第33話「戦闘激化」
ルマニア共和国・サウスルピアール州ミーチェ港。
「ピエール中将、どうしてここに?」
ピエール中将が戦車3両を率いて合流する。
すぐさま梓が聞いた。
「ドローンの実証実験ですよ。あの時、梓補佐官が落とした『人民の国』のドローンを複数個で1台のドローンの復元に成功しまして」
「なるほど、それなら2両に当てたのもうなづける」
張もそれを聞いて納得する。
「ピエール中将、すまないがライフル銃はないか?敵側のドローンを落としたい」
「AK47なら、そちらでは56式といった方がわかりやすいかもしれませんが」
「地方での新人訓練以来だな……しかし、手入れは行き届いている……500m程度なら狙えるか……」
渡されたAK47を触りながら、張が言う。
ピエール中将側からも懸念事項が伝えられる。
「訓練予定だったので、101式3両で砲弾が残り17発です。全て命中させたとて、殲滅は不可能です。梓補佐官は射程外から魔法でどうにかできませんか?」
「ヒロイ型AMFGドローンがいて無理ね。ドローンに近づき過ぎると飛行すらできなくなる」
「現状、撤退も考える局面だが……」
張がそこまで言って止める。
3人ともわかっているのだ。
ここでそれを選択すると、『国の発展』は10年の単位で遅れる事を。
「現状で、やれる事をやりましょう」
梓が静かに言った。
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同時刻、首都・ルピアール、大統領官邸。
「籠城戦しかないだろう」
ユーリ大統領と護衛隊との短い打ち合わせで決まる。
「しかし、相手は素人集団です。無効化するなら打って出た方がいいのでは?」
「大統領として、『あれ』相手に発泡は許可できない。例え相手の狙い通りであっても、な!」
吐き捨てるようにユーリが警備隊長に言う。
周囲に展開したクーデター軍、それは少年少女を中心に構成されていた。
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5分後、ミーチェ港。
砂埃が近づいてくる。
一時停止していたクーデター軍が進軍を再開したのだろう。
「ドローンによる照準リンクよし!」
副官の報告にピエールがすぐに応える。
「第1波、戦車隊。撃て!」
轟音と共に、3両の戦車の砲塔が火を吹く。
ドローンによる精密射撃は履帯に命中。三角形のような陣形で進軍していた戦車群の先頭3両の足が止まる。
無事な方の履帯で進軍を試みる車両や砲塔をクルリと回転させる車両が陣形を乱していく。
「各車両、弾切れまで砲撃!」
現代戦車戦は先手をとった方が勝つ。
ピエールの部隊の残り砲弾14発で14両のクーデター軍の戦車を戦闘不能に追い込んだ。ドローンの精密な誘導あってこその戦果である。
「ドローンを退避させろ!」
ピエールの指示が飛ぶ。
「第2波、いくわ!」
梓のホウキに張が相乗りしている。その手にはAK47が握られている。
「まさかアサルトライフルでドックファイトする日が来るとはな!……それで40機程のドローン、どれが『本命』だ?」
「わからないわ。私も対AMFG戦は初めてだもの」
あえて単発でAK47引き金を引く。
ホウキに乗りながら銃の反動がどんなものか試すためでもあった。張の腕がいいのか、数発の試射で、3機のドローンが墜落していく。
「素晴らしい銃だな!」
張が興奮気味に言う一方で、梓の顔色は悪い。
「本命とデコイの混合かと思っていたけれどーー」
1機のドローンが近づいてくる。
慌てて急旋回して距離を取る。追ってこようと向きを変えたところに、張が引き金を引く。
「まさか、全て本物か?」
「ええ、ドローンの10m以内に入った瞬間、私はただの女の子になるわ」
残るドローンは36機。
♦︎♦︎♦︎
同時刻、首都・ルピアール、首相官邸。
ユーリ大統領のスマホの着信音が鳴る。
「お久しぶりです。スィープ指導官」
液晶に表示されたのはスィープ=ルマニエル。このクーデターの首謀者、その人だった。
『久しいな、ユーリ』
「それでご用件は?こちらはボーイスカウトの相手で忙しいのですが?」
ユーリの皮肉をスィープ将軍は笑う。
『まだ痩せ我慢する余裕があるようだな』
「ヤワな教官にしごかれてませんからね」
『……相変わらずだな。それで交戦する気はあるのか?』
多分、これが本題だろうとユーリは思う。
「あれば今頃、少年兵の死体がダース単位で転がってますよ」
『100ダースの少年・少女達をどうするのだ?』
ここで「やり方が汚い」と文句を言う筋合いはない。スィープ将軍は『確実に勝てる』方法をとっているだけだ。1200名の子どもを殺して、クーデターを終結させても、次の選挙で再選はありえない。
ただし、これだけは言わせてもらう。
とユーリは腹を決める。
「スィープ将軍、俺がここで死のうと構わない。だが、幼い子を犠牲に成り立つ国など、『理想の国』とは認めない。少なくとも俺はな!」
大統領執務室にユーリの声が響いた。




