準決勝 翡翠エースVS白銀エースVSエリナールエースVS何者?(前半)
『遂に準決勝となりましたが、その準決勝を彩る1回戦はこちら!』
『優勝候補3県が争う組となっておりますね。サタン、ファーヴニル、タテミカヅチ。日本を代表するSランク級パートナーです』
実況をするなか、会場からは溢れんばかりの応援が飛び交う。エースが出場するということで、どのチームも負けられない戦いなのだ。
そして場所は変わりVR空間。
腕を組んでその時を待つ紅哉。呼吸を整えているティア。ストレッチをしている晴樹。そしてツンツン髪に右顎に傷がある少年。
この最後の少年は身長が限りなく小学生に近い。舞香より少し背がある程度の少年の名は後藤 結城。神奈川県のAチームのエースだ。
化け物揃いの準決勝に飛び込んだ彼は、下剋上を狙っている。
『誰も俺に注目してないだろうな……だが!こいつらを叩きのめして俺の名を全国に轟かせてやる!!』
「くっくっくっく…」
『おっと、思わず口に出してわらっちまったぜ』
結城は邪悪な笑みを浮かべてスタート開始となるその時を待った。
そして癒理は1回戦で使ったゲイボルグは通用しないと思っていた。
グガランナは天災そのものだ。心臓はあると思うが、そこまで槍が貫通するかどうか怪しい。
そしてガルム。これは殺せるかもしれない。しかし、ゲイボルグの因果律がどこまで届くか。ゲイボルグを溜めている間に攻撃されてはひとたまりもないし、ここは三つ巴を狙うのがいいと判断した。
紅哉と協力しつつ、ティア、奈々を牽制。晴樹とファルスを撃破することに努める。
『これで行きましょうか……』
『そうだな。とりあえずスタートしたら、真っ先に逃げろよ。天の牡牛はまずい』
『分かっています。牡牛をどう対処するか……これは後で考えるとしましょう』
『ガルム程度ならオレの足に敵わねぇ。ルーンを使えばついて来れないはずだ。まぁだが、こいつらが勝手に争ってくれるなら嬉しい限りだな』
癒理とリンの作戦は決まり、最初はいち早く師匠と合流することに決定した。
『それではスタートします!よーい!ドン!!』
『ユニゾン!!』
紅哉、ティア、晴樹、結城は4人同時にユニゾンをする。
「紅哉!!覚悟!!」
「ウオオオオアアアア!!!」
「んじゃ!俺はこっちの生徒を潰すか!!」
「そう簡単にやられると思うなよ!」
結城のパートナーの名前はサラマンダーという火のトカゲだ。
触媒は金さえあれば簡単に手に入り、なおかつAランクというとても優秀な魔物だ。
マグマを彷彿させる鎧にトカゲのような滑らかな鱗。そして細い尻尾のトカゲ男となった結城はタテミカヅチの金棒を叩きつけられる。
「いッ!?」
『おいおい!なんつう力だよ!!Sランクってのはここまで規格外なもんなのか!?』
「ほらほら!!」
ガンガンと何度も上から埋めるように叩きつけられると、足がどんどん地に埋まって行く。
そして少し先を飛ぶ紅哉とティアは低空飛行で飛びながらも、一進一退の攻防を繰り広げていた。
紅哉はサタンの闇の力を軽減するヴリトラの炎を纏い、ダメージを減らしながらも攻撃に移る。去年とは圧倒的に違う力を見せつけられたティアは、僅かに動揺が走る。
「ハァアア……!」
地を抉るサタンの一撃を紅哉は左手で受け止め、それを跳ね除ける。飛行態勢が崩れたティアのところへ、紅哉は一瞬で加速して懐に飛び込む。
だが、ティアもそこまで甘くはなく、飛び込んだ紅哉に対して空いている腕を使い、紅哉の掌打を防ぐ。
ミシィイイ―――――!!!
「うっくぅ…!!」
腕のアームを貫通して骨に響く。
紅哉が放った掌打は、身体の振動を与えるものだ。つまりはガード貫通攻撃であり、ダメージは少ないが、それでも確実に相手にダメージを与えてパフォーマンス力を鈍らせる効果を持つ優秀な技だ。
ティアは思わず顔をしかめるが、一瞬で持ち直し、まだ左腕に当たっている紅哉の腕を右手で掴む。
「うォ!?」
紅哉は隙が出来ると思っていたのだが、ティアのタフさに驚き、腕を掴まれている事を一瞬忘れる。
ティアは左手の鈍痛に耐えながら、お返しとばかりに左手で紅哉の顔をアームで殴りつけた。その瞬間紫色の煌めきと共に爆発が起こる。
「ガアアア!?」
爆発は一度では終わらず、連鎖して紅哉が一歩後ろに後退するたびに爆発する。
計6回爆発目で収まる。
「裁きの雷」
ティアは右手の人差し指を天に掲げて、そこから紅哉を指差した。すると、天から轟雷が紅哉に襲い掛かる。
「プリズンホールド!」
雷が落ちる前に、紅哉の影からおびただしい数の黒い影の龍が生まれて、天の轟雷を喰らいにかかる。
数秒しか抵抗出来ないだろうが、回避するには数秒あれば十分だ。
紅哉は翼を操作して横へ飛ぶ。飛びながらカオスブレスを放つ。もちろんティアはそれを防ぐだろう。だが、それはミステイクだ。
紅哉が放ったブレスは目潰しだ。
顔を狙うように放ったブレスに対してティアは、巨大なアームで顔を覆う。それが狙い。
紅哉は地を蹴った。弾丸のように飛び出した紅哉は、ブレスを防ぎきって手を顔から退かそうとしたティアに向けて速度を生かした飛び蹴りを腹部に叩き込む。
「まさか!?サタン!!」
ティアもただでは喰らってくれないのか、緊急のガードとして翼で身体を覆うようにして紅哉の攻撃を受けた。
砲弾のように飛んだティアに対し、紅哉は更に追撃を行う。
肺から沸きあがる炎を口にため込んで、天へ黒炎弾を打ち上げた。
「ブラックメテオ!!」
特大の花火のような音と共に空中でばらけた黒炎が、地上に降り注ぐ。
当たらなくても構わない。ただ、相手にガードをさせるという事が大事なのだ。
これは時間稼ぎであり、紅哉はこの隙に距離を稼ぐ。
バサァ!!!を大きな翼を広げて、紅哉は先を急いだ。
「いったぁ………紅哉の力を侮っていましたね。サタン、動けますか」
『問題ない。翼が修復するまであと5秒だ』
紅哉の攻撃を受けた左翼は、紅哉の蹴りによって貫かれて穴が開いていた。
白い煙を出す翼を一瞥すると、ティアは立ち上がる。
それと同時に翼から白い煙が消えて完全回復する。
「紅哉、逃がしませんよ」
ティアも翼を広げて紅哉を追った。
「グガランナ!!」
「ユニゾン!」
「ガルム!!」
奈々とファルスはゲイボルグを警戒しているのか、横に飛びながら己のパートナーを呼び出す。
癒理はそれに目もくれず、一瞬でユニゾンすると風のルーンを刻む。風を纏った癒理はコースを駆けだした。
「やられた!!ガルム!追え!」
「グガランナ!蹂躙!!」
『モオオオオオオオオ―――!!!!』
天の雄叫びに等しい風の牡牛は、チャリオットを荒々しく引きながら駆けだす。
ガルムは牡牛に追いつかれないように疾走する。
「スターダスト・リマンテ!」
奈々は光の手綱をピシィ!とグガランナに叩きつける。すると、グガランナは前足を高く上げて、思いっきり地面に叩きつけた。
その瞬間、VR空間に夜が訪れる。星座が輝く星空に他の選手とファルスは心を奪われるが、次の瞬間その顔は恐怖に歪む。
降り注ぐのは流星。グガランナは星座になったときに自分を形成する星座の星を落とす事が出来るのだ。細かい星が降り注ぐなか、一際大きな星が数回に分けてコースへ落ちる。
「ランナ!照準よーい!」
『モオオオ!!』
チャリオットに搭載された大砲が、前方で流星を避けながら走るガルムを捉える。
もちろんグガランナは地も空も選ばない戦車だ。
空中を走るグガランナにでこぼこの地上を走る意味などない。
奈々は手綱を激しく操作しながらチャリオットの大砲の角度を調整していく。
「エクリプスキャノン!!!」
バガアアアアン――――!!!!
とてつもない衝撃波と共に大砲が発射された。
「イービルアイズ!!」
ガルムの目が怪しく光る。
その瞬間、ガルムの姿が掻き消えた。
「幻術ですね。だけど、ランナに死角はありません!」
グガランナは角に竜巻を起こすと、それは周りの樹木を吸い込んでいく。
例え隠れていようとも、引き寄せてしまえば同じ事だ。
「見えなくても、これなら!ランナ!ターン!」
声に反応したグガランナは、前に進みながら回転を始めた。鋼鉄のチャリオットを振り回し、奈々は大砲をセットする。
「乱れ打ちです!エクリプスキャノン!」
戦車の砲弾の発射音の如き、大砲が乱れ打ちに発射される。
「キャン!?」
「ガルム!」
「やりました!」
大砲を受けたガルムは、数回バウンドして動きを止めた。
プルプルと震える足は真っ赤に染まっており、もう動けそうにない。
そこへチャリオットを引いたグガランナが現れ、奈々は呼びかけた。
「リタイヤしてくれませんか?これ以上あなたを傷つけたくはありません」
「くッ…!………分かりました。負けを認めましょう。僕の敗北です」
ファルスは悔しそうにリタイヤしていった。
奈々はそれを見届けてから一息つく。その時だった。
「さようなら」
「ッ!?」
グシャアア――――!
禍々しい槍が奈々の心臓を背後から貫いていた。
気配を消すのは忍者の基本であり、気を抜いたところを癒理が一突きした。
「あ……あぁ……そんな…」
震える手で槍を掴もうとするが、癒理は槍を引き抜く。
それと同時に血が噴き出して奈々はリタイヤしていった。
「戦場では気を抜かない事です」
癒理はくるくると槍を回して背中に刺すと、師匠が待つ合流地点へ急いだ。
優勝候補3校がぶつかる今回ですが、少し長くなりそうかな~?と思い前半と後半に分けさせてもらいました。
出来るだけバトルの描写をうまく書こうと努力しているので、どうか生暖かい目で見守ってください(笑)
熱い攻防が表現できているとうれしいです。
そして今回も血も涙もありませんね、この癒理ちゃんは。純粋無垢な奈々ちゃんの胸をグサリですよ。ですが、癒理は紅哉の前だとデレデレなので、クーデレと言ったところなのでしょうか?




