第103話「決勝戦①国際空港」
連合王国、首都・ドンロン。ヒースワロー国際空港A滑走路。
「それではただいまより、第20回、魔法少女ワールドカップ決勝を行う」
女王エリザードが厳かに告げる。
「なお、決勝は2時間1本勝負。そしてルール無用。エリアはドンロン市内とする」
メルケンが短くルールを説明し、マリアがそれを継ぐ。
「なお、一般市民は後で催眠して忘れてもらうので、気にしなくていいわ。ただし戦闘に巻き込まない事。それが唯一のルールよ」
『欧州3大魔女』が揃っていた。
藤原さくら対広井夏樹。
「本部。応答願います」
腕のテンペストで通信するさくら。
『こちら本部、佐藤ゆりあです』
「スプリングのさくらです。決勝の相手が友軍であろう広井夏樹です。撃破の政治的是非を乞う。以上」
『本部より、スプリング・さくら。何も気にせず勝利しなさい。以上です』
「スプリング・さくら。了解」
そのやりとりを聞いていた、夏樹が笑いながら言う。
「ちゃんと許可取るんだエライ!」
明らかな煽り。そしてー
「でも残念。その命令、果たせないよ」
挑発。
「広井夏樹先輩。はじめまして。チーム・スプリング、藤原さくらです。確かに、あなたは強い。けれど、脆い。それを証明して見せます」
自己紹介が終わったと見たエリザードが告げる。
「試合開始は5分後にブザーが鳴る。それまでに距離を取るも良し、魔法や道具を展開するも良しである。それでは300秒前!」
その瞬間、夏樹は凄いスピードで消えていく。滑走路からターミナルAの方へ、おそらくは管制塔付近だろう。
代わりに、周囲から羽音のようなローター音がそこらじゅうから聞こえるようになる。
「また、ドローン?『自由の国』で飽きたんだけど?」
クレームのようなひとりごとをつぶやくさくら。しかし、どこで集音しているのか返事が来る。
『軍用ドローンと一緒にしないでよ。こっちのドローンのAIは魔法を認識する。めんどくささ倍増だよ?」
「……しかも、AMFGまで搭載でしょ?やってられない」
言っているうちにブザーが鳴る。
「『オレンジ革命』!」
コピー魔法。
マリア=ティモシェンコの。
その魔法は周囲に硫化水素を発生させる。
ゆっくりと3割のドローンが墜落していく。発生した硫化水素で腐食が急激に起こったせいだった。
「思った通り。審判の『魔法』は使えるように魔石振動数に『抜け』がある」
『それに気づくとは!流石だ後輩ちゃん!』
さくらは笑う。
「光栄です、先輩。ところでターミナルAにいるなら、『ザ・パーフェクショニスツ・カフェ』のハンバーガーはオススメですよ?ドローンと私は遊んでますので」
♦︎♦︎♦︎
ヒースワロー空港・ターミナルA。
夏樹はフードコートにいた。ここでフリーWi-Fiを利用するためだ。夏樹の魔法は電気系全般にわたる。ドローンに指示を出すのも通信としてそれが必要だった。
空港内はテロ対策で封鎖され、がらんとしている。その臨時休業を利用してなのか、ロボット掃除機の大きいものが随所で床を掃除していた。
言われた店は目の前にある。
「はは、残念。臨時休業みたい」
夏樹は軽口を返す。
(なぜ、さくらちゃんは『ここ』がわかった?)
不安が流れ込む。そして直感する。
「あっぶな!」
身体強化を使ってガラスを突き破り、ターミナルから外へ。
「ずいぶんじゃない。ロボット掃除機2機で塩素を発生させるなんて!」
『「まぜるな危険」ってやつですね。ふふ、ドローンにはドローンですよ』
さくらの笑いが目に浮かぶ。いや、実際にドローンからの映像を脳内で処理しているので言葉の通りではある。
そんな時、夏樹の目に信じられないものが飛び込んで来る。
滑走路上に巨大なおもちゃのようなロボットが腕を振り回してドローンと戦っている。まるで怪獣特撮映画だ。
「派手な魔法だね。大方『鉄の女・ユンゲラ=メルケン』の魔法?」
『そうです。ドローンで『遊ぶ』のでおもちゃは必須かと』
(間違いなく『怪物』。長田洋子レベルの)
夏樹の脳裏に初めて『負ける可能性』が浮かんだ瞬間だった。




