表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
81/162

第2回戦 白銀城塞学園AチームVS翡翠魔術育成学校Bチーム

『師弟タッグペアレースも本日で最後となりました!1回戦も無事全てが終わり、これから2回戦に移ります!』


『ここから優勝候補のチームがぶつかり合うわけですね。楽しみです』



紅哉たちは既に控室にいた。

選手たちの表情は固く、これから白銀、ケセラルト、エリナール、北栄の4校とぶつかる時が来ると思うと、身体が少し緊張するのは仕方のないことなのだろう。

2回戦に進んだのは、1回戦で1位を取ったチームのみ。

つまり、このレースに参加するのは紅哉と癒理、そして俊介と凪咲だけだ。


惜しくも2位という結果になった豊姫は今回の試合は舞香と瑠璃と応援というわけだ。



「俊介くんは、初戦からティアさんと当たるんだね…」


「うん………俊介がどこまで粘れるか……」


「ちょっと厳しいと思うな~。ティアちゃんの攻撃が1発でも当たったら、俊介くんリタイヤだと思う」



瑠璃が舞香の言葉に厳しいと言った。俊介は炎が無ければCランク魔術師なのだ。

Sランクを相手するには炎がないと絶望的だ。



「炎があってもサタンは厳しい………」


「サタンはニルちゃんより強いからね~」



サタンは魔王だ。悪魔を統べる王であることも意味する。ニルも龍の中では突出した力を持っているが、それでも悪魔の王にはあと一歩届かない。


攻撃、耐久はニルに軍配が上がるが、エーテルと敏捷と幸運は完全に負けている。

そして隠しパラメーターとして対魔術耐性というものがある。これもニルは負けているのだ。

俊介が勝つのは絶望的だろう。



『さて、1試合目から沖縄Aチームと東京Bチームが出場しますが、どういった勝負になるでしょうか?』


『エースのティア選手と奈々選手ですね。それに対するのは大番狂わせな俊介選手と魔神イフリートの凪咲選手。両者とも実力には申し分がありませんから、見どころのある試合になりそうです』


『魔王と魔神の対決ですね。楽しくなってきました!』



スタート地点には準備運動をする俊介とただ腕を組んで試合開始の合図を待つティアの姿があった。

他の生徒はティアの存在に恐れをなしているが、俊介はいつも通りの力を出すだけだ。



「俊介、あなた。私が怖くないのですか?」


「怖いってなんだよ?俺はいつも通りのことをするだけだ。1位はもちろん狙っているが、なんだかお前には勝てそうにないからな~。だからと言ってそう簡単にやられてやるつもりはないぜ」


「はぁ………あなた、よく単純って言わせませんか?」


「舞香さんと遊佐さんから単純馬鹿って言われた事はあるぜ」


「馬鹿でしたか……」



準備運動を終えた俊介の靴に火が灯る。

まだ火は小さいが、これから火を受けてどんどん大きくなることだろう。



「やっと凪咲が先輩に宣戦布告した愚か者を叩きのめす日が来ましたね~」


『出来るのか?お前に』


「出来ないも何も、やるのですよ~」


『魔王は手強いぞ。我の力も持ってしてでも厳しい戦いになるだろう』


「珍しいですね~。イフリートが弱腰になるんて~」


『弱腰ではない。ただ実力を語っただけだ………だが、この隣の小娘……』


「ん?何か言いましたか~?まぁ、とりあえず~熱血先輩がサタンの初撃をどう対処するかで凪咲の命運が決まるんですよね~」


『ふむ。我の劫火が届く前に、まずサタンは俊介を狙うだろう。それをどう対処するか、か』


「命運というか、勝率の問題なんですけどね~。凪咲だってあのサタンと正面からやり合って勝てるとは思いませんよ~。だから、熱血先輩の手を借りないと1位取れないんですよね~」



凪咲は遠くにいる自分の師匠が気になる。もし、立場が逆だったらまだ勝機はあったが、サタンの隣は想像以上に厳しい位置だ。



『それでは!よーい!ドン!!』



まず、1回戦と同じく炎の結界を作りだし、レース場を火の海に染める。その火が俊介の元までたどり着く僅かな時間が勝敗を決めると言っても過言ではない。

凪咲は自分の師匠がサタンの攻撃を避ける事を祈りつつ魔獣の姿で駆けだした。



「ま、待ってください!」



奈々は1回戦同様幻術で足止めをするつもりだが、瑠璃の幻術を浴びて抵抗が付いた凪咲はこれくらいじゃ怯みもしない。



「凪咲に幻術は効かないですよ~。瑠璃先輩辺りの特化した幻術でなければ翡翠のメンバーに幻術はだ~れも効きませんよ~」


「そ、そんなぁ!」



奈々はスピードでは確実に凪咲に劣るので、凪咲は足止めとして魔獣の拳を地面に叩きつける。

すると、コース横一列に激しい劫火の火柱が立ち上り、奈々たちを足止めすることに成功する。





『それでは!よーい!ドン!!』


「俊介!ここで死んでくださいな!」


「そう来ると思ったよ!!!」



俊介は挙動なしに飛んでくる悪魔の爪を全力で避けるべく、コース外の林へ飛び込んだ。



「がッ!?くそッ!」



完全に避けきれなかったせいで、背中を切りつけられた。

僅かに当たっただけなのに、俊介の身体は衝撃波で自ら飛び込んだ林に勢いよく地面にこすり付けられる。



「避けましたか。流石、紅哉と一緒にいるだけありますね」



ティアはユニゾンしていた。

黒いコウモリのような巨大な翼に悪魔を象徴する捻じれた羊のような角。そして血のように濃く赤い服に黒いミニスカート。王だけが身に着けることができる悪魔の紋様が入ったマントは火の海になった林を歩いてくるティアに絶対的王者の威厳を持たせる。

そして何より目立つのが黒く光る巨大な金属アームである。

両腕の関節から装着されている龍のような巨大なアームの右の手甲には赤い宝石、左には青い宝石が詰められている。

大人の顔などすっぽり収まってしまいそうなアームをぶら下げてティアは俊介に近寄る。


俊介はこの時既にボルテージが上がって来て、十分戦える状態だ。しかし、先ほどから身体が動かないのだ。



「くッ!なんで身体が…!」


「それは私の邪眼のせいですよ。魔術耐性のないものなら拘束することができるものです」



俊介は先ほどから他の生徒の魔術を感知しないと思ったら、既にティアの手によってリタイヤさせられていたことに気付いた。



「おいおい。俺を吹き飛ばした後すぐに他の生徒を潰したのか」


「ええ、邪魔だったので。残るのはあなただけですよ」


「こりゃ怖いね。よく紅哉はお前と渡り合えたもんだ」


「紅哉にはいつも驚かせられます。あの人は私の予想を超えて行く。去年は何とか勝ちましたが、今年はどうでしょうかね」


『もう少しだ…!もう少しで俺のボルテージがMAXになる!そうすればこの拘束も自力で何とか出来るはず!』



俊介は徐々に拘束を解き始めていた。こうやって俊介がティアに話を持ちかけているのも時間稼ぎであり、ティアはまだその事に気付いていない。



『王者故に慢心ってか?』


「俊介、あなたの能力は1回戦でよく知りました。このまま話を続けても私が不利になるだけ………そろそろリタイヤさせてあげます」


「へへっ……お見通しだったというわけか」


「そうですね。あなたは私の目から見ても恐ろしい人だ。Cランクと侮っていたらこちらが足元をすくわれる。私の障害になる者は残らず滅却します」


「う…!ぐッ!あぁあああ!」


「まさか!?私の拘束が!?」



ティアは腕を振るったが、俊介は何とか地面を転がって避ける。その瞬間にまた衝撃波が襲い掛かり、血が溢れだす背中を強く地面に打って激痛に身をよじる。



「次はありません。もうあなたに容赦などしませんよ」


「まだか!フレナ!まだボルテージが上がらないのか!」


「ふふっ……終わりです!」



自分のパートナー炎のエレメントに向けて叫ぶが、イフリートの劫火を直で受けてないため、まだボルテージが上がり切っていない。

それを見たティアは不敵に笑い、全力の攻撃を放とうとした。



「全く、何をしているんですか~」


「あ、あなたは!?きゃあ!」



凪咲の接近に気付いていなかったティアはイフリートの拳を受けてスタート地点まで吹き飛ばされた。



「な、凪咲か。助かったぜ」


「ほら、さっさと行きますよ~。サタンと戦ってもいい事は一つもありません。ここは勝ち逃げと行きましょうよ~」


「そうだな。よし、行くか!」



イフリートは俊介に劫火を浴びせると、彼は完全に復活した。

俊介はイフリートの肩に乗る。それを見たイフリートは跳躍してコースに戻ると、凄まじい速度でゴールを目指し始めた。



「よく耐えましたね~」


「あと一歩遅かったらリタイヤだったぞ」


「いや~それでも感心しましたよ~。凪咲は初撃耐えればいいかな~程度にしか思ってなかったので、まさかここまで熱血先輩がしぶとい男だと思いませんでした~」


『よくぞ耐えた俊介。サタンが油断していたというのもあるが、我も貴様の評価を改めねばなるまい』


「いやいや、俺はそこまでのもんじゃねぇよ。これもただ生き残る事で精一杯だっただけだしな」



その瞬間、凪咲と俊介は死という恐怖をその身で感じた。

二人は同時に背後を見ると、そこは荒れ狂う竜巻で何も見えなかった。



「な、なんだよあれ!?」


「な、凪咲に聞かれても分からないです~!」



凪咲が焦りだした。



『玲奈さん!あれはなんでしょうか!?』


『あれは…………少し待ってください……』



実況席の玲奈は言葉を失っていた。あれはこの世にあってはならないものだ。

パートナーにしては決していけないものなのだ。


ヘッドフォンを外してマイクを切った玲奈は天狐に呼びかける。



『天狐……あれって…星座のあれ…?』


『そうじゃ。あれは天の牡牛グガランナ。人が決して手懐けていいものではない』


『でも……ある程度抑えられているようだね…』


『この世に来た時に力が抑えられたのじゃろう』


『そっか……なら、大丈夫かな…?』


『特に問題はあるまい』


「戻りました」



玲奈はすぐにマイクとヘッドフォンを付けて、実況に戻った。



『あれは、天の牡牛グガランナです。牡牛座、というものがありますよね?』


『ありますね。それとどのような関係が?』


『あれは星座そのものです。かつてウルクという国を襲った天災です。天の神アヌがイシュタルの声を聴き、天から地上へ放った牡牛のグガランナ。ウルクの王ギルガメッシュとその友エルキドゥはこれを撃退したのですが、まさか現代に蘇るとは思いませんでした』



解説が続くなか、舞香はこれを静かに見ていた。



「あの子……余りあれを多用すると政府に目を付けられる……」


「舞香ちゃんどういうこと?」


「あれは封印指定もののパートナー……伝承によれば雲を突き抜けても頭角は見えないってはあると言われている牡牛だけど……ちっちゃいね…」


「リアも小さいでしょ?でも、十分大きいような……」


「そうだった……」





「奈々!このままチャリオットを操作して俊介たちを蹂躙しなさい!」


「は、はいいい!ランナ!」


『モオオオオオオオオオオオ――――――――!!!!!!!』



奈々の操作するチャリオットとは、古代の戦車だ。

超弩級戦車は2輪だ。白銀の車輪には左右からの攻撃を許さぬ槍が搭載されており、奈々の座る椅子のすぐ隣に大砲が備わっていた。

そして奈々が握る光の手綱の先には体長6m程度の天牛がいた。

しかし、その身体は透き通って見える。何故なら身体は風で出来ているだからだ。

青と黄金で彩られた鎧を身に纏い、嵐を巻き起こしながらイフリートに迫る牡牛に意思などない。

ただ彼は破壊の限りを尽くすのみで、手綱が無ければきっと己の主の言葉に従わないだろう。



「熱血師匠。凪咲の結界が解除されちゃいました~」


「なにいい!?」


「俊介!追い詰めましたよ!早くこの牡牛に蹂躙されなさい!」


「やばいぞ!あれは流石に無理だ!!」


「な、凪咲もこれはちょっときついです~!」


「ランナ!天の狂風!!」


『モオオオオオオオオオオ――――!!!』



牡牛は青く美しい角を突きだすと、そこへプラズマを帯びた風が集まりだす。



「行って!ランナ!」



グガランナは超加速した。

流星の如く走りだすグガランナの後には吹き荒れる風と稲妻が残されて行く。

チャリオットがガリガリと地面を削りながら突き進む。

そしてイフリートに追いついたグガランナは角でイフリートごと突きあげた。



「うおおおおおああ!?」


「あわわわわ!?」



荒れ狂う竜巻の角はイフリートを空高く突き上げ、チャリオットに搭載された大砲が上を向く。



「ランナ!ドリフト!」



グガランナはチャリオットを振り回すかのように後ろを向きながら地面を滑る。

牡牛に接続されているチャリオットは車輪が横滑りになりながら奈々は、荒々しくチャリオットを操作しながら大砲が天高く舞い上げられたイフリートを捉える。



「天の咆哮!!」



バァァアアアン――――!!!


とてつもない風の砲弾が大砲から飛び出した。

それは乱気流そのもので、VR空間に疑似的に流れる風全てを巻き込んでいく。



「な、凪咲あああああ!」


「わ!?な、凪咲に抱きつかないでくださいよ!!」



魔獣モードが解除された凪咲は俊介に抱きつかれて、顔を手で押し返す。

しかし、そんな争いのところへ砲弾が飛んできた。



「え?なにあれ」


「な、凪咲は分からないですね~」



二人は一瞬でリタイヤした。


ティアと奈々はチャリオットに乗って堂々の1位を飾る。

天の牡牛を出した奈々は相当疲れており、レースが終わりと荒い息を吐く。



「無理をさせましたね。次の試合まで余り時間はありませんが、少し休んでいなさい」


「は、はい。失礼しますね」



久しぶりに優しい言葉をかけて貰った奈々は一瞬だけきょとんとすると、すぐ作り笑いを浮かべて控室に帰って行った。


ティアは正直言うとこの試合で奈々の牡牛を使わせるつもりはなかった。

あれは神が扱う禁忌のものであり、人間が召喚するには過ぎたものなのだ。それを召喚したいといった奈々の言葉に頷いたティアだったが、使うまでもなかった。というのが本音。



「紅哉との試合があるのに、ここで使うとは………なんて愚かな子………まぁ、それを承認した私もどうかと思いますが………全く、これじゃ私も馬鹿みたいですね。俊介の熱気に当てられたのでしょうか。まあ、あの子が倒れたとしても私の知ったことではありませんが」



ティアはそう吐き捨てて、一度も帰った事がない控室に寄らず休憩所へ歩いて行った。


チャリオット……いいですねェ………ということで81部でしたっけ?無事終了ですね。

ティアがなぜ奈々に冷たいのか、それは後々語るとして新しい魔物。というか神獣ですが、天の牡牛グガランナ。牛だけで登場させてしまうと、マスターが霞んでしまうので、どうしようかと考えた結果。私の好きなアニメのあの征服王を思いつきました。

グガランナの大きさはとても語れるようなものではないので、リヴァイアサン同様小さくさせてもらいました。チャリオットを操って戦場を駆け回るような感じにしました。要塞崩しということで、結構あっているのではないかと思います。

あと、サタンとか新しく登場したパートナーはニルとヴリトラのショートコーナーで紹介していきたいと思うので、少々お待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ