第115話「万博記念公園女性刺殺事件 その1」
品川駅から新幹線で新大阪へと向かう。
「……さくらさん、元気?」
渋谷を出てから、ずっと黙っていた伊都子さんがポツリと聞いた。降り出した雨が新幹線のスピードのせいで横向きに流れていく。
ボクは嘘をつく。精神感応系の魔法少女に意味がないとわかっていても。
「噂の通りさ、魔力の使いすぎでずっと眠ってる」
さくらは魔法少女ワールドカップの帰国後、佐藤ゆりあ大臣によって、睡眠処置が施された。
制御し切れるか不安だったのだろう。
今は八王子市にある病院にいる……はずだ。
ボクを見て、伊都子さんは微妙な顔で微笑む。きっと、慰めているのだ。
その空気を断ち切るために任務の話題を切り出す。
「ところで、この事件さ、どこから手をつける?」
一瞬の間。伊都子さんは窓の外に目を向けた。新幹線は名古屋を過ぎたあたり。東京を出る時に降っていた雨は、こちらでは雲の裂け目から日がさしていた。
「……あなたに、任せるわ」
「わかった。じゃあ、警察署に行こう。陸奥さんの例の件も闇雲に探すより、効率はいいと思う」
「……了解」
その後、窓からこちらに目を向けた。
「……それと、『伊都子さん』でいいわ。脳内と同じくね。アタシも『ユウちゃん』って呼ぶわ」
ボクは苦笑しながらうなずいた。
♦︎♦︎♦︎
大阪府警、千里中央署。
「てっきり、『吹田署』かと思ってた」
「……昭和の時代にここにニュータウンができて、3市にまたがるニュータウンを管轄するためにできたらしいわ。Wikipediaに載ってたわ」
玄関口を通りながら疑問を口にしたボクに伊都子さんが答える。
「……『擬態』!」
「お疲れ様です。陸奥警部、椎葉警部補」
定年間近らしき、くたびれたスーツの男性が出迎える。
「……はじめまして、警察庁公安部所属、陸奥伊都子です。こちらは部下の椎葉です」
伊都子さんと共に頭を下げる。
伊都子さんの魔法で、ボク達は公安職員に扮している。
「捜査本部長の三角二郎です。階級は警視ですが、今回はお力を借りる立場。敬語は不要です」
「……すみません。ご配慮に感謝します」
挨拶も終わり、三角さんが本題に入る。
「それで『防犯カメラ』のスペシャリストとお聞きしましたが?どういう捜査を?」
「ボクの方から説明します。が、まずは防犯カメラの映像を見せていただいてもよろしいでしょうか?」
その声に事前に準備していたらしい、若い署員が対応する。「こちらです」とノートPCが用意されている。
「……ユウちゃん、それを持って現場へ。三角警視、すいませんが手の空いた者を1人お借りしたい」
伊都子さんの指示に三角警視が、すぐに応える。
「青木。頼めるか?」
ノートPCを持ってきた若い署員だった。まだ20代前半ぐらいに見える。
「はい。勉強させてもらいます」
そしてボクの方を向く。
「青木茂巡査です。よろしくお願いします」
「椎葉ユウです。よろしくお願いします」
こうして急造コンビが結成された。
「……アタシは本部で、ここまでの捜査を振り返るわ」
「了解」
ボクは青木巡査の運転する車で、現場である万博記念公園に向かった。




