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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
外伝、その2「理想の国」

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第3話「大統領官邸」

翌朝、三月沙織はベッドで寝転がってテレビを眺めていた。


朝にニュースを流すのは万国共通らしく、キャスターがこちらの言葉で深刻そうな顔で何かを伝えている。画面上にはテロップが流れ、各地の天気や気温、為替情報などが流れている。


梓は洗面台の前で歯を磨き、スマホで地図を開いた。昨夜もらった紙切れの住所を入力する。


「官邸、中心部だね。ここから車で十五分」


沙織がテレビから目を離さず言う。


「昨日、一国の大統領がなんであんなところにいるか不思議だったけれど、大蔵大臣が不正をやってたみたいね。外貨準備金を横領して『人民の国』系地下銀行に預金してたみたい」

「日本なら、ロッキード・リクルートぐらいの大事件じゃない?」

「事実が報道されていれば、ね。報道だとヒューマンエラーの誤送金だって」

「……読んだんだ、思考を。それで取り返したの?」


入国からずっと一緒にいたのだから情報入手先は限られる。


「ダメだったみたい。穴埋めにまたルピアを刷るみたい」

「終わってるじゃん、それ。無能なの?」

「方向性の違いかな?軍の元大佐なのは資料の通り。出身は情報機関なの。だから経済や財政に明るくない。それで……」

「『わかる人に任せていたら、横領された』ってわけね」


梓は薄く化粧をして、黒いスーツに身を包む。


「まあ、今日会えばわかるか……」


そう言ってホテルの部屋を後にした。


♦︎♦︎♦︎


恐ろしい事に、ホテルで手配したタクシーは大統領官邸の玄関までノンチェックでたどり着いた。

敷地入り口にセキュリティーゲートのようなものはあったが、誰もいなかった。タクシーの運転手すら首を傾げながら、玄関まで到達できた。


タクシーを降りる。


さすがに建物入り口では止められた。昨日もらった紙きれを見せると、少し丁寧な対応になり、執務室に通された。


「よ。昨日も思ったが、なかなかの美人だな」


書類から目を上げ、ユーリが言う。

梓は椅子に座らず、室内を見回す。


窓は大きい。外から狙撃可能。

護衛は扉の外に一人だけ。


「この国、なかなかのヤバさね」


ユーリは苦笑する。


「どこから?」

「玄関までノーチェック。軍事政権上がりにしては、ずいぶん平和主義」


ユーリはペンを置く。


「軍を信用していない」


一拍。


「信用していないから、近づけない」


梓はようやく椅子に腰を下ろす。


「なるほど。守られていないんじゃなく、守らせていない」


ユーリは視線を細める。


「察しがいいな。いや違うか、多分『精神感応』ってヤツだ。つまりは君らは『魔法少女』」


(情報畑出身だとは聞いていたけれど、案外有能な人なのね)


「半分以上、あたり。『魔女見習い』なの」

「ほう、そういう制度があるのか……」


ユーリは複雑な表情を見せる。


「実は4年前、佐藤ゆりあに会った事がある。当時は議員になる前、どこかの学校の理事長だった」

「って事は東京ね。私達は大阪にいたの」

「大阪にも行った。というか『関空』で入国審査を受けた」


ユーリという人間に、少しだけ親近感を感じる。そのユーリは少し深めに座り直し、息を吸った。


「……先に言っておく。昨日、大蔵大臣を罷免した。奴は事もあろうに我が国の『外貨準備金』に手をつけた」

「いくら?」

「全てだ」


さすがに梓も沙織も息を飲む。


「あれはこの国の『時間』だった。来月末までに3000万ドル用意できないと、この国は終わる。具体的に言えば、『人民の国』のODAの今年の返済期限が来月までだ」


その言葉に沙織がすぐさま反応する。


「交渉はできないの?」

「イズランカはその結果、港を99年リースになった。この国の場合はレアアースだろう。採掘権と言ってくるかJV(共同開発)で利益を吸うかわからないが……」


執務室に重い空気が漂った。

だが、心理が読めても、空気の読まない者がいた。


沙織である。


「でも、3000万ドルを大蔵大臣1人でなんとかできるものなの?」

「それは俺も考えた。

この状況は『人民の国』が作り出したマッチポンプではないか?と。

だが、『大国』のやり方はどこも同じだ。

つまりは大蔵大臣を唆したのは『人民の国』の国民ではあるが、『人民の国』そのものの関与を裏付ける証拠がない」

「やりたい放題じゃない。軍は何をしてるの?」


黙って聞いていた梓が口を開く。


「おこぼれをありがたく受け取っているだろうさ」


ヤケ気味にユーリが吐き捨てた。

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