共闘と総力戦
カツーンカツーンと地下の通路を朱音と瑠璃は歩いて行く。
「あの、どこに向かっているんですか?」
「制御室だよ」
「制御室は上にありませんでしたっけ?」
「あったよ。でも、あたし達が目指しているのは制御室の本体。上にあるのは電話で言う、子機みたいなもの。あたし達は電話の親機を止めに行くの」
何故朱音さんは真っ先にここに来たのだろうと瑠璃は思った。
奏たちは上の制御室に向かったのに、朱音は迷う事もなくここに来た。
『ううん…!今はこの騒ぎを止めないと!』
そう、今はこの騒ぎを収めることが最優先事項だ。
この謎はきっと彼女自身から語られることだろう。
「全く台無しにしてくれたもんだよね~」
「え?何がですか?」
「レース!あのまま行けば紅哉君勝ったんだけどな~」
「あ、そう…ですね」
いつの間にか近くに来ていた朱音に瑠璃は少し驚いてしまった。朱音はその様子を見て、一瞬だけ目を伏せるが、すぐさまいつもの笑顔に戻る。
「いや~ホント世の中便利になったもんだよね~」
朱音は前を歩きながら、そんな話を切りだした。
「私の時代はね、そりゃもう化学が全然発展していないっていうか、もう失敗の連続のような時代だったよ」
「失敗の連続?」
「そう、失敗の連続。もう何をやってもダメでさ、あと数年すればこんなのが出来ます!って言っても結局出来なかったり」
「朱音さんの頃は全然便利じゃなかったんですね」
「うん。だからね、ちょっとだけ紅哉君や瑠璃ちゃん達が羨ましいの!もう何でもある時代じゃない?あたしももう少し遊んでいたかったなぁ……だから、羨ましいの………ホントお母さんとお父さんともっと遊んでいたかった……」
「はい?最後なんて?」
「う、ううん!なんでもないの!」
瑠璃は昨日の夜から朱音の様子がおかしい事が気になっていた。
それにいつも袖をまくっている朱音が今日に限って袖を降ろしているのだ。先ほどの包帯は何だったのだろうか。
『それに……朱音さんの腕から何か出てたような………………気のせいだよね…』
大剣を背負う朱音さんの背には、何か覚悟を決めたような哀愁が漂っていた。
「もう魔物何体出て来るんすか!」
「直人くん!次来るよ!構えて!」
「は、はいいいいっす!」
「もうこれ全部燃やしちゃっていいですか~?凪咲面倒になってきました~」
「いやいや!全部燃やしたら会場まで燃えちまうだろ!」
「む~そういう熱血師匠も満身創痍じゃないですか~」
「でも、燃やしたら後々面倒になるだろ……」
「俊介さん、早くしてください。前衛の直人さんが厳しいようです」
「おおっと!直人!今行くからな!凪咲!今はとにかく減らす事だけ考えようぜ!」
豊姫たちは、紅哉とティアが閉じ込められているVR空間の入り口で魔物と戦っていた。
倒しても倒してもキリがない。むしろ逆に増えているような気がしてジリジリと豊姫たちは押し返されて行く。
このままでは…と若干諦めそうになった瞬間にそれは現れた。
「伏せろ!」
凛とした声が響くと同時に豊姫たちは背を低くした。
その瞬間、おびただしい数の魔物が断末魔を上げながら横一閃され、倒れて行く。
「この数は流石に手が余るだろう。私も助太刀しよう」
「俊介さん!助太刀いたしますわ!」
氷の一閃と光の一閃が魔物を切り裂いた。
「ネルタ!」
「花梨さん!?」
俊介と豊姫が振り向くと、そこには冷気を纏う花梨と鎧を着たネルタがいた。
「我々が来たからにはもう大丈夫だ。前衛は任せるがいい」
「俊介さん達は一度下がってください!私たちが代わりに戦いますわ!」
「ありがとう二人とも!直人!凪咲!一度下がるぞ!」
俊介の声に反応した二人は、すぐに豊姫の元へ下がる。
そして彼らと入れ替わるように前衛へ花梨たちが飛び出した。更にここへ心強い援軍が加わる。
「ランナ!突っ込むよ!」
「おいおい!休む暇もないのかよ!」
「おお、晴樹!ティアの弟子も来たか!」
「花梨っち久しぶりだな~!」
グガランナに乗った晴樹は金棒を振り回す。
すると、天からの轟雷が金棒へ落ち、晴樹はそれを思いっきり振り抜いた。
ガアアアアアアン―――――!!!!!
轟雷は人の目に稲妻の残像を焼き付け、そして敵を一瞬にして灰にする。
「花梨さん!私たちも手伝います!」
「いいだろう、今は大会ところではない。ここは一つ力を合わせるとしよう」
花梨は一つにやりと笑うと金正と銀正を抜いた。
みんな仲良しです。大会だからいがみあっているのではなく、大会さえ終わってしまえばみんな仲良し!
ということで、それを表すためにも雪崩のように襲い掛かってくる魔物たちに対して共闘する!という形になりました。




