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龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
83/162

第3回 ニルとヴリトラのショートコーナー!

「ニルと!」


「ヴリトラの!」


『ショートコーナー!』


「えっと、これで第3回目なのかしら?」


「そうなるな。何でも今回の章は長い事から、オレたちが出ることになったそうだ」


「ニル、今回ちょっと凄いらしいわよ」


「何が凄いのかはっきりと言え。これを見てくれている読者に悪いだろう」



もったいぶっているヴリトラにニルは椅子に寄り掛かって、手の平を振って『さっさとしろ』と先を促す。



「もう仕方ないわねぇ………第3回目だけれど、なんと!今回はロングかもしれないわよ!」


「なに!?ショートなのにロングなのか!?」



椅子に座っていたニルは危なく椅子から転げ落ちそうなった。



「ほら、今回登場人物ばっと!来たじゃない?それで結構長いそうよ」


「なるほどな。確かに登場人物が多くて覚えるにも覚えられない人が出てきそうだな」


「ということでアタシたちの出番ってわけね!」


「そうだな。さて、今回はゲストが来るそうだが、誰が来るんだ?」



ニルはカンペと共に流れてきたアイスを食べながら、そのカンペをヴリトラへ流す。



「あなた仕事しなさいよ……」


「いいから呼べ。その間にアイスを食う」


「全くあなたったら………んじゃ!アタシが呼ぶしかないわね!今日のゲストはこの方よ!」



パチパチパチと拍手と共に迎えられたのは――――



「みなさん、こんにちは。白銀城塞学園2年生の黒河くろかわ ティアです」


「む、お前だったか」


「何故私がここに呼ばれたのか、さっぱりわかりませんが、紅哉から出ておけと言われたので仕方なく!出たのです。別に、私の事を忘れて欲しくないとか、そんな事は思っていませんからね」


「ここまであざといツンデレも珍しいわね」



紅哉の名前を出した辺りから頬を染め始めたティアにニルとヴリトラはジト目になっていた。

ティアは腕を組みながらニルとヴリトラの間の椅子に座る。



「それで、ここに来るときに少しだけ資料に目を通しましたが、これは人物紹介とかでいいのですか?」


「まぁそんなところね。今回は長いから覚悟しておくことよ」


「それは別に構いませんが………まずはどんなのからやるんですか?」


「まずはこれだな」



ニルはモニターを指差すと、画面にでかでかと『アヴェンジャーズの幹部について!』と書かれていた。



「今回の章でアヴェンジャーズの幹部全員が出たということですよね。これはなかなか大変そうです」


「そうね。一気に出てきて正直アタシでもびびっているわ。んじゃ、改めて全員紹介していきましょうか」


「まずは章仁だ。こいつは結構出てきているから、皆は覚えていると思うが、一応だ」



画面には章仁の立ち姿が浮かび上がり、徐々に上へスクロールしていく。



かがり 章仁あきひと 年齢はそこまで紅哉と変わらないわね」


「私たちとそう変わらない人が世界を『悪夢』に陥れたというのですから、少し信じられませんね」


「章仁は曰く『やっていないとも言えるし、やったとも言える』という発言はしていたな。その言葉をマスターがどう受け止めたか、まぁこれは知らんが、少なくとも自分には余り罪の意識はないようだ」


「舞香さんの事は謝っていましたよね。それで相手が有利になるプログラムもプレゼントしたのですから、多少は信じてあげてもいいかな~という感じはします」


「人の気持ちなんて自分にしか分からないわ。少なくとも舞香は信じていない様子よ」


「真実が語られるのはまだ先のようだな。さて、次はこのちっこい奴だ」


「えーっと、綾香。これだけなのですか?苗字とかないの?」


「苗字はないようね」



ヴリトラとニルはカンペを見てみても、どうやらないようで、話をさっさと進めるようだ。



「綾香。現在は蒼紺そうこん魔術育成学校に通う中学2年生だ。この蒼紺は翡翠の姉妹校に当たる学校だな」


「これ読むんですか……?相当ブラックな話なんですけど……」


「読まねばなるまい。さっさと読め」


「分かりましたよ………えーっと、小学4年生の時に両親は多額の借金を返す目途が立たず、綾香を残して自殺。綾香はそのショックから1年間目を覚まさず、起きた時には全て忘れてしまっていたそうです」


「酷い話ね……両親は何をしていたのかしら」


「父親は普通のサラリーマンだったそうです。しかし、クビになってから再就職を求むも、何度も失敗し、パチンコをやるだけの人になってしまったとか……母親は専業主婦ですね」


「それで借金が増えていったわけか。それでよく綾香を学校に通わせていたな」


「娘にだけは黙っていたそうです。それで学校から帰ってきたら………」


「なるほどね……あんな歳で章仁の所にいるから何かわけありなのは分かっていたけれど、相当なものねこれ」


「まぁフラッシュバックして余計な事を思い出して壊れてしまうよりは、忘れてしまった方がよかったのかもしれんな」


「そうね。さて、次に行きましょうか」



ヴリトラは綾香の画面から次は沖田の画面になった。



「沖田。アヴェンジャーズをまとめる章仁の右腕ね。まさにヤクザって感じの人だけれど、部下思いの良い人らしいわ」


「悪人に良いのもあるのか分かりませんが……この方も無能力者なのですね?」


「章仁から沖田まで、今のところは無能力者だな。彼らの実力は未知数だが、少なくとも我らに後れを取るような輩ではないな」


「章仁と最初に出会ったのが、この沖田って人らしいわ。剣の腕前はもちろん、天才の章仁と組織の運営について語り合うような人ね」


「こいつも頭がいいのだろう。天才の会話というのは、自分で納得して己のスピードで進むものだから話が合わないことが多いのだが、どうやらこの沖田という男は章仁との会話を十二分に理解する事が出来るそうだな」


「章仁曰く、この沖田がいたから組織をまとめる事が出来たって言ってますね。自分は人をまとめるのが苦手だから、そういう事は全て沖田さんに丸投げしていた、とのことです」



資料を読んだティアはぼそりと呟いた。『なんだかアヴェンジャーズが悪の組織に見えない………』と。



「えーと、次ね。次は~お菊よ」


「アヴェンジャーズの中で唯一の女性幹部。暇さえあれば組長の元で将棋をしているような、幹部一の暇人。最近の趣味は本を読みながら一人将棋にはまっており、新しい戦法を生み出すと、すぐ組長に試しに行くって書いてあるな」


「暇人組織ですね。このお菊という人ですが、昔は芸能界で女優として活躍していた記録もありますね」


「ほう?」


「今は名前も変えて別人しか見えませんが、そういう過去もあるそうです」


「なんだか色々あるのね~、この組織。そしてお菊って魔術師なんでしょ?」


「ええ、適正値Aランクの上級魔術師ですね。パートナーはまだ判明していないので、何とも言えませんが」


「アヴェンジャーズって無能力者の集まりじゃなかったのか?」



ニルは資料を読みながらそんなことを呟く。確かにリーダーも無能力者だし、全員無能力者だと思うのが当たり前だ。



「そういう事でもないらしいわよ?下っ端にも結構な魔術師がいるみたいだし、どうなっているのかしらね」


「無能力者がどうやって有能力者と戦うか、そのためにちょこちょこ魔術師も入っているみたいです。アヴェンジャーズの対魔術師アンチエーテル弾が強力な理由はここにあるのでしょう」


「一応説明しておこう。対魔術師アンチエーテル弾というものは、つまり自分の中にある微弱なエーテルでも、何倍にも膨れ上がらせて相手の魔術障壁を破ることを目的として作られた弾丸だ」



モニターにはアヴェンジャーズが扱う、対魔術師アンチエーテル弾専用のハンドガン。S&AEとほのかに緑のオーラを放つ弾丸がテーブルに置かれている。



「だから、浅見パークランドで朱音もセレナも障壁を使わなかった。その理由はこの弾丸の貫通性を恐れたからなのよ」


「舞香ならば、この弾丸の貫通を上回る魔術障壁を展開することも出来るが、並みの魔術師なら、この弾丸に対抗できる策はない」


「アンチエーテル弾は魔物にも有効です。貫通性能だけでなく、通常の弾丸より遥かに攻撃力が高いのです。しかし、エーテルを持っていく弾丸なので、ご利用は計画的にです」


「ちなみにこれを開発できる者は、アヴェンジャーズしかいない。いま日本の開発部も利用できないか、ということで開発をしているが、今の所実現には至っていない」


「つまり、この開発をしている研究者は相当な天才だということになりますね」


「あのプログラムもそうだ。アイリも『面白い』って言っていたしな。アイリならば弾丸を複製することが出来るだろう。しかしまぁ、今はワイバーンで遊ぶことに忙しいだろうな」


「では、そういうことで次は江ノ島という男ですね」



モニターに江ノ島の立ち姿が映る。



「名刀鬼切を持つ男ね。趣味は散歩と釣り。なんだかじじ臭い男ね~」


「年齢も40近いな。アヴェンジャーズ最強の男という位置付けだ」


「刀を扱うことに関しては天才的な能力を持っているそうで、この後紹介する英雄を持つ葉隠ですら敵わないようです」


「強い男なのは確かだな。しかし、この男、家から破門をくらっているようだ」


「家宝の鬼切を盗んだせいよ。江ノ島は三男なのだけれど、実力もない長男に鬼切が引き継がれると分かった時に、鬼切を盗んで家を出たとあるわ」


「深い過去があるみたいですね。それで章仁に誘われてアヴェンジャーズに入ったと」


「沖田が誘ったみたいだ。この二人は元から飲み友達だったらしくてな、それで腕を見てうちに来ないかって」


「なんだかんだで、みんな繋がりがあるのね。驚いたわ」


「次はどうだろうな~」



ニルはふんぞり返りながら、次の人物を紹介した。

モニターの画面には葉隠の立ち姿が映し出された。



「葉隠。章仁と同い年の男だ。こいつは自らアヴェンジャーズに入った経歴がある」


「自分から入ったのですか。英雄種をパートナーとする者が何故……」


「パートナーは英雄ディルムッド。魔術を全て打ち消す赤い槍、ゲイ・ジャルグ。傷を付けられたら決してその傷は癒えることがない黄の槍、ゲイ・ボウ。仲が悪いということも聞いたことがある。その関係のせいか、ディルムッドは葉隠に呼び出されるのを酷く嫌うらしい」


「発音がゲイボルグと似ているわよね。あの地域内なら少し似ていても同じかしらね」


「ゲイ・ボウとゲイボルグは効果も似ているな。しかし、どちらが強力かと言えば、明らかにゲイボルグだろう」


「ゲイ・ボウは自分で扱って傷を付けますが、ゲイボルグは一度発動してしまえば、必ず当たりますからね」


「そして心臓に必ず当たる。こいつを防ぐためには幸運とこいつの貫通性能を上回る障壁が必要になる。まぁゲイボルグのことはさておき、葉隠の家は忍者だ」


「癒理の家と被っているわね……槍の英雄といい忍者といい…」



ヴリトラはテーブルに置かれた麦茶のポッドを自分のコップに注ぐ。そしてニルは追加されたアイスを食べている。この中で唯一真面目なのはティアだけだろうか。



「忍者としては葉隠が一枚上手だ。だが、英雄で言えば癒理の方が強いだろう」


「槍2本操るって凄いと思わないかしら?」


「そうですね。あの長い槍を身体の一部のように扱うことが出来るのは、生前の英雄たちの技量があってこそなのでしょう。槍の継承とは凄いものです」


「それと渡り合えるオレのマスターを評価して欲しいものだ。癒理の師匠面を出来るのは相当凄いことだぞ」


「それなら私もですよ。あの子のグガランナを相手している時点で骨がバッキバキですが」


「あぁ、それは次の機会よ!このまま話を続けていたら選手の方まで行くじゃない。今回はここまでだそうよ」


「むむ。もうこんな時間か」


「あっという間でしたね。次は誰をゲストに呼ぶのですか?」


「誰を呼ぶのか、それはまだ決まっていないな。オレが決めることはではない」


「そうですか……また呼んでくださいね。次は紅哉とか呼んじゃったり……」


「………お前、急にデレたり大変な奴だな」



『紅哉』と行った辺りからモジモジし始めたティアにニルが半眼で睨む。



「んじゃ、最後は決めるわよ!ニルと!」


「ヴリトラと!」


「ゲストのティアによる!」


『ショートコーナーでしたー!』



そうして第3回目も無事幕を閉じた。




ここはある飲み屋。ここには暇を持て余した人が流れ着く不思議な場所である。



「焼き鳥………」


「あいよ!」



親父の元気な声が店に響く。

ここにいたのは翡翠の制服を着た白髪の少女、舞香だった。



「ねぇ………最近出番が少ないと思うのは気のせい……?」


「いや、俺に聞かれてもな……」



舞香の視線を受けてどうすればいいのか戸惑っているのは、その兄の紅哉だった。



「もう!おかしいと思わない!?お兄ちゃん!私妹だよ!?もっと出番くれてもいいと思わない!?ねぇ!?ねぇ!!!」


「怖いから!そしてお前なんで感情戻っているんだよ!!」


「妹という座は私だけよ!だから出番を寄越しなさい!じゃないと……冥界に送るよ…?」


「お前は誰に言っているんだ………なァ…その冥界送りには俺も含まれているのか…?」


「まっさかー!お兄ちゃんだよ?お兄ちゃんは私だけの物だからどこにも行かせないよ?瑠璃にもあげないし、豊姫にもあげない。お兄ちゃんは私から逃げることも出来ないし、逃がしてあげない。お兄ちゃんは一生かごの鳥なの」


「怖いからな!?そんなヤンデレみたいな設定いらないから!お兄ちゃん寒気してきたよ!」



目がわりとマジな舞香に紅哉は本能が言っている『逃げろ』と。だが、何故だろうか、足が一歩も動かないのだ。



「な、なんでお前感情が戻っているんだ」


「え?それ聞いちゃうの?聞いたら………もう戻れないよ…?」


「何が戻れなくなるのか分からないが、聞かない方が身のためだと思った!」


「ねぇお兄ちゃん。私って寡黙というか、無口というか、感情のないキャラで通っているじゃない?」


「まぁそうだな。本編に全く関係がないこの場所で言っても、全然問題がないな」



目がすうっといつもの舞香の目に戻ると、寒気が収まったような気がした。



「それでさ~、私いつも思っていることがあるのだけれど。言っていいかな?」


「なんだ?」


「お兄ちゃんってさ、女に囲まれ過ぎじゃない?」


「否定はしない……」


「これどういう事かな。お兄ちゃんはあれかな?感情のない私に対するあてつけかな?女の子いっぱいはべらせてハーレムでも作る気?」


「作らないからな!?ただ勝手に集まって来るだけだからな!?」


「まぁこの際女の子がいっぱいいる事は余り突っ込まないであげる。でも、ちょっとそろそろお兄ちゃんに対する嫉妬が凄い事になりそうでね。お兄ちゃんこのあと空いてるよね?」


「…………じゃあ、俺はこれで!」


「うふふふふふ………あはははは!お兄ちゃんは私から逃げられると思っているの?ねぇ覚えているかな?小さい頃鬼ごっこしたときはよく私が鬼でお兄ちゃんが逃げていたよね?ねぇ、待ってよ!」



代金を置いて逃げようとした紅哉の足に白い鎖が巻きつく。

足を取られた紅哉は逃げることが出来ず、這ってでもこの場所から逃げようとする。だが、舞香は許さない。



「ひ、ひぃ!ま、舞香落ち着け!」


「私は……いつでも冷静だよ…?」


「うわ、感情がない舞香がいつしなく怖いぞ」


「お兄ちゃん、私と良い事しましょう」


「待て待て!!い、いやああああ!引っ張らないでええええ!」


「ご馳走様でした。お金はここに置いて行くね」


「ありっしたー!またのご来店をお待ちしておりやす!!」



舞香は満面の笑顔で紅哉を引きずって店を出て行く。



「お兄ちゃん、私は逃がさないよ?まさに有言実行だね」


「ちょ、マジでどこに連れて行く気だよ!!人の視線が痛い!!」


「お兄ちゃん、あの建物で休憩しましょう」


「嫌だああああ!なにあのピンク色の建物!?おい!待て待て待て!!」


「うふふふふ」


「助けてくれ!瑠璃いいいい!!豊姫えええええええ!!」



紅哉がどうなったか知る者はいない。


今回は盛りだくさんな感じのショートコーナーでした。

こういうおまけストーリー的なの入れてみても面白いですね。この舞香は感情が豊かな舞香です。紅哉がどうなったか、これはご想像にお任せします。

こんな話をちょくちょく入れていこうかな~と思っております。キャラが増えてきたことですし、いろいろな組み合わせができるかと思います。

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