第105話「決勝戦③ドンロン・アイ」
ドンロンを象徴する時計塔、ビック・クロック。それを今や見下ろすのが、巨大観覧車『ドンロン・アイ』である。
地下鉄から出た夏樹はここで少し休憩する。
水面を渡る風が、夏樹を冷やしていく。
(地下鉄ではドローンに勝利はした。でも手持ちのカード切らさせた。とも言える)
藤原さくらは間違いなく『怪物』。こちらの想像を超えてくるという点で、長田洋子クラスの。
「あは、『ドンロン・アイ』で休憩なんて、先輩らしいですね。先輩、『AI』大好きですもんね?」
「それは若干、オヤジギャグすぎるかな?」
ゆっくりとビック・クロックの方からさくらが飛んでくる。
「それで先輩はこの後、どうやって戦うつもりですか?ご自慢のドローンは先輩自身ーー」
刹那。
さくらの脇腹に何かが突き刺さる。
いや、夏樹はそれが『何か』は知っている。
『モノノフ』
三つ葉技研が開発した二足歩行ロボット。
夏樹がそれを基にモーターやソフトウェアを強化。ハード面もフレームをチタン合金にするなどカスタムされている。
さらに驚くべきはーー
『魔法』が使える事。
『アイス・アロー』
さくらの脇腹に蹴りを入れ、距離をとった後、魔法でさらに追撃する。
「びっくりした……」
イージスの盾で防いださくらが思わず声を漏らす。
「ふふ、『魔法少女・魔女のゼロ化』を謳って、実際にビーストはどうするの?って問いに対する答えがコレ。『モノノフ』だよ」
「この魔法って……まさか!」
「そう、『桃園若葉』のものだ。さらに!」
そう言った瞬間、さくらは5m程距離を取る。今までさくらのいた位置にドンロン・アイのゴンドラの窓ガラスが出現する。
「ふふ、カンがいいね。さっきまでのは『モノノフ・タイプ=ワカバ』だ。そしてこっちは『タイプ=アズサ』」
昨年、12月24日。長田洋子との都市戦に備えて、『テンペスト』は全員新型に換装された。『モノノフ』はその旧テンペストの魔石を使用する事で、魔法の使用が可能となった。
「元来、わたしは戦闘向きではないからね」
2機のモノノフがさくらと対峙する。
「……おかしいな。まだ、何機かいるでしょ?」
さくらがそう言って笑う。
「……」
夏樹は黙っている。
「だって2機とも長距離狙撃タイプ。最初の『蹴り』はそれを悟らせないため」
そして、さくらは正解にたどり着く。
「『近接』タイプを隠してる。多分ハンガー・ジュビリー橋とゴールデン・フォード橋に4体。それと私の後ろに1体」
「……『怪物』め!」
その言葉を合図したかのように、4つ脚の動物を模したロボットが駆けてくる。こちらも魔法を使うと誇示するように『何もない空中』を、である。
「昔、ソラーが出してた『アシモフ』ってペットロボット。あれを猟犬をモチーフに改良した。名付けて『ハウンド・ドック』!」
『ドック』と名前がついているが実際にはライオンとかチーター程の大きさがあり、4つの足は俊敏そうなカーボンプレートに先端は爪を模した金属がキラリと光る。
「稲荷系魔法少女は狐に変身して身体強化をする。だからこっちの方が相性が良かった」
さくらの脳裏に大阪支部で新人だった木津根あげはが浮かぶ。
「なるほど、近接格闘はそれがベストだね。って事は司令塔が後ろの円盤?」
「何もかもお見通しみたいだね。『タイプ=アヤメ』。精神感応系だ」
一見、ドローンだが、ローターなど何もない。ロボット掃除機が宙に浮いているようだった。
「つまりはさくらちゃん対日本そのものだ。
さあ、はじめようか?」
夏樹の最後の奥の手が静かに全機動き出した。
できれば、いいねとかお気に入り登録していただけると嬉しいです。




