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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
外伝、その2「理想の国」

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第11話「魔法少女と異能少女②」

ルマニア共和国、首都ルピアールから西へ100キロ。ネオ・ポルドー州、州都ネオポルドー市近郊。ハルの家。


「見つけたわ。ここね」


梓がスマホの地図を確認しながら呟いた。


「まさか、北東部スマーノゥから300キロも離れたところに住んでるなんてね」


沙織も驚いたように言った。

その時。


「お姉ちゃん達、だぁれ?」


背後から幼い声がした。


(しまった。防犯カメラ!)


不覚にも背後を取られて、梓は焦る。


「私は岸本梓」


その名前にハルは驚く。


「本当に来た!お母さんの言った通り!」


そう言って一目散に、家の中に入っていく。

数秒、今度は瞬間移動で梓の目の前に現れる。


「手紙。お母さんから!」


そう言って、渡された便箋には『岸本梓様』と書かれている。


『岸本梓様


突然の手紙をお許しください。


あなたがこの国に来る未来を、私は何度も見ました。


私は辻村ハルの母、辻村あずさです。


私は未来を見る力を持っていました。

けれど未来は一つではありませんでした。


私が長く生きる未来もありました。

ハルと穏やかに暮らす未来も。


ですがその未来では、この国は早く侵攻を受け、ハルは見つかってしまいます。


私は侵攻を遅らせました。

命を削りながら。


あなたが間に合う未来を残すために。


私はあなたを信じています。

それは未来を見たからではありません。

未来の中で、あなたの選択を見たからです。


どうかハルを、あなたのそばに。


国家のためではなく、あなたが守ると決めたもののために。


辻村あずさ


PS.ワイナリーの貯蔵庫の中のものはあなたの「理想の国」のために使ってください』


♦︎♦︎♦︎


ワイナリー貯蔵庫。


「凄い量ね……」


埃をかぶった圧搾機やワインを入れる前の空びん。

まだ中身の入っている樽が並んでいる。


その一角、本来なら樽が並ぶはずだった棚に灰色の金属が静かに並んでいる。


「だいたい500グラムのインゴットってところか?そう仮定するとこの棚で500キロ、4つあるから2トンだな」


ユーリが言った。


「お母さんが梓さんと一緒に来る人に渡しなさい。って言ってたー!」


無邪気にハルが言う。


一方で、沙織は本来なら見る必要もない圧搾機やステンレスのタンク。ビンに貼る前のラベルを興味深そうに見ている。


「やっぱり沙織ちゃんも気づいた?」

「あずちゃんは最初から疑っていたよね?」

「うん」


2人だけでそんな会話をする。

そして、2人でうなづくと、梓が言う。


「ハル=ツジムラさん。あなた、今、いくつ?」

「9歳!」


ハルは元気良く答える。


「こんなにネオジムをいただくから、お母様にお礼を言いたいの。お墓は近く?」

「うん。お庭!こっち!」


勝手口のようなドアを開けると、ぶどう畑が広がる。


どうやら家は3階建てで2階に玄関があり、崖地に建てられていたのだろう。地下だと思っていたワイナリー貯蔵庫は1階だった。シャッターを開けば畑からワイナリーまで動線が短くて済むように設計されていた。


「ここ!」


『Azusa・Tsujimura』と半年前だからか真新しい墓石がある。『多臓器不全により死去』と簡単に説明されている。


梓は手を合わせ、ユーリは十字を切る。


「横はお父様?」

「そうだよ」


横の母親の墓とは違い、年季を感じる。縁が少しだけ欠けていた。それを見て、梓はにこりと笑った。


「やっぱりね。ハルさん、少なくともあなたは9歳じゃない。お父様の墓石には『軍と王族親衛隊の戦闘に巻き込まれて死亡』と書いてあるわ。クーデターは15年前。9歳のあなたが生まれるのはおかしいでしょう?」

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