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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
外伝、その2「理想の国」

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第23話「沙織の決断」

「これは我が国の最新鋭戦車101式ではないか!」


張が声が裏返る程に驚く。


「そ。あの戦闘に参加した56両。全てルマニア国軍が鹵獲したわ」

「魔女め!」

「ふふ、なんとでも言ってちょうだい」


そう梓が笑う。


「『ルマニアの聖女』に敬礼!」


(あの戦果だ。神格化してもおかしくない)


「おや、岸川大統領補佐官。どうされました?」


軟弱そうな軍服の男がそう言った。階級は中将。そうか元は文民かもしれない。


「ピエール中将、こんにちは。鉄道敷設計画の下見です。こちらは新任の張リャンシャン交通大臣です。張大臣、こちらは北部方面軍司令官のピエール中将です」


互いに握手する。


♦︎♦︎♦︎


同じ頃、首都ルピアール。大統領執務室。


「……あれから、北部では不正がゼロになっているね」


沙織がつぶやくように言った。梓と張が現地視察中なので、この部屋には沙織とユーリ大統領の2人だけだった。


「『聖女』化してるからな、アズサは北部で」


来週に控えた初めての外遊に備えて、資料に目を通すユーリがそれに答えた。


「……だね」


ため息と共に沙織は同意する。

その声色にユーリが少しだけ違和感を感じる。沙織と梓がこの国に来て2ヶ月、それがわかる程度には信頼も信用もしてきたつもりだった。


だから当然、ユーリは尋ねてしまう。


「どうした?」


沙織がためらいがちに言う。


「……今日で終わりにしていい?」


さすがにユーリは資料から沙織へと視線を上げる。沙織は綺麗に笑っていた。


「不正はなくなった訳じゃないけど、減ってきた。もう、わたしじゃなくてもいい」


ユーリは黙って続きを促す。


「もう1点、あずちゃんは魔女になった。同じ魔法を使う者としてわかる」


一瞬のためらい。

言うべきか言わずにおくべきか悩むような。


「多分、見えない壁を越えた。MIFが来れば、世界は『岸川梓』と言う『魔女』を知る。その横で魔女ではない『わたし』がいるのはーー」


沙織の表情は冷たい。

まるで不正を追う時のような、合理性を突き詰めたような顔をしていた。


「ーー邪魔だと思う」


ユーリは少しだけ考える。


(ここでアズサにの名前を出すのはフェアじゃない)


それだけは決める。


「俺は困る。少なくとも」


その返答に沙織はまた笑った。


「ズルい」


そして。もう一言。


「でも、決めたんだ」


ユーリも短く返す。


「……そうか。君の答えはわかった」


少しの沈黙。


「ごめん、あずちゃんが帰ってくる前にいなくなるね。決断が鈍るから」

「……そうだな。アズサはこっちで何とかする。君は大丈夫か?」

「大丈夫。ずっと1人だったから」


ユーリは資料に視線を戻す。


文字を目で追う。


ユーリが次に顔を上げた時、

大統領執務室はもう誰もいなかった。

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