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龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
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邪龍の力

「なんですって!?奈々がやられた!?」


「うお!?ファルスもか!?」


「おいおい!俺様の弟子もかよ!?」



ティアと晴樹と結城は弟子がやられたことに驚いていた。

ティアは普段は冷たいが、これでも奈々のパートナーの力は買っているつもりだ。彼女の予定では、紅哉たちの弟子を全てリタイヤさせて自分の援護に回らせる予定だった。


しかし、いまこのVR空間から奈々のエーテル反応が消えた。これはもう、リタイヤしたとみるしかない。

そして晴樹と結城という男の言葉を聞く限り、残っているのは紅哉の弟子だけだ。



「まずいですね……周りが全て敵という状況で一人でも仲間が増えるとなると……」



ティアは少し先を飛ぶ龍を見る。後ろでは晴樹と結城が戦闘をしているが、紅哉は絶妙な距離を稼いでティアの攻撃をうまく躱している。

先ほどのやりとりは、ただ距離を稼ぐためのもので、まだ全力で勝負に来ていない。



「なるほど、全力を出すのは要塞崩しの時ですか……まぁ、これは前哨戦みたいなものですからね」



だが、とティアは自分の言葉を打ち切る。



「例え前哨戦でも翡翠に負けることは許されないのですよ!」



ティアの両目が怪しく光る。



「ぐッ!?こいつは、ティアの邪眼か!」



紅哉の動きは流石に止める事は出来なかったが、明らかに速度は落ちていた。



「貰ったぁああ!!」



そこへティアが空間ごと裂いてしまいそうな、サタンの一撃を紅哉へ振るう。



「ヴリトラ!防御に回せ―――!!」



背後を振り返った紅哉は咄嗟に腕をクロスしてティアの攻撃を出来るだけ軽減しようとした。


しかし、ティアの行動は終わらなかった。振り向いた紅哉の背中へ流れるように移動する。

そこから、がら空きの背中へティアの爪が背中を引き裂いた。



「がああ!?にゃろう!」


「動けるのですか!?」



鎧を貫通して、灼熱の痛みを訴える背中の傷に構わず紅哉は高速スピンして、振り向きざまにティアへ手の甲を使ったバックハンドをお見舞いする。


それをティアは上体を仰け反らせながら避けると同時に、そこからサマーソルトで紅哉の顎を撃ち抜く。

紅哉は顎を撃ち抜かれて脳を揺さぶられる。だが、まだ倒れるわけにはいかない。



「ア……アァ!!」



ティアは嫌な予感がしてその場から後退する、次の瞬間今まで見たことがないような黒紫の炎のブレスが吐き出された。

プリズンブレスを足に喰らったティアは、身体から力が抜けるような気がした。



『いや……これは力が抜けている…!?なんなのですか…?あのブレスは…』



そして自分の影から伸びてくる小さなドラゴンの顔が、無数に襲い掛かってくる。

脆いが、何せ数が多い。



「う、鬱陶しい!」



ティアは巨大な腕を振るう。すると、影のドラゴンは瞬く間に引き裂かれて虚空へ溶けて行く。



「プリズンロック…!」



それが紅哉の狙いだと知った時は、既に遅かった。

両腕、両足の関節部に虚空から現れた黒紫の龍が食らいついてきた。



「いたっ!ち、力が抜ける…!」



紅哉は両手の爪を地に突き刺す。

4足歩行となった紅哉の口に光が集まりだした。



「くッ!外れない!やっぱり弱体化してるみたいですね!」


「じゃあな!ティア!」



紅哉のシャインシャワーブレスが発動する寸前で、邪魔が入った。



「紅哉とティアっちお待たせー!!!」


「嘘だろ!?」


「きゃああ!」



紅哉とティアの頭上に雷が落ちてきて、余りの電流に意識が飛びそうになる。

もちろん紅哉のシャインシャワーブレスとプリズンロックが解除され、ティアは地面に着地する。

プリズンロックが解除されたことで、ティアの身体にいつもの力が戻ってくる。



「お楽しみのところごめんな!もう二人だけでイチャイチャはなしだぜ!やっと神奈川の奴片づけたから、これから思う存分やろう!」


「ええ、私も混ぜさせてもらいますよ」



ドヤ顔をしている晴樹の姿が一瞬で消えた。

それは突然の乱入者によって蹴り飛ばされたものだ。


禍々しい魔槍を構える紅哉の弟子はすぐに己の師匠の元へ向かう。



「大丈夫ですか?師匠」


「癒理か。大丈夫だ、まだいける。それで、他の弟子はどうなった?一応知っているが、詳細に頼む」


「はい。スタートした時、私のゲイボルグを警戒したところを狙って、まず師匠と合流することに決めました。しかし、追ってくる気配がない。そこで少し様子を見ていたら流星が降って来たので、それを躱しつつも、まず神奈川の選手がリタイヤ。そして次にグガランナがエリナールを撃破。最後に2人を倒して気を抜いているであろう、白銀の心臓を因果律最大まで結び付けたゲイボルグで貰いました」


「あぁ、こっちにも流星が降って来たな。あれは牡牛の仕業だったか」



紅哉は落雷による身体の痺れを龍の細胞を活性化させて無理やり、それを抑える。



『これだから雷系統の敵とは戦いたくないんだ…』


「うっはー!随分と良いの貰ったな!」



晴樹は金棒を肩に担ぎながら、尻をさすっている。

今の紅哉たちは動けないでいる。動けば誰かが必ず殺りにくる状況で、むやみやたらに動くことは出来ない。


幻獣の王、魔界の王、雷雲の神がその場に集まったときのプレッシャーはとてつもなく重い。

癒理は顔に出さないこそ、内心ではかなり動揺している。

一言で言うと、早くこの場から立ち去りたい。中学時代の臆病な自分を思い出すようで嫌悪感に陥りそうになるが、今は師匠の言葉を待つ。



『うっひゃー……このメンツはどんな英雄でも逃げ出したくなるぜ…』



リンも引きつった笑みを浮かべている。



「癒理、一度しか言わないからよく聞け」



紅哉は癒理にしか聞こえない小さな声で囁く。



「俺がヴリトラを使って隙を作るから、全力で逃げるぞ」


「分かりました」


『なぁに?アタシをこの場に出すって言うの?』


『お前は炎の塊みたいなものだから、見ている人には俺が炎で作った~って言うから派手に暴れろ』


『分かったわ。それだと、余り本気は出さない方がいいわね。あなた達が少し先に行ったら消えるわよ』


『了解だ。よし、3カウントで行くぞ』


「3秒後に始める」



紅哉は指を3本立てる。



「スリー……ツー……ワン……今だ!」


随分とご無沙汰でした……更新が遅れて本当に申し訳ないと思っています。

引っ越し、新しい環境に慣れないということもあり、なかなか執筆する機会が遅れてしまいました。

さて、今回は結構作りこんでいきたいと思っています。実はですね、この話はあっさりと進めてさっさと要塞崩し編に行きたかったのですが、いつの間にかこんなことに……。

では、ここらへんで…ww

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