第101話「女王エリザードVS広井夏樹」
「さて、勝負はついたも同然ですが、少しお話しさせて頂きます」
広井夏樹が切り出した。
その声はフラットでおよそ感情というものがない。ただ、女王エリザードは状況から、首を縦に振る。
「この『魔法少女ワールドカップ』は魔法少女を戦争の道具にしないために開催されている。そうですね?」
「ああ、そうだ」
エリザードはゆっくりと肯首する。
それを見た夏樹は言葉を継ぐ。
「では、私が代表として出ているロクライナは、魔法少女や魔女を戦線に投入しなかった。そのおかげで死ななくていい命が死に、戦況は不利になった」
「……ああ、認める。その通りだ。マリア=ティモシェンコはさぞ、無念だろう。自分は戦争に出られないのに副大統領として、『死んでこい』と命令しなければならなかった」
エリザードはわかっていた。
マリア=ティモシェンコの無念、怨嗟を。
だが。
「言いたい事はわかった。
それでは戦いを続けよう」
言うや否や、ドローン群に向かって行く。
「だからもう勝負はついてるって……」
「夏樹女史、この状況、開戦時のロクライナに似ているとは思わんか?」
飛行と身体強化でドローンを1機撃墜した。
「私が同じ状況で膝を折る事は二重の意味でロクライナを愚弄する事になる。だから戦うのだ。遠慮はいらんぞ夏樹女史。ここで私を完膚なきまでに倒せ!それがロクライナの無念への餞となろう」
また1機、すぐにもう1機と撃墜して行く。
しかしドローンはまだ100機以上残っている。ドローンも応戦し、何発か女王に銃弾を命中させている。その証拠に女王の左肩には水色の騎乗服から血が滲んでいる。
「……なるほど」
夏樹は圧倒される。
その覚悟に、その決断に。
「……それからな、夏樹女史。其方の『技術』は素晴らしいな。この私の『魔法』を使用不能にしたのだ。つまりは全魔法少女・魔女の魔法を無効化できよう。これが普及すれば、マリアのような悲劇は2度と起きまい。3人に例外を許した私の『ロイヤル・ウォレント』と違ってな」
戦いながらも言葉を重ねる。
しかし、女王は四捨五入すれば100歳になる。その老人が肩で息をしながらも戦い続ける。サッカーコートより少し狭いぐらいのバーミンガム宮殿の中庭に撃墜されたドローンが一面に広がっている。
だが新たに周囲の建物から新たなドローンが飛び立ち、包囲網を敷く。
「夏樹女史、其方の『技術』の行く末は『魔法少女・魔女のゼロ化』だな?」
「……はい。その通りです」
「ならば、私と夏樹女史は同志だな。安心して負けられる」
顔にも傷ができ、血が流れる。誰の目に見ても限界だった。そこにドローンは容赦なく発砲して行く。
「見事だ。夏樹女史!」
その言葉を最後にゆっくりと中庭に降りたエリザードはパタリと倒れた。
広井夏樹は倒れた女王に深く一礼をした。




