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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
外伝、その2「理想の国」

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第10話「魔法少女と異能少女」

ルマニア共和国、首都ルピアールから西へ100キロ。ネオ・ポルドー州、州都ネオポルドー市近郊。


美の国統治時代、ワインの一大産地と気候条件が同じだったこの州はワインが特産品である。その廃業したワイナリーがハルの家だった。


梓がつぶやく。


「見つけたわ。ここね」

「まさか、北東部スマーノゥ州から300キロも離れたところに住んでるなんてね」


沙織も驚いたように言った。


その時。


「お姉ちゃん達、だぁれ?」


背後から幼い声がした。


♦︎♦︎♦︎


その3日前。


スマーノゥ州。国境付近、ルンダオタウン。


「俺の事はわかるな?」


町長の名前はダイヤネルという老人だった。

町の表通りの1番奥、息子が鉄工所をやっており、そこで隠居していたが周囲の頼みで町長になったという。


ユーリは町長の家の玄関で出迎えた彼を見て、開口1番そう言った。


「はい、大統領。わざわざ訪ねて来た理由もです」


観念したというよりは肩の荷が降りたようにダイヤネルは言った。


「どこからお話しすれば良いかのぉ?」

「まずは金の出所から頼む」


敬語が崩れたのも気にせずユーリは言った。


「うちは見ての通り、家業として鉄工所をやっております。その製品に混ぜる形でネオジムを密輸しておりました」

「やはり、人民の国か?」

「いえ、『スパイスの国』の小さなモーター製作所です。さすがに大々的にやると国際問題ですから……」

「なるほど。そこから正規品とは別に入金があって軍の横流し品を買い取っていた訳か?」


ユーリは語気が強くならないように注意する。沙織が黙っている事で、嘘ではないとわかる。


「そのインゴットはどうやって精錬した?」

「こちらでは精錬しておりません。あれは辻村家の遺産です」

「辻村とは、あの『独立の英雄』こと、辻村敬之か?」


ダイヤネルはゆっくりとうなづく。


『美の国』から独立戦争中、残留日本兵をまとめ上げて義勇兵として参戦した元陸軍参謀・辻村敬之はゲリラ戦術で『美の国』を翻弄。

勝利が決まると『独立の英雄』と呼ばれた。その後、彼は姿を消す。次の戦争を求めたのだ。


「毎週水曜日、『ハル』という女の子がネオジムインゴットを持って来ます。半年前までは母親、つまりは辻村将軍の娘さんと一緒に来ていましたが、手紙が同封されて来た後、母親は見なくなりました。その手紙には病気によりもうすぐ亡くなる事、ハルを見守ってくださいと書かれていました」


ユーリは黙っている。どう言うか考えているのかもしれない。そこで梓が口を開く。


「あの、受け取ってるだけですか?代わりに何か渡したり?」


ダイヤネルはハッと話していないことを気づく。


「インゴットを受け取り、食べ物と調味料、それにライフラインの支払い用に現金を渡しています。それ以外、あの子も母親も求めては来ません」


ダイヤネルが傍らの水差しから、グラスに注いで水を飲む。


「それと妙なのは、あの親子の家がどこにあるのかわからないのです」


♦︎♦︎♦︎


「出て来たね」


町長の家から出て来た女の子を追う。

女の子は尾行に気づいてない様子で通りの角を曲がる。


「消えたぞ」

「大丈夫、町長に言ってエアタグを仕込んでる」


梓が言った。


「15キロ先のガソリンスタンド」


慌てて後を追う。


「嘘でしょ……?」


その行動に梓は絶句する。

他の2人にはわからない。


「あの子、今『精錬』してるわ……魔法で」


梓は食い入るようにそれを見る。埃っぽいガソリンスタンドでトラックが給油している。ドライバーはスタンドに併設された売店で買い物中で微細な変化に気づかない。エンジンを止めたトラックがわずかに振動していた。


「……4年前、人事異動で来た教官に出された訓練を思い出したわ」

「あー、あずちゃんが苦労したやつ。『塩と砂糖を混ぜたものから、クジでひいたどちらかを移動させる』ってやつ?」

「そう。つまりあの子は鉱石から『ネオジム』だけを取り出している」

「つまりはコストゼロで精錬可能になるって事か?」


精錬が可能になれば単価は跳ね上がる。

大統領として、ユーリにはその可能性が魅力的に映る事だろう。


「あの子の母親、多分『精錬』のし過ぎて、死んだんでしょ。あのレベルの精錬を続ければ、内臓にダメージが蓄積していく。それでもあの子にそれを続けさせる?」

「いや。それなら、現状維持だ」


ユーリは即答する。その答えに梓は笑って安堵する。


「そうよね。あの子を泣かせて成り立つ国なんて、少なくとも『理想の国』ではないわ」


梓の目に決意が浮かんだ。

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