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龍の血を引く者  作者: また太び
外伝シリーズ
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外伝 氷山の奇跡1

紅哉は、ある依頼で山に来ていた。



「くっそ!山の天気の変わりは早い!」


『マスター!オレの飛行で飛べないか!?』


「無理だ!この天候じゃ飛べたとしてもブリザードがきつい!」



いま紅哉は吹雪にさらされていた。

厚着はしてきたが、それでも身体の体温はみるみる減っていく。



「なんとかして山小屋を見つけないと…」



しかし、そんなところあるのだろうか。

ここはろくに整備もされていないような荒れた山。危険度も高く、魔物だって普通に徘徊している。

そんな中に救いの山小屋などあるのだろうか。いや、ないだろう。



「あ、やべ…」


『マスター!』



紅哉は一歩踏み出そうとしたとき、強烈な吹雪により態勢を崩してしまったのだ。

そんな彼を待っていたのは、もちろん落下以外他ならない。



「うわああああああ!!」


『マスターァアアアア!!!』



ニルは紅哉の意思関係なく顕現すると、転がって下へと落下して行く自分のマスターを掴む。

長時間吹雪にさらされたせいか、体温が著しく低い。このままではいくら龍人とは言え、衰弱死してしまう。

ニルは何かないものかと必死に頭を回転させてアイディアを練ろうとする。

しかし、そんな龍の前に魔物は現れた。


恐らく紅哉の悲鳴に気付いたのだろう。

吹雪も物ともしない強靭な身体を持つ魔物は、徐々に数が増えて行く。



「まずいな……オレ一人ならともかくマスターを庇いながらとなると……」


「オオオオオオ!!!」


「ちッ!やるしかないか!」



ニルは黒炎を吐いた。

しかし、この吹雪の中では十分な火力は出ず、魔物に当たっても痛くもかゆくもないようだ。


それにこの山を生き抜く魔物達だ。炎など全く受け付けないだろう。



「マスターすまん!少しオレの口に中にいてくれ!」



ブレスを封印する事にしたニルは、意識を失っている紅哉を口に入れる。

この吹雪の中では飛ぶこともままならない。


酷い状態でのニルの戦いは続く。

雪に足を取られて満足に動くことも出来ないニルは、何度も魔物の攻撃を受けた。



『こんな時ヴリトラがいてくれれば…!』



孤高に生きる龍族らしかぬことだった。

だが、それほどまでにニルは追い詰められていた。

もう魔物の数は分からない。

数えるのが面倒になった。


龍族の威圧を受けても全く怯みもしない魔物達に、ニルはもう苦笑いをするしかない。



「ガアアア!!」


「ぐぅ!」



ニルの腰に魔物が噛みついた。それが合図のように次々と魔物達はニルに襲い掛かり、どんどん体力は削られて行く。

そして何より、自分のマスターが心配だった。

紅哉のエーテルがまるで底に穴が開いたバケツのように減っていくのだ。エーテルとは生命のエネルギー。これは非常にまずい状態だった。


自分のマスターからエーテルを供給してもらっているパートナーにとってそれは、もはや死を意味した。

エーテルがなければ霊体となっている自分は生きられない。


ニルはあらん限りの力を振り絞って魔物達を振り払うと、最後の賭けに出た。



『このブリザードの中を飛ぶ!』



これしかなかった。

依頼が例え失敗になろうとも、死ぬよりは何倍もマシだ。生きていれば何とかなる。

ニルは翼を広げた。


そして空へ羽ばたくと、すぐに吹雪の影響は出てきた。

雪風にさらされる翼は、徐々に凍って行き、どんどん飛行は難しくなる。

ニルはまずいと思い、完全に凍ってしまう前にこの場から離れることを優先した。


だが、そううまくは行かない。



『ッ!?!?』



うまく飛べないのだ。

よく見ると、風を調整する翼の一部が凍ってしまっており、このままではどこかに突っ込んでしまいかねないほどスピードが出てしまっている。

方向転換もうまく行かず、ニルは風の流れに完全に乗ってしまっていた。


『まずいッ!このままでは!』



ドオオオオオオオオオオン―――――!!!



不時着した。

どこを飛んできたのかすら分からず、ニルは凍って行く身体を見て鼻で笑うと、エーテルの活動限界が来たのか、光となって消えて行った。


ニルが消えたことによって雪に放り出された紅哉は、意識を失ったままだ。


彼の背には、どんどん雪が積もって行った。


外伝です。

時系列的に言えばヴリトラが完全に仲間になる前のお話でしょうか。

なんで書いたかというと、ただ単純に書いてみたかっただけです!

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