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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第4章「魔法少女ワールドカップ編」

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第99話「水晶宮炎上」

「壁は崩すためじゃなく、超えるもんだよね」


そう言い放ったさくらに、『欧州3大魔女』ユンゲラ=メルケンは返す。


「絶望的状況なの理解できているの?あなたの周囲には『リーンベルの壁』、さらにはこのロボットよ?」

「『火炎放射』!」


字の如く、炎が出る。


「『イージスの盾』!」


魔法で出てきた盾は今度こそ『リーンベルの壁』を破断していく。


「そうか!酸化鉄」


メルケンは元物理学者で、自身も酸化鉄を電流を防ぐ術として活用していた。だから理解は早かった。


「そう。かつてここにあった水晶宮は火災で消失した。鉄とガラスでできた建物が脆かったのは熱で変質したからよ」


一拍置いて、さくらはさらに続ける。


「今も昔も怖いのは『炎上』なのよ。

だいぶ昔とは意味が違うけど」


(炎上——)


火災の事ではない。

暴動でも、爆撃でもない。


一度火がついた感情が、言葉を媒介に広がり、誰も止められなくなる現象。メルケンはそれを、政治の世界で何度も見てきた。そしてそれはなぜかメルケンに味方してきた。


ロボットの中でメルケンは少しだけ笑う。


「言い得て妙ね。でもこちらのロボットの方は酸化対策済みよ。『欧州最大の工業国』を舐めないでいただきたいわ」


起伏のある地面をいとも簡単に二足歩行でロボットは歩く。


(壁は冷戦で作られた。そして炎上は、言葉で起こる)


リーンベルの壁があった頃、世界は単純だった。敵は向こう側にいて、恐怖は目に見える形をしていた。


——今は違う。


(——でも、違う)


あの人なら、もっと早く終わらせていた。

合理的で、冷たく、容赦なく。


この子は違う。

回りくどくて、非効率で、それでも「燃やし続ける」事を選んでいる。


メルケンは優れた魔女である。だから、勝ち目がないのは実はわかっていた。しかし、簡単に棄権する事も許されない立場でもあった。


さくらはその後も火炎放射のみで反撃をしていく。ロボットは焼け落ちたり、機能不全に陥いる事もなく動く。


(おかしい)


効果がない事は分かっているはず。

それでも、火を止めない。


——違う。

狙っているのは、ロボットじゃない。

この空間、そのものだ。


ロボットの攻撃は避け、隙を見つけては火炎放射で攻撃する。


(なぜ、こんなに、かたくな、に……あっ!)


メルケンは気がついた瞬間、意識が暗転した。


「ふぅ、やっと落ちた。中で酸欠起こすまでに結構かかっちゃった」


(炎上は、鎮火させるよりも、燃やし尽くす方が早い事もある)


藤原さくら、決勝進出の瞬間だった。

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