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龍の血を引く者  作者: また太び
9章 未来のメッセージ
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豊姫のメッセージ

『どうだったかしら、お兄様のメッセージは。全く、何が守るよ……全然守れてないじゃない………』



映像は舞香を映し出した。

暗い表情をした舞香がぽつりと呟く。



『今この収録を撮っている時間は、朱音を過去に送ったすぐ後よ。まぁだからと言って何があるわけではないのだけれど。突然だけれど、私から瑠璃に課題を出すわ。今はそうね………あぁ、バハムート襲撃の頃にあわせているんでしたっけ?ええ、そうね』



舞香は視線をカメラから外して考える素振りを見せている。

思い出したのか、舞香は再び気怠そうにカメラへ向き直った。



『とりあえずあなたは神龍との連携を高めてメランコリアを習得しなさい。まだあなたは朱音から見せられた記憶でしか生成方法を知らない。あれはかなり危ないから今度からはあれに頼らず、出来るだけ自分のオリジナル性を強めて作りなさい。でも、一からは絶対無理よね。だから、解説を付けたこの時代の瑠璃の術式生成方法を用意したわ。後で見なさい』


「その基盤を元に自分で作れってことね………危ない修行になりそう……」


「そうだな……でも、未来のお前は成功している。きっと出来るはずさ」


「私も応援しています」


「ありがとう。私、頑張ってみるね!」


『さて、私からは以上かしらね。はぁ……疲れたわ。後で豊姫の所に行って飯でも食べようかしら……あぁ…詰んでいるエロゲもあったわね』


「………怠惰な生活をしているのは未来も変わらずか……」


「舞香ちゃんらしいね」


「私はご飯担当なんですか………」


『それじゃ、頑張りなさいよ。バハムートの所でお兄様を死なせたら未来はないわ。というか、誰一人として欠けてはいけない戦いよ。気を引き締めていきなさい。アイリ、止めて』



舞香は大きな欠伸をしながら椅子から立ち上がった。

未来の俺同様最後に手を少しだけ振って彼女はカメラの前から去って行った。


そして舞香が消えると同時に画面は暗くなり、しばらくするとバハムート撃退後のムービーに進むか、進まないかの選択肢が現れた。



「うん、私の話はここまでのようだね」



俺はパソコンからDVDを取り出してそれを瑠璃へ返した。



「つ、次は私の番……」


「なにをそんなに緊張しているんだ。ほら、早く寄越せって」


「う、うん…」



豊姫からディスクを受け取る。

そしてパソコンへ入れると、収録されたムービーが始まった。


映し出されたのはとても見たことがある廊下だった。



「え?俺の家か?」


「そうみたいだね」


「どうして紅哉くんの家?」



これはビデオカメラで撮影されたものなのか、若干の手ブレと誰かが歩く音が聴こえてくる。



『えっと、どうも豊姫です。現在の時刻は午前6時ですね。瑠璃さんから紅哉くんを起こしてくれって言われて、何故だかビデオカメラも預けられました』


「おい」


「い、今の私に言われても困るよ!なんで未来の私は豊姫ちゃんにカメラ預けているの!?」


「こ、紅哉くんの寝顔撮りたかったのかな……」


「それだ!」


「それかよ!」


『豊姫さん?何をしているのですか?』


『わわ!?セ、セレナさんですか……』


『ん?カメラ…ですか?何を撮っているので?』


『はぁ…私にもよく分からないのですが、これを持って紅哉くんを起こしに言ってくれと瑠璃さんに頼まれまして』



カメラに映ったのは未来のセレナだった。

スーツを着ていない事に違和感を覚えたが、それはすぐに霧散した。

何故なら、お腹が膨らんでいるのだ。



『なるほど、理解しました。紅哉の寝相は面白いですよ。確かに私も何度かカメラに収めようと思っていましたし、これは良い機会ですね。後で舞香にも見せてあげるといいでしょう』


『あ、あはは……そういえば紅哉くんの寝相は酷かったからなぁ……それ撮りたかったんだ…』


『ええ、もし紅哉にからかわれた時はこれを使って撃退しましょう。では、私は軽めの運動を』


『あ、セレナさんダメですよ。もうお腹に赤ちゃんがいるのですから、激しい運動は控えた方が』


『………そうですね。では、ダンベル程度にしておきます』


『出来れば動かないで貰いたいのですが、仕方ありませんね……』



険しい表情をしたセレナだったが、ダンベルを思い出して表情が輝く。

それを見た豊姫はもう呆れるしかない。


セレナと別れた豊姫は、真っ直ぐ紅哉の部屋へ向かって行った。



『紅哉くん、朝だよ』



ノックをした豊姫は、そのまま部屋のドアノブを捻って中へ入る。

そこには惨状が広がっていた。



「うわ……これは酷いな………」


「え?たまに紅くんこんな形になっているけど?」


「嘘だろ!?」



ベッドには足の関節から足までしか乗っていなかった。上は完全にベッドから落ちており、ベッドの上にはすやすやと身体を丸めたニルが寝ていた。



『相変わらず酷いなぁ……恐らくニルが紅哉くんを蹴飛ばしているんだろうね……』


「寝相悪いの俺のせいじゃないじゃん!ニルのせいじゃないか!」


「む!?オレのせいなのか!?いや!オレが霊体化しているときの朝だってこうなっているときがあるぞ!」


「そうね。ニルのせいじゃないわよ?紅哉は元から寝相が悪いだけ」


「嘘……だろ…?」



未来の豊姫は慣れた手つきで部屋のカーテンを全開にする。



『うわ……まっぶし…』


『紅哉くん、もう6時だよ?今日7時からファーヴニル部隊の会議でしょ?癒理さんはもう下でご飯食べているよ』


『……………やべ!完全に忘れていた!』



未来の俺は閉じていた目を覚醒させると、そのまま跳ね起きて部屋を出て行った。



『あわただしいね、いつものことながら……。えっと、もう多分カメラ切っていいよね。あ、紅哉くんカメラの存在に気付かなかったね』



そこでカメラは一端切れた。

次に映し出されたのは昼寝をしている紅哉と、その娘の朱音と理沙だった。



『あ、瑠璃さん。またカメラ回しているんですか?』


『えへへ~これね、アイリちゃんが旧型を改造して私にくれたの。すっごい扱いやすいんだよ~』


『子供たちの成長の記録を残しておくのはいいですね』


『うん。可愛いねぇ……ホントお父さん大好きなんだから』


『紅哉くんが休みの日は絶対べったりですもんね』


『私たちはいつも一緒にいるから新鮮味がないのかな?』


『どうなんでしょうね?やっぱりお父さんは偉大なんですね』



クッションを枕にして寝ている紅哉の腹部を更に枕にして寝ているのは娘二人。



『私、ちゃんと育てられるか不安だったけど、周りの皆に励まされて産んで良かったとホントに思っている』


『私もです。紅哉くんから産んでくれって言われた時が一番嬉しかったですけどね』


『うんうん!やっぱり夫の言葉は違うよね~』


『あ、瑠璃さん…』


『ああ…起こしちゃった…』



3歳になろうとしている娘二人が起きてしまった。

瑠璃が持っているカメラが珍しいのか、ずっと見ている。



『お父さんとのお昼寝楽しい?』


『紅哉くん起きないね…』



瑠璃の言葉に反応した朱音は、こくりと頷く。



『お兄様、今日こそ詰んでいるゲームを手伝って貰うわよ。ほら、何を寝ているの?起きなさい』


『うわ!?舞香さん!?家の中でワープはダメって紅哉くんに言われていたじゃない…』


『これは死活問題よ。私だって使いたくないのだけれど、1分1秒がとっても貴重なの。Time is moneyって言葉知らないかしら』


『知っているけど……』


『はぁ…豊姫ちゃん。私達と舞香ちゃんとのゲームの価値観が全然違うから、多分理解出来ないと思うよ』


『そういうことよ。理沙、悪いけれどお兄様は借りて行くわよ』


『うー……』


『ごめんなさいね。今度お兄様を休ませるから、今日は私に貸してね?』


『むぅ……』



寝ている紅哉から離れた理沙を見た舞香は笑顔を浮かべた。

『良い子ね』と言って理沙の頭を撫でると、舞香は紅哉を見てから、指を鳴らした。


パチンッ―――――!!!!


すると、床から大型犬サイズの犬が現れ、紅哉を背中に乗せて運び始めた。



『ケルベロス、私の部屋までお兄様を連行して頂戴』


『了解』


「ってケルベロスかよ!!完全に舞香の雑用になっているじゃないか!」


「舞香さん……」


「感情が戻っても平常運転だね…」


『それじゃあね、瑠璃、豊姫。しばらくお兄様を借りるわよ』


『あ~あ……紅くん絶対明日寝坊するんだろうなぁ……』


『まぁ明日は遅い出勤ですし、大丈夫だと思いますけど…』


『怖いから明日私が起こしに行くね』


『はい。よろしくお願いします』


『カメラ止めるね』



瑠璃はそう言って録画を止めた。

そして次に映ったのは椅子に座った豊姫だった。



『どうだった?こんな感じで私達すごしてきたんだけど、面白いでしょ?紅哉くんの休みの大半は、理沙と朱音ちゃんの相手か、それとも舞香さんと詰んでいるゲームをすることで終わるの。それがない日は部屋で寝ているか、車の改造しかしない暇人さんです』



楽しそうに未来の豊姫は語る。何気ない日常を。楽しかった日々を思い出すかのように。



『紅哉くんの隣にいるといつも楽しい出来事が起こるよね。いつもね、もっと早く紅哉くん達に出会っていたらもっと楽しい毎日が待っていたんだろうなぁって思うの。今でも十分楽しいけどね。舞香さんと紅哉くんが本気でゲームをしているのを隣で見ているのも面白かった。いつも紅哉くん負けちゃうけどね』


「未来でも俺は勝てなかったのか……」


「舞香ちゃんは生粋の廃人ゲーマーだしね~」


『紅哉くん、舞香ちゃん、ニル、リンさんがゲームしていて、それを応援している朱音さんと瑠璃さんと美波さんと凪咲さんと直人くんと俊介くん。後ろにはそれを眺めながら紅茶を飲んでいるセレナさんと癒理さんと龍一さんとヴリトラ。アイリさんはゲームを羨ましそうに見ていながらも、パソコンを弄っていてそれを興味津々に見ているのが遊佐さん』



豊姫の言葉は、すぐにでもその光景が頭に浮かぶようだった。

恐らく圧倒的力を誇る舞香を見た俺達は、手を組んで3人がかりで舞香を落としに行こうとしているのだろう。

それを朱音さんと瑠璃は舞香を応援し、美波はどちらを応援すればいいのか悩むはずだ。

そんでもって凪咲と直人と俊介はきっと俺達を応援するはずだ。

癒理とセレナとヴリトラは紅茶が好きな奴らだった。毎日朱音と龍一が淹れる紅茶を絶賛していた。

俺達の光景を呆れながら見ているのだろう。

アイリは自分の主張を言うようで言わない子だ。今度誘ってみようかな。遊佐は特定の事に関しては本当に驚くほど感情を出す。アイリの扱うパソコンに興味津々な気持ちも分からないまでもない。


驚くほど当たり前の日常だ。でも、なんだかそんな日常ですらかけがえないものなのだろう。未来の豊姫はこんな日常がとても楽しく、平和だったと言っているのだ。



『楽しかったよね。私もそれなりに紅哉くんの家に来てからゲームの腕は磨いたつもりなんだけど、舞香さんには一度も勝てなかったよ。もう舞香さんが扱うコントローラーが壊れるんじゃないかなって思うほど指が凄い勢いで動いていたし』


「未来の俺ですら勝てないんだ。豊姫が勝つには絶望的だろう」


「だよね……ちょっと腕を磨いた程度じゃ舞香さんには勝てないね…」


『あ、でも1回だけ勝ったことがあるゲームがあるよ』


『なんだって!?』



俺達は声を揃えて驚いた。



『パーティー用ゲームかなぁ。運要素が絡むゲームで、1回だけ舞香さんにそれで勝ったことがあるの。負けた時の舞香さん、すっごい絶望してたよ』


「舞香が負ける姿…………想像も出来ないぞ」


「うん……あの舞香ちゃんが負ける姿なんて想像できないよ」


「わ、私勝てたんだ…」


『さて、そろそろ前書きは終わりにして、過去の私に課題を出すね。とりあえずエヴォルトしなさーい!っと。簡単に言ったけど、難しいのは誰でも分かるよね。えっと、紅哉くんの知り合い、瑠璃さんの従姉に玲奈さんって人がいるんだけど、その人に手伝って貰えればうまく開花するかもしれない』


「玲奈か。確かにアイツならエヴォルトに至らせることが出来るかもしれない」


「え?玲奈さんってあの一度だけ会ったことがある人だよね!?」


「うん。私の従姉!紅哉くんのエヴォルトを助けてくれた人なんだよ」


「そうだったんですか……」


「玲奈にこの事を言えば手伝ってくれるかもしれないな」


「そうだね。私の方から言ってみるよ」


『私のエヴォルトはね、守りたい気持から開花したものだから、ちゃんと自分の意思をペガサスに伝えないと開花しないからね?これが開花すればバハムートのブレスを防ぐことだって出来る。でも、逆に言えば、エヴォルトに至らなかったらブレスを防げないってことだよ』


「バハムートのブレスはスーパーノヴァと言ってだな、星を破壊するほどの威力がある。まぁバハムートが全力で撃つとは思えないが、それを防ぐか。恐ろしい女だ」


「あのブレスはアタシとニルと神龍が同時に放ったブレスでも押し返せないわ。というか、範囲が違いすぎるもの。最初から話にならないブレスよ」



後ろにいるニルとヴリトラが解説してくれる。

それほどまでに強力なブレスなのかと思うと寒気がした。



『あと防ぐ前提で、奏さんがいないといけない。奏さんの固有結界の習得が間に合えばいいんだけどね………私の時は間に合わなかった。その結果が、これ』



豊姫は拡大した写真を取り出した。

そこには都市の半分が綺麗に深く抉れてなくなっているのだ。ビルを見てみるとよく分かる。まるで上から一刀両断されたかのようになくなっているのだ。



『私のエヴォルトだけじゃ防ぎきれない。さっき防げるって言ったけど、それは味方だけ。全てを守りきることは出来ない。奏さんの固有結界が間に合えば、確実に誰も傷付けないで守りきる事が出来ると思う』


「あいつ、固有結界を取得するのか……というか、隣人に魔法使いが2人で相当凄くないか」


『バハムートのブレスは太平洋を越えてアメリカまで届いたの。幸いアメリカに届いたブレスは砂漠だったそうだけど、これが都市に直撃したら相当な被害が出たと言われているよ』


「あいつの射程はいくらだよ」


「さぁ?アタシたちには分からないわ。あの人のブレスなんて一生に一度見れるか見れないかだからね」


「基本怒らないからな。オレも一度しか見たことがない」


「龍の里最後の日にしかアタシも見たことがないわ」


「それを吐くほどバハムートを追い詰めたのか、俺達は……」


「相当強くなっていたみたいだな。くっくっく、自ら王に手を下す日が来るとは面白いものだ」



ニルは邪悪な笑みを浮かべて笑う。

ヴリトラもどこか燃えているようで、彼女もにやにやと余り子供には見せられない表情をしている。



『さ~て、私も言う事終わったし終わりにするね。んじゃ、もう一度繰り返すね。とにかく玲奈さんを呼んでエヴォルトに至りなさい!もし至ったならとにかく何度も使用して完全に自分の力にすること!いいね!それじゃあね!』



忙しそうに未来の豊姫は一度だけウィンクして去って行った。



「っと、これで終わりか。後はお決まりのバハムート撃破後だな」



俺はディスクを取り出して豊姫に渡した。



「うん。この後の映像を見るためにも今は何としてでもバハムートを倒そう」


「そうですね。私もエヴォルトに至るために頑張ります」


「俺はカケルって人が見つかるまで待機なんだよな……」


「それは舞香さんだっけ?ちょこっと映像流したときに舞香さん編で何か言っていた気がするけど」


「そうだな。舞香がカケルを見つけるそうだ。はァ……早く見つけてくれよ…」



何気なく時計を見てみると、既にもう0時になろうとしていた。



「おっと、もうこんな時間か。明日学校の集まりがあるそうだ。早く寝て明日に備えようぜ」


「私も翡翠だから行かないとなんだよね~。それじゃ、紅くんおやすみ~」


「アイドルでも、所属は翡翠ですもんね。それじゃあね、紅哉くん」


「おう。また明日」



二人は俺の部屋から出て行った。

映像を3本も見ていたせいか、肩が少し疲れたようだ。どれだけ気を張って見ていたかがよく分かる。



「さて、俺も寝るか」


「そうね。アタシたちも寝るとしましょうか」


「オレも眠いぞ。じゃあな、マスター」



俺はそのままベッドにもぞもぞと入り込むと、ニルとヴリトラは霊体化して眠りに入る。

彼女らを見届けた俺もすぐに夢の世界へ旅立った。


ということでメイン3人のメッセージが終わりました。いや~疲れますね。

バトル書いていた方がよっぽど気持ちがいいものですが、やっぱりまだまだトーク系は私の課題になりそうです。

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