第81話「フェイズ2、始動・トリクシス」
「2回戦は順調ね。さすがさくらちゃん。いつでも『勝てる』ポジションを維持してる」
寝られない夜になる。ゆりあはコーヒーを口にし、スマホで観戦しながら言った。
ニューアーク証券市場はサーキットブレーカー解除後、値下げは少しゆっくりとしたものに変わっている。
「ふふ、『トリクシス』も順調に稼いでいるわね。夏樹ちゃんのベタなネーミングセンスは少し残念だけど……それに無料公開した甲斐あって、個人投資家も稼いでるみたいね」
『トリクシス』はロームフェラの中核企業『ホワイト・ロック』の基幹投資AI『Winx Club』を破るためだけに開発された、投資用AIである。現在は空売りに徹して資金を増やす事に専念している。
「ホワイトロック側が大体9兆まで低下。比べてこちらは1.6兆ドル。まだまだね……」
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自由の国、ニューアーク市。ロームフェラビル。
「首尾はどうだ?」
最高顧問である彼の登場に、会議室の空気が更に張り詰めたものになる。フランク=ロームフェラは静かに尋ねた。
「『人民の国』の国債売り以降、S&P500は19.3%ダウン。対してこちらは全運用資金の9.8%ダウンですんでます」
「それで報復措置は?」
「プラント大統領は『報復関税』とか言うでしょうけど、市場にインパクトはありません。FRB(連邦準備銀行)が協調介入するとは思えませんし、政府が取れるオプションは限られます。Winx Clubの判断通り、現金化が1番得策かと」
フランクはそこに納得と違和感、両方を覚える。
「相場が静かすぎるのが気になる。何か違和感はないか?」
さすが経済の一線で戦ってきただけに、フランクの嗅覚は正確だった。
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連合王国・シリー諸島沖。
『さくらちゃん、悪いけど2回戦勝利を優先。第2艦隊は旗艦を失っている。「ウイリアム・クリントン」の乗組員の回収もあるし、逃げないわ』
ゆりあ大臣から指示が飛ぶ。
「了解」
通信を切る。
「『ワープ』!」
救命ボートの目の前に出現する。ボートを持ち。
「『ワープ』!」
その瞬間。
「2回戦、Bグループ日本のフジワラサクラの勝利!」
審判の魔女が告げる。
(さて、残り15隻。ゆっくり料理しましょうか)
ぼんやりとそんな事を考えた。




