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魔法少女はおむつが必要だなんて聞いてません!  作者: 062
第4章「魔法少女ワールドカップ編」

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第80話「激突、藤原さくらVS第2艦隊」

連合王国・シリー諸島沖。

連合王国海軍 旗艦『クイーン・エリザード』――特別観覧席。


通常、この大会に「観覧席」など存在しない。同時期開催の表舞台、冬季オリンピックとは違い、魔法少女競技は国家戦略級機密。

公開はされず、各国は鍵付きサーバーの映像を分析するのみ。

つまり本来、世界の首脳陣が生観戦など『絶対にあり得ない』。


だが今日だけは、例外中の例外。


士官食堂だったはずの空間は、一夜でモニターだらけの観覧席へと変貌し、8つの角度から「2人の少女の戦闘」が中継されていた。


この空間にいる顔ぶれが、その異常性をさらに強める。


・『自由の国』 プラント大統領

・『北の大国』 ウーチン大統領(SP:田代ナナ)

・『連合王国』 エリザード女王

・『欧州の工業国』 元首相メルケン

・『ロクライナ』 マリア副大統領


まるでG8首脳会議を空母の上で開いたかのような光景。そして、場違いなほど華奢な影がその隅にいる。


日本代表引率・水田マリ(日本・私立『明王義塾学園』理事長/元魔法少女)


彼女だけが椅子の端に控え、紅茶も口にできず固まっていた。


(……いや、どう考えても私、ここに居ていいの?)


それを考慮してなのか、エリザードがマリに話かける。


「すまないな、水田マリ女史。緊張するなと言っても難しいだろうが、少し話が聞きたいのだ」


この女王を無視できる人間は、世界に数名だろう。


「はい、わたしで答えられるものなら」


♦︎♦︎♦︎


同時刻。

第2艦隊旗艦・原子力空母『ウイリアム・クリントン』CIC(戦闘指揮所)。


「報告!セクターB、フジワラサクラ――競技船ごと1マイル移動!救助達成率99.9%!」

「対してこちらは?」

「フェイズ1、進捗50%。ケリーの魔法『レギオン』で乗客役を空母に誘導中ですが、まだ半数です!」


「フェイズ2(離脱フェーズ)移行後、海域脱出にかかる時間は?」

「機関最大出力まで12分。海域外へ抜けるまでフェイズ2開始から約10分!」


司令エドモンドは即座に判断した。


「後方艦『シカゴ』『デトロイト』『ミルウォーキー』『クリーブランド』に通達。攻撃ドローン、全セル発射」


「了解――四艦より全セル発射!

シカゴ・デトロイトから102、ミルウォーキー・クリーブランドから88――総数380。

ドローン、発艦完了!到達まで180秒!」


戦術は単純。

380機の無人攻撃ドローンでさくらの足を止め、その間に救助完遂・離脱する。


だが、その瞬間。


オペレーターが叫ぶ。


「司令!本艦甲板上に――フジワラサクラ出現!ケリーと直接対峙しています!カメラ最大望遠へ!」


画面に現れる、紺色の制服にダッフルコートの少女。甲板で風に髪を揺らし、空母を見下ろすように立っていた。


ケリー=ロームフェラが笑う。

さくらの表情は背中側で見えない。


『ずいぶんと手の込んだ真似をするのね。どうせ負けるのに』

『まだそちらも救助が1名残っているんでしょ?勝敗は決まってないわ。ロームフェラの辞書に『敗北』は存在しないの!」


『じゃあ――こうすればどう?

――「イージスの盾」』


空気が割れた。


バキィン――!


画面が揺れ、オペレーターが絶叫する。


「エマージェンシー!! 本艦が――三分割!!

飛行甲板から竜骨まで、縦断されています!

まるでブッシュドノエルです!」


「な……何をされた?」


エドモンドは理解不能の声を漏らした。


「魔法です!ビギナーの日本代表と同質の防御魔法を――攻撃に転用されました!沈没予想180秒!」


艦橋が傾き、警報が赤く点滅する。

エドモンドが叫ぶように指示する。


「総員退艦!原子炉も停止急げ!」


ーーーー


飛行甲板上。


「これで『ウイリアム・クリントン』は使えない?どうやって勝つの?」


私が聞くと、対戦相手のケリーはまだ強気に答えた。


「ドローンが380機こちらに向かっているわ。更に後方には、巡洋艦に駆逐艦をはじめとしたイージス艦もいる。『世界のカウボーイ』こと『自由の国』が誇る第2艦隊を1人で相手できて?」


水平線の上に黒雲のような黒い影が広がる。

近づくと共に、虫の羽音のようなモーター駆動女が響く。


「『イージスの盾』!」


先行していた30機程がまずは落ちる。

そのまま盾を展開しておくとほぼ全機がイージスの盾にあたって墜落していく。私のところへ来たのはわずかに2機。それも難なく身体強化で殴って撃破する。


「ふふ、面白いわ。それでは私も魔法を使おうかしら?『レギオン』!」


戦闘機15機が真下から現れる。

コックピットは誰も乗っていない。どうやら、沈没しかけている『ウイリアム・クリントン』の艦載機のようだ。


(ふむ、なるほど。精神感応と電気系魔法のデュアルスキル。さっきは避難を『1つの意思』としてパニックなく誘導。今回は電気信号で艦載機を操っているのか)


対して、私のとった行動は1つ。


ーーパチン。


指を鳴らす。15機の艦載機はそれだけで2つに切られた。原理は空母と同じ、『イージスの盾』での切断。声が出せない状況でも対象を切れるように訓練していたのだ。


今度こそ、呆気にとられたケリーを優しく当身して気を失わせる。そして、空いていた救命ボートに放り込む。


(命令は『噛み砕く』事。まだ終わってない)


♦︎♦︎♦︎


『クイーン・エリザード』特別観覧席。


「そんな!昨年11月ロールアウトの新型空母だぞ?」


プラント大統領の声は悲鳴に近い。


「ここは『戦場』だぞ。空母が沈むなど日常茶飯事(あたりまえ)であろう」


嗜めるようにウーチン大統領が言う。


「それに第2艦隊はローテション運用。替えの『空母』すら『ある』でしょ?」


マリアが珍しくウーチン大統領に同調して言う。マリアとウーチンは同じ首相時代に一悶着あって仲が悪い。


「何を言っている?被害が拡大するのはこれからだぞ?日本の藤原さくら女史はおそらく、第2艦隊を殲滅する気だ。そうだろう?水田女史?」


エリザードが場を制して言う。


「わたしも『おそらく』と推測の域は出ませんが。彼女に与えられたミッションは『2回戦の勝利。及び障壁の排除』です。彼女の日本でのミッション達成率は100%。それが佐藤ゆりあに『長田洋子の再来』と言わしめる所以です」


マリがゆっくりと答えた。

その声に応えるように、『クイーン・エリザード』CICから連絡が入る。


『レーダーに感あり。海底から何か浮上してきます。これはロス級攻撃型原潜です。『イージスの盾』により強制浮上させられた様子。あ!撃沈されました!』


自由の国、第2艦隊。残り16隻。

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