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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
外伝、その2「理想の国」

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第22話「明後日の方向」

『自由の国』首都・マシントンDC、大統領官邸・通称『白い家』。大統領執務室。


「ルーザー!わかったか?」


この館の主である、プラント大統領の声が飛ぶ。部屋に入って来たのはCIF長官のルーザー=ブライトン、CIFとは『Central Intelligence Freedom-country』の頭文字で要は自由の国のスパイ組織の長である。


「お言葉ですが大統領、前回ブリーフィングからまだ5日です。どんなに我がエージェント達が優秀でも、他国に入って情報を得るのは簡単ではありません」


そこで口を開いたのはもう1人のブリーフィングの参加者、ルイス=ジョンソン国防長官だった。


「ルーザーの依頼を受けて、軍事衛星を1つルマニアを集中的に撮影しています。こちらをご覧ください」


出されたのは1枚の衛星写真。


「これがどうした?」

「これはルマニアの北部司令基地です。鉱山防衛のため、鉱山事務所とセットになっているそうです。ここに戦車が写っています。その数56両」

「我がCIFの調査ですと、ルマニアの保有台数は22両。旧ソ連のT-74モデル、つまりはリセール品です」

「そしてこれはその2日前の『人民の国』とルマニア国境付近、『人民の国』側に大規模な軍の存在が確認できます。この時は他の車両もいますが、戦車の数は56両。ピタリと一致します」

「つまり、北部資源は『人民の国』に奪われたと言う事か?」


プラント大統領の結論に2人とも頷く。


「その通りです、大統領。今まで『余白の国』と合同で『砂の国』に運び精錬、欧州で強力な磁石に加工されてきましたが、『余白の国』のエージェントによれば、来月から『人民の国』に鉱石を運ぶとのことです」


ルーザーの報告をさらにルイスが補佐する。


「この時点で、我が軍はルマニアに派兵不可能です。ロクライナ・ガザ、さらにルマニアとなればそれは世界大戦です。そのトリガーを引いたのが我が国だとすれば、11月の中間選挙結果は火を見るより明らかです」


プラント大統領は馬鹿ではない。それがこの2人の共通認識だった。馬鹿な投資家がニューアークのフィフス・アベニューにビルなど持てない。


「ですので、かねてよりの提案通り、MIF(通貨国際基金)による経済的支配を行いたいと思います」

「ルマニア共和国は資源と言う収入を絶たれました。だからでしょう、ニューアークの国連ルマニア大使からも色よい返答が来ています。条件は従来通り。これで我が国は何もせずとも勝利します」


プラント大統領は小さく頷いた。

3人とも、勝利を確信している。


「わかった。やってくれ!」


力強くプラント大統領が言った。


大統領が変な方向に進まなかった事に、ルイスもルーザーも胸を撫でおろした。


♦︎♦︎♦︎


同じ頃、ルマニア共和国・首都ルピアール。大統領執務室。


「失礼します」


シュッとした目つきの鋭い東洋人が入って来る。


「来たか、張リャンシャン」


ユーリ大統領が目を通していた資料から視線を移して言った。


「君を交通大臣に任命する。最初の仕事はあの鉄道の実行だ」


そう言って1枚の古い地図を出す。


「これが計画書だ。俺の父、アレク=シトロエンと当時の周委員、今の周首席が酒を飲みながら作った計画だ」


その地図には人民語とルマニア語が混じっているが、互いの想いが滲んでいた。


「予算は1億ドル。できれば『人民の国』ではなく、日本の企業に依頼したい」


脇にいた大統領補佐官である梓が言った。


「何故だ?君が日本人だからか?」


張の質問に少しだけ梓の顔が曇る。


「周首席から、即座に質問するなって言われてたのに……。

まあ、いいわ。あなたの仮説は間違え。正解は日本人が丁寧でお人好しだからよ。この国に鉄道技術なんて皆無に等しい。それを根気強く、教えてくれる民族なんて、日本人しかいないわ」


(この女は自国すら、冷徹に判断するのだな)


張はそう考え、理解した。


「了承した。どうする?西芝・東立・大日本車両…このあたりが候補だが?」

「任せるわ。JVでもいいし。あ!それと明日、交通大臣就任の記者会見を行うからそのつもりで」


突然、明日の予定が決まる。


「これで世界はさらに『明後日の方に』勘違いしてくれるわ」


梓は、その『魔女』は確かに笑った。

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