第89話「ドンロンの休日②」
小さなベーカリーでパンを買って朝食を済ませ、私とアシュリンは地下鉄に乗った。
連合王国博物館。
「ベタだけど、ここは外せないの」
アシュリンの言葉通り、観光名所だけあって人が多い。ちょっと興味があったミイラの展示はあきらめて、日本ブースに入る。ちょうど『浮世絵』展をやっていて、外国で初めて、北斎とか東海道五拾三次なんかを見た。
「真琴、日本って今もあんあ感じの場所があるの?」
「あはは、ないよ。あ、でも京都にはあるかも。『映画村』とか」
「そうなんだ。
それじゃ出ようか?ランチ行こ?」
「え!まだ2割ぐらいしか見てないよ?」
「それがいいのよ。『また、来れば』いいじゃない?」
そう言ってアシュリンは歩き出す。
「ここがランチ?」
「そ、『セントベリーズ』。ここでミールディール買って、公園で食べよ」
そう言ってアシュリンはサンドイッチを冷蔵ケースから取り出して、ポテトチップスを手に取る。それとよくわからない炭酸飲料らしき飲み物を買っている。私も似たようなものを買う。
セルフレジで代金を支払う。4セント、思えば連合王国に来て、今日まで現金で支払いしてなかったなと思う。なぜかニヤついてしまう。
近くの公園に移動して、ベンチに座る。紙袋からサンドイッチを取り出して、パッケージを破りながら、アシュリンが言った。
「この公園、リスに注意して」
その言葉に私は思いっきり炭酸飲料を吹き出した。それを見てアシュリンが心配そうにこちらを見る。
「大丈夫?」
「うん。私の日本での先輩グループが『りす組』なの。私は『うさぎ組』」
「へぇ、『ラビット・グループ』……なんだか保育園みたいね!」
また、むせた。
「けほっ!そう……私の担当エリアは事務所が元・保育園なの。グループ分けはその名残りよ」
「あはは、だから1回戦、おむつなんて持ってたんだ!」
ああ、そうだった。1回戦、あまりの恐怖にアシュリンは『おもらし』した。だから私はおむつを渡した。でもよく考えるとこれはおかしい。
そう思って、アシュリンと魔法少女の国の違いを色々と話す。
「魔法少女におむつが必要だなんて聞いた事ないわ!」
アシュリンが本当に驚いて言った。
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同じ頃。ドンロン市街。
タイムズ川と時計塔『ビック・クロック』。
ドンロンに流れる『時間』を象徴するような2つを同時に眺められる穴場スポット。オフィスビルの2階テラスで『鉄の女』ユンゲラ=メルケンと水田マリが話をしている。
「本当なの?日本の魔法少女はおむつが必要だなんて!」
別の場所で異なる2人が同じような声をあげた。




