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龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
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緊急事態

それを見ていた舞香たちは何が起きたのか分からなかった。



「え!?ど、どうなっているの!?紅くんは!?」



瑠璃の視界にはドームが真っ暗になっており、中の状況が分からないのだ。



『機械のトラブルが発生したため、しばらくお待ちください』


「機械………アイリ、これは…?」


「ん~アイリが見た感じVR空間を形成する機械が逝っちゃったみたい。二人とも相当強かったみたいで、グガランナ、サタン、ヴリトラ、ファーヴニル、タテミカヅチ、と言ったとんでもパートナーが多すぎたみたいで、壊れちゃった~!って感じだと思う」


「でも……過去に一度もなかったはず………」


「そうなんだよね~アイリも気になっているけど、それくらいしか分からないんだよ~」



瑠璃は紅哉のことが気になり、アイリと舞香の会話など聞いていなかった。



「俺!ちょっと紅哉先輩のところ行ってくるっす!」


「あ、私も!紅哉くんが心配!」


「では、私も行きます」



舞香、瑠璃を残してあと全員は紅哉がいるVR制御室に走って行った。

瑠璃も行こうかと、立ち上がろうとしたとき、肩をちょんちょんと誰かに叩かれた。



「え?朱音さん?」


「瑠璃ちゃんちょっといいかな」


「え?あ、はい」



立ち上がった朱音に続いて瑠璃も立ち上がった。



「あの、朱音さんどこに行くんですか?」



ざわめきに包まれる会場を抜け、誰もいなくなったホールに『ソレ』はいた。



「グルルルルル………」


「あ、朱音さん!あれは!」


「魔物だよ。紅哉君たちのレースを邪魔したのはこいつらなの」



朱音は大剣を抜いた。

そして瑠璃はメイド服から覗く包帯を見てしまった。



「朱音……さん?」


「瑠璃ちゃん!これはまだまだ序章!行くよ!ここには誰もいない、神龍を使っても誰も分からない!ガンガン行く!」


「なんで神龍のことを…?」


「後で説明するから今は倒していくよ!」



はい!と返事をする前に朱音の姿は雷となって消える。



「あれは、紅くんが得意なアークブラスト……」



奇妙な姿をした魔物を朱音は斬り倒す。

彼女が動く度に彼女から稲妻がほとばしる。まるで荒れ狂う龍の如く踊る朱音は床から現れる魔物へ何度も何度も剣を振るう。



「瑠璃ちゃん!天罰を使って!悪意なら相手の方が高い!」


「あ、はい!神龍!天罰!」



黒い霧に包まれた神龍の左足の白い宝玉が輝く。


すると、これから出現するはずだった魔物から、存在している魔物全てに対して雷が降り注ぐ。

これは悪しき心を持つ者に対して降り注ぐ不可避の神雷である。



「今だよ!一気に駆け抜ける!」



瑠璃は言われるまま朱音に従う。そして通り過ぎた足元からまた魔物が沸いてくる。



「もう何なの…これ……」



それから数十分朱音と瑠璃は走り続けた。

いくら魔術で身体を強化していると言っても、流石に疲れてくる。



「はぁはぁ!あ、朱音さん!まだ走るんですか!?」


「もう大丈夫だよ。一旦ここで休もう」


「そう、ですか……はぁ…はぁ…!」



ここは地下の階段だろうか。

赤いランプで照らされた階段に瑠璃は息を整えながら座る。

朱音は周りを見渡して、敵がいつ来てもいいように目を凝らす。



「あの、朱音さん。どうして神龍を?」


「それはもう少ししてからね。今日、みんな集めて話すから……」


「朱音さん…?」



一度だけこちらを見た朱音さんの顔は悲しみに満ちていた。




「おい!誰かいないのか!おーい!」




紅哉とティアはいま真っ暗な空間に閉じ込められていた。



「何ですか…!これは!管理の者は何をしているのですか!」


「制御室で何かあったみたいだな…」



叫んでも外には聞こえない。

完全に閉じ込められた紅哉とティアの周りの地面が突如沸騰したお湯のようにぐつぐつと泡が沸きあがって来た。



「あれは何ですか……?」


「キシャアアア!!」



泥沼から飛び出したのは魔物だった。

1体だけではない。それはもうおびただしい数の魔物だった。


1体1体の能力は低いものの、数が多い。



「なんでVR空間に魔物が!?」


「紅哉!今はそんな事よりも迎撃しましょう!じゃないとこちらがやられてしまいます!」


「そ、そうだな。ニル!ヴリトラ!もう少しだけ頑張ってくれ!」



もはやレースどころではなくなってしまった二人は、まだまだ湧いてくる魔物に対して拳をかためた。



「キャアアアアア!!」


「な、なんだよこれ!?」



一方その頃舞香たちは突然現れた魔物に対し、結界を貼って一般人を会場から遠ざけようとしていた。



「お兄様は………それに朱音と瑠璃はどこ……」


「舞香!ここは任せられるか!?お父さんたちは一般人を誘導してくる!」


「うん……この程度の魔物なら大丈夫……」



雅文たちは一般人を誘導して会場を出て行った。

クロフィードも麗華も付いているから安心だ。さて、これで本当に一人になった舞香は突然結界を解いた。

結界を解けば、もちろん今まで結界に張り付いていたおびただしい魔物が舞香に襲い掛かる。



「リア……」



しかし、舞香の目の前を巨大な黒い影が通過した。

リアだ。冥王龍は冥界に繋がる口を利用してどんどん魔物を呑み込んでいく。

10本もある首はまるで一つ一つ違う生き物のように襲う、襲う、襲う、襲う。



「リア……キリがないね……これどうなっているの…?」


『恐らくこれはVR空間の訓練用の魔物でしょう。手応えがVR空間独特の感触です』


「そう………ハドロンブレス」


「ゴバアアアアアア!!!!!」



舞香の命令に反射的に反応したリアは、舞香が言わなくとも首を左右に振って全方位にブレスを放つ。

観客席が派手に壊れたが、舞香の知った事ではない。

VR空間の魔物だからダメージなどないのではないか、と思うかもしれないが、そんなことはない。

VR空間のダメージ変換は精神。つまり、身体の外傷はないが、中はズタボロになるということだ。

幻と言って侮ってはいけない。



「行こう………」



舞香は強力な結界を貼ると、軽やかな足取りでその場を離れた。


なかなか忙しくて手がつけられない状態ですね。というか、ここ最近そういう言い訳ばかり……?まぁともかく本編の方では緊急事態ですね。ここから先は朱音が暗躍する話となります。

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