第41話「ルピアールの休日」
10月、ルマニア共和国、首都・ルピアール。大統領官邸。
「梓補佐官、国道1号線計画だが、進捗が早すぎるんだ。現地のチェック体制はどうなってる?手抜き工事の可能性もあるぞ?」
「それはこっちでも把握してる。今のところ問題なしよ。担当者が『鼻薬』で甘くなってるって事もない」
「大統領、例の人民資本の途中撤退の件、カタがつきました。国で一元管理で了承もらってます」
「ルイス大臣、ショッピングモールの件は?」
「計画は順調、ルマニア初出店が35店舗もある。どこのフランチャイズも前向きだったよ」
会議は加速していく中、ユーリ大統領が手を2回叩いた。
「はい。みなさん、ワーカーホリック過ぎです。明日は建国記念日です。全員、大統領官邸への立ち入り禁止とします。しっかりと休みましょう」
わざとらしく言った。
♦︎♦︎♦︎
「まさか『休め』と言われるとはな……」
新任のルイス商務大臣が言った。
「はは、私も最近では『仕事が楽しい』って感覚だったよ」
張大臣も苦笑する。
そこへ。
「はい、ビール2つ、おまちどうさま!」
少女がビールを持ってくる。
「クロエ。仕事は慣れたか?」
張が声をかける。
「うん。でもね。来週には家族が迎えに来るって。なんでも、学校も再開するし、実家の牧場も軌道に乗ったからってさ」
「よかったじゃないか」
張が目を細めて笑う。
「……思っていたんだが、この国は若い」
先程のやりとりを見ていたルイスがポツリと言った。
「そうだな。若さに溢れて、エネルギーがある」
張もそれに同意した。
「『理想の国』かもしれんな」
「いや、まだまだだろ。そうするために我々がいるんだ」
何気なく、市場の周囲を見渡す。
同じようにビールを頼む客がいて、ワインを飲む女性もいる。
その向こうでは通路で子どもが遊んでいて、別の子どもが親に手を引かれて帰っている。
何気ない、休日だった。
♦︎♦︎♦︎
「今日は随分と熱心に祈るのね」
梓がユーリに言った。
「ああ、1ドル=150ネオ・ルピアになったからな。ようやく、峠を越えたと思ってな」
「今日は休みなんでしょ?」
「そうだな、市場でもいくか?」
そこでユーリは梓の異変に気づく。
「どこに行ってた?」
お気に入りだろうパステルグリーンのワンピースにところどころ埃がついていた。
「ふふ、バレちゃった。ハルちゃんの家。たまには風を通して軽く掃除しておこうと思ってね」
「なるほど。それで少し酔ってるのか……」
ユーリが断定する。
「この国では19歳は飲酒OKだもの」
「教会にふさわしい、罪の告白だな」
ユーリが軽く言った。
そして、梓の唇を奪った。
「もう、馬鹿!」
顔を真っ赤にして怒る梓をユーリが笑う。
「知らないのか、教会は『誓う』場でもあるんだぜ」
「永遠の愛を?」
「いや、我が国の防衛力強化かな?」
今度こそ、梓は怒った。
「もう、馬鹿!知らない!」
出口に向かう。それをユーリが引き留める。
「今度はキチンとしてね」
梓がそっぽを向いたまま、笑っていた。




