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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第5章「公安」編

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第128話「出てきたもの」

「ほう、そういう格好をさせると未成年には見えんな」


山岡幹事長が言った。

ボクはシンプルな紺の膝丈のワンピースに薄手のベージュのコート、派手すぎないがキチンと『している』事がわかる程度に化粧をしてこの場にいた。


「……すいません、メールでも良かったんですが……」


そう。ボクが山岡幹事長に『お聞きしたい事があります』とメールしたところ、『今晩8時、ココで』とURLのついた返信があった。


それがここ、銀座の会員制のバーだった。


「構わんさ、たまには若い娘と飲んでもバチは当たるまい」

「あら、私は若い娘に入りませんか?」


山岡幹事長の冗談を軽く刺すのは佐藤ゆりあ文部科学大臣である。言わずもがな、ボクの上司にあたる人だ。


「質問の内容から、この2人がいた方がいいと判断した。ちょうど、補正予算の件ですり合わせも必要だったからな」

「そっちは済んだから、ユウちゃんの用事を優先して大丈夫よ」


ボクがこういう場所に慣れていない事を察してか、2人とも穏やかに接してくる。


「では、単刀直入に。昨年12月24日の『長田洋子の最期』についてです」


それを聞いて、佐藤大臣が少しだけ目を伏せた。

この2人はそれの目撃者というか当事者だ。


「長田洋子は拳銃による自殺だった。でも『魔女』に銃弾なんて聞かないのは、2人ともご存知のはずです」


それを聞いて、ゆりあ大臣がグラスをコースターの上にそっと置いて口を開く。


「それは私から説明するわ。昨年12月24日のクリスマスイブ、私達と『シークレット・ヘブン』は全面対決をしていた。ニセコ、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡の8ヶ所でほぼ同時に。これが前提条件よ」


それはボクも知っている。というかその時、横浜でボク達とさくらは戦っていた。


「そして、『東京』は八王子に長田洋子が現れた。ヒロイ型AMFG(アンチマジックフィールドジェネレーター)で魔法を無効化した結果、身体強化はできなくなる。だからこめかみに拳銃を当てて、引き金を引けば一般人と同じく『自殺』できる。これは事実よ」


それを継ぐように、今度は山岡幹事長が言った。


「引き金を引く直前、彼女はこう言った。

ーー『終わりの始まり』だと」


それを聞いてボクが笑う。

それを予想していた山岡幹事長も笑って続ける。


「まるで今の状況を『読んでた』見たいだろう?」

「流石、長田さんです。『自らの死』すらプランに入れる。『狂気の沙汰』ですね」


ボクと山岡幹事長を見てゆりあ大臣も笑う。


「まるで親子ね。似てるわ」

「ゆりあ大臣、あなたにだけは言われたくない」

「確かに、佐藤大臣だけは駄目だな」


長田洋子も、藤原さくらも、佐藤ゆりあが『消した』のだから。


ボクの前に洒落たグラスが置かれる。


「ノンアルコールカクテルだ。せっかくこういうところにいるのだから、雰囲気だけでも味わっていきなさい」

「……山岡さん、このシーン撮られたら1発アウトよ?……それにしてもユウちゃんに甘いわね」


山岡幹事長に軽く頭を下げて、淡い青のカクテルをいただく。


「さて、本題ですが、『世界調和協会』の件。感覚的に『長田さんの匂い』がしないんですよ」

「確かに、長田洋子のクローンは世界のどこかにいるだろう。だが、『世界調和協会』の教団内には影も無いな」


ボクの根拠のない言葉を山岡幹事長が同意する。


「簡単には見つからないって話じゃないの?」


ゆりあ大臣がそう言う。

でも、ボクの感覚は違うものを捉えていた。


「伝わるかどうか怪しいですけどーー」


とボクは前置きする。


「ラーメン屋に行って、うどんが出てきた。みたいな」


それを山岡幹事長が『消化』する。『翻訳』と言ってもいいかもしれない。


「なるほどな。『ラーメン』も『うどん』も、鰹節にいりこ、小麦粉に醤油……『材料』は同じだか、『料理人』が違えば出てくる『料理』が違う。同じ原理で『世界調和協会』を見て、逆算すると、長田洋子ないしはクローンが関わっていない。と感じているーーと言ったところか?確かに俺も感覚だけでいえばそうかもしれん」


自分の中を確認するように山岡幹事長が言った。


「逆じゃない?」


ふと、ゆりあ大臣が言った。


「長田洋子のプランの実行、そのものが『目的』とか?」


ボクより幼く見えるゆりあ大臣が、妙な色気を帯びる。


「つまり、“長田洋子を探す”こと自体が間違いなの」


ゆりあ大臣は、

氷の溶けたグラスを指先で回した。


「本人がいなくても回る仕組みを作ったなら、それはもう“勝ち”でしょう?」


その言葉に、

少しだけ背筋が冷えた。


「宗教って、そういうものでしょ」

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