第84話「キセキ」
連合王国・シリー諸島沖。
連合王国海軍 旗艦『クイーン・エリザード』特別観覧席。
『イージス艦「クリーブランド」、撃破。これでイージス艦は全滅。残りは原潜1、補給艦などの攻撃能力を持たない艦が8の9艦です』
CICからの報告が入る。水田マリはたまらずさくらに通信する。
「さくらちゃん、マリです。もう十分よ。救助できる船も残しておかないと……」
すぐさま応答が返ってくる。
『原潜が1隻残ってますがどうしますか?攻撃力が0になっていませんけど?』
「頼む!これ以上、死傷者を出さないでくれ!」
プラント大統領が懇願するように叫ぶ。その声はさくらの耳にも届いたようだ。
『そもそも、乗組員は死亡者はゼロです。凍傷や低体温症みたいな軽症者はいるでしょうけど』
そのさくらの報告にメルケンが驚く。
「聞き捨てできないわね。空母1隻、ミサイルフリゲート艦6隻、原潜3隻を沈めておきながら、死者ゼロだなんて!」
その時だった。
『クイーン・エリザードCICより補足。フジワラサクラ選手の言う事に間違えありません。沈んだ10隻の乗組員点呼完了との報告を受けております』
館内よりそう報告が入った。
『「殺さない」ってルールだったもの。以上』
さくらはそう締めた。通信が切れたのを示すようにマリの腕で発光していた『テンペスト』が消灯した。
「……」
「……」
全員が言葉を失う……事はなかった。
「これで『エキスパートの部』もベスト4が出揃ったわね」
沈黙を破ったのはマリア=ティモシェンコ。
「まずはA・Bグループの勝者、日本」
マリアはマリの方を見る。続けて、
「C・Dグループは『欧州の工業国』。これが準決勝第1試合」
その後にメルケンの方を見た。
「E・Fグループ勝者が『連合王国』、G・Hグループ勝者は我が『ロクライナ』。この2国で準決勝第2試合となるわ。そこで……」
マリアがそこまで言いかけた時、扉がノックされる。マリアは言いかけた言葉を引っ込め、エリザードの方を見る。
「どうぞ」
エリザードが入室を許可して、扉が開く。
そこに立っていたのは2人。
佐藤ゆりあと藤原さくらだった。
「お初にお目にかかります。女王陛下。日本国、文部科学大臣。佐藤ゆりあと申します。突然の訪問、大変失礼いたします」
まずはエリザードに挨拶する。続けて、全員に向けて言う。
「初めての方もいらっしゃいますので自己紹介しておきます。佐藤ゆりあ。日本の文部科学大臣です」
「『どうして?』と聞くべきか、『どうやって?』と聞くべきか、悩むわね」
そう言ったのはメルケン。
「お答えします。実は先程まで行われた2回戦、『自由の国』側から日本政府に対して『圧力』がかかっておりました。その政治決着のために参りました。方法については先程の2回戦をご覧になっていたなら話は早いかと。そこにいる藤原さくらに転移してもらいました」
ゆりあの視線は、ただ1人に向けられていた。
『自由の国』大統領、マクドナル=プラントに。




