第102話「病室にて」
ドンロン市街、キング・エドガー7世病院。
病室のドアがノックされる。
「空いているぞ。マリア=ティモシェンコ」
女王エリザードがドアに向かって言う。
「驚いた。あれから1時間しか経っていないのに……」
病室に入るなり、呆気にとられるマリアにエリザードは言う。
「広井夏樹女史の魔法無効化装置は多分、指向性だろう?動き回った事で、防御魔法『ホワイト・ナイト(白夜)』が展開できた。だから、致命傷にはならんよ」
「『日の出る国』に嫌味ね。『日の沈まない国』は」
『ガスの魔女』の毒気が抜けていない事にエリザードは安堵する。
「……その、なんだ。すまなかったな。マリア」
「いいわよ……『許す』『許さない』って話ではないでしょ?」
女王の気遣いにマリアは笑って流す。
マリアとて、わかっている。
女王が同じ立場であっても同じ『判断』をして、同じ『後悔』を抱える事も。
「それとしんみりしたついでに言っておこう。マリア、其方は人財発掘の才があるな」
「夏樹ちゃんの事?
あの子、実は日本の佐藤ゆりあの懐刀よ」
それを聞いたエリザードの口元が納得したように上がる。
「ほう、よく代表に『レンタル』できたな」
「無断……というか、独断よ。私と夏樹ちゃんの。日本の佐藤ゆりあとしては伏せておきたいカードなのよ。多分」
「無茶をする……それだけ用意周到に私を叩きにきたのだな」
「デモンストレーションで『欧州3大魔女・筆頭』は強いでしょ?それと、1つだけ聞きたい事があるの。いい?」
マリアがわざわざ質問に前置きするのが少し意外だったエリザードは質問しやすいように視線をそらす。
「戦闘中に口走った、『3人』とは誰なの?脅威があるなら備えておかないと」
警戒するマリアをエリザードがフッと笑う。
「警戒せずともその3名は全員決勝戦へ出場する」
「……つまり。夏樹ちゃん、藤原さくら、西田真琴の3名。全員、日本なのね」
「その通りだ。夏樹女史はドローン型無効化装置で、さくら・真琴の両女史はあの盾だが」
マリアが少し窓の外に視線を向ける。
女王の護衛のために周囲を監視するドローンが目に入る。
「夏樹女史はあの『機械』で魔法を無効化し、魔法少女・魔女が必要のない地平を切り拓いた」
後を継ぐようにマリアが言う。
「西田真琴はその『才能』で専守防衛を旨とする『日本そのもの』のような魔法を作り上げた」
「マリアらしい解釈だ。だが、私もほぼ同じ意見だ。そしてさくら女史は……なんだと思う?」
エリザードが悪戯っぽく笑う。
「やはり、日本的よ。他の魔法を『コピー』してアレンジ・高性能化する。かつての日本の姿。そしてそれは『長田洋子』とも重なる」
「ああ、『自由の国』の第2艦隊をソロで殲滅できる少女だ。行き着く先は長田洋子が主張した独立か?それとも佐藤ゆりあ型なら現状維持か?」
「どちらにしても魔法少女・魔女の『継続』ね」
「そうだ。だから明日の決勝は『終了』か『継続』を問うものになる。つまりこの先の魔法の歴史は決勝戦、『強い方』に時代が傾くだろう」
エリザードが静かに告げた。




