第82話「違和感の正体」
自由の国、ニューアーク市。ロームフェラビル。
フランク=ロームフェラは複数の画面に広がる、無数のチャートを俯瞰する。
「すまないが、『ナイル』のチャートを大きくしてくれないか?」
「はい」と返事とともに、目の前のモニターにEC最大手の『ナイル』のチャートが表示される。
「やっぱりか。続いて『ユーイング』を……」
返事の前に航空機製造・軍事関連でもある『ユーイング』者のチャートが表示される。
「これもだ……」
「何かわかったのですか?」
怪訝そうに聞く部下を横目にフランクは指示を出す。
「もう1社だけ、『エム・ぺディア』を頼む!」
半導体最大手、『エム・ぺディア』。
「やっぱりか!チャートを少し拡大してみろ。サーキットブレーカー解除後の30分にフォーカスして」
「ずいぶんと下がってますね……ん?」
傍らで見ていた役員は気づかない。だが、一緒に見ていた女性部下は気づいた。
「『誰か』が先に売っている?しかもその後、『Winx Club』が売って相場が下がったら、買い戻している?」
自信なさげに言う。
「その通り……『誰か』は我が『Winx Club』に先んじて、いわゆる『空売り』をして儲けている」
「とても信じられません。『Winx Club』のアルゴリズムを読みきるなんて」
「では偶然だと?ナイルもユーイングも、エム・ぺディアだけではない、全銘柄で。だ」
フランクは厳しい表情になる。
「結論は1つだ。『誰か』は『Winx Club』だけをターゲットにして、『儲け』を出すシステムだろう」
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埼玉県越谷市、テンペストデータセンター。
巨大なショッピングモールがある。だがこれは擬態に過ぎない。新潟・東北・関東と3系統から電源供給が可能であること、地震の多いこの国において、東日本大震災・関東大震災でも比較的被害が少なかったことなどを加味して『それ』は建造された。そして、『それ』は『止まらない』ことを前提に設計された装置だった。
量子コンピュータ『スーパーセル』。
立体駐車場のスロープ部分の中心にぽっかりと空いた空洞は巨大なクーリングタワーである。
「すごいな。今晩はずっと冷却しっぱなしだ。『スーパーセル』に何を計算させているんだ。ゆりあ大臣は?」
ここのセンター長である、小田圭吾がそうつぶやく。それもそのはず、『スーパーセル』は本来、災害派遣時のリスク等のシュミレート用を、今回の件では『Winx Club』の監視・予測に活用していた。
これがあったからこそ、『トリクシス』は短期間での開発が可能だった。もちろん、『天才』広井夏樹がいればこそ。という前提が必要であるが。
つまりスキームとしては、『スーパーセル』で相手(『Winx Club』)の先を読み。『トリクシス』が顧客の意見を反映した形で実行し、『利益』化していた。
そして、もうこの時、佐藤ゆりあの思惑は半分以上達成されていた。




