第114話「3つの事件」
東京都渋谷区渋谷『蛍光出版社』
会議室にボクと伊都子さんの2人が残される。机の上には分厚い捜査資料。
「行った?」
「……アレ」
伊都子さんの指差した先、空気清浄機がある。ボクはおもむろに空気清浄機の電源をとっている、テーブルタップを引き抜く。
「『ボイドニウム・ナノ』!」
会議室内にごく微細なボイドニウムを漂わせる。最近の盗聴器は空気の振動をコンデンサや半導体でキャッチする。ボイドニウムは強アルカリ性。強制的に腐食させる。
「これで盗聴の可能性はないよ」
「……試されているわね」
そう言って笑う。魔法少女は日常的に戦う。必然的にメンタルが強化(麻痺とも言う)されていく。伊都子さんもそうであるらしい。
ボクも笑って言う。
「事件捜査と盗聴、どっち?」
「……両方でしょ」
「だね……だとすると問題はーー」
「……3つある事でしょ」
「だね」
まずは3つの事件のファイルを読み込んでいく。概要は以下の通りだった。
◯事件A『村上市主婦殺害事件』
昨年、4月に主婦が新潟県村上市の義実家から失踪。5月に入り、義実家の庭で腐乱状態で発見される。司法解剖の結果、死因は絞殺とされる。当初は夫に容疑がかかっていたが、死亡推定日時の前後は交通事故で利き腕の右腕が使えず、絞殺、及び地中に埋めるのは不可能。同様に同居する義父も半身に麻痺があり不可能とされた。
◯事件B『吹田市万博記念公園女性刺殺事件』
昨年12月、白昼に大阪府吹田市の万博記念公園でジョギング中の女性が刺殺された。白昼の犯行で目撃者も多いかとも思われたが、10人以上が顔を覚えておらず、付近の防犯カメラに映った身長160cm前後、黒いパーカーのフードを被り、ジーンズを身に着けた者の犯行としかわからなかった。犯行後、その人物は防犯カメラの死角で着替えたのか姿が消え、足取りがつかめていない
◯事件C『横浜市女子大生殺害事件』
今年1月、神奈川県横浜市内から大学に通う女子大生が、年末年始に帰宅していないのを不審に思った両親がマンションを訪問したところ、遺体を発見した。マンションに鍵はかかっており、司法解剖の結果、撲殺され、死後1週間が経過しているとされた。両親が発見時、玄関の鍵はかかっており。事件前後、ロビーの防犯カメラには不審な人物は映っていなかった。なお、両親に内緒で夜職のアルバイトをしており、関係者も多く容疑者を絞り込めていない。
「地域はバラバラ。強いて言えば一年前までの事件……」
と、呟きながらもボクは1つの事件が気になっていた。
「……この事件って……」
やはりというか当然、伊都子さんも1つの事件が引っかかる。
「ボク達が犯人だったりして」
できるだけ、冗談っぽく言ったつもりだった。
「……違うわ。犯人はアタシよ」
大阪支部所属の伊都子さんは、はっきりとそう言った。




