ていた上田警部補が理子に尋ねる。


「さっき言ってた、『最悪の事』って?理子は何を想像している?」


その質問に5歳とは思えない、真顔で理子が答えた。


「まず『魔法』と『薬品』。この2つから連想できるのは?」

「旧陸軍大陸特殊部隊!だろ?」

「そう。それと場所、『豊島区』だよ?」


ワタシも横で聞いていて、背中に嫌な汗が流れた。


「まさかーー」


その場所は『戦争を始めた』人間達が集められていた。ゆっくりと上田警部補が続けた。


「『巣鴨プリズン』」


理子がゆっくりと首肯した。


「正解。『催眠』があれば『戦争を再開』すらできるよ?」


♦︎♦︎♦︎


同じ頃、新宿のとある簡易旅館。


「諸君、準備は整った。明日、決行する」


狭い部屋の中に男性3人と女性2人の5人が車座で座っている。


「まだ『講和条約』にサインはしていない。つまりはまだ『戦争中』なのだ」


いかにも『軍人』という、筋肉質の男がそう言った。


「心強い事に、半島にあった研究所から『異能少女』も手助けしてくれる。我々は兵器は持たない。しかし、『異能』を持ってすれば『戦争継続』は可能である。諸君らの奮戦を期待する!」


彼の名は辻村敬之。旧陸軍では『作戦の神様』と言われた男だった。

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