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龍の血を引く者  作者: また太び
2章 師弟制度
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魔物の様子がおかしい

「凄い量だね……」


机に重く分厚いファイルをドサッ!と置くと隣の席で豊姫も紅哉と似たようなファイルの数でそんな事を言う。

学年2位の豊姫だから当たり前だと思う。自分は龍の血を引く者としての肩書があるから人気なだけだろう、と思う。それに紅哉魔術師としての素質はB+程度だ。



「お前も結構な量じゃないか。読むの大変だろ?俺はまぁ既に決まっているからそいつを探すだけなんだよ」



さっそく席に座ってファイルをパラパラとめくり始める。

――――――しばらく教室が静かになり佐鳥の寝息がよくこの教室に響く。



「今年の1年生は俺達より優秀な子が多いな」


「うん。Aランク規定数を全部取って来てる……校長先生頑張ったね」



この静寂の中を喋るのはどうかと思ったが、豊姫も紅哉の言葉に反応してくれた。

規定とは学校同士で力のバランスが崩れる事がないように作られたものだ。AランクとSランクの魔術師が対象で、一つの学年にAランク魔術師は最高で20人、Sランクは5人までとなっている。

Sランクの魔術師となると高校に是非来てほしいと引っ張りだこになるのでほとんど名門以外にSランクの魔術師はいない。

この学校にもSランクは5人いる。まずは舞香、次に3年生にサボり魔と噂の先輩、そして3学年トップの頭脳を誇る先輩、そして戦闘力だけを買われて俺もなにげその一人。

最後は1年生に一人いるようだ。



「俺にも何人か来ているな。凄い優秀な子達ばかりだ」


「私にも来ているね。私より才能ある子達だよ」



ページをめくっているとやっと見つけた。うちの制服に黒く長いマフラーを巻いている少女。長い黒髪をポニーテールにしてくくっている。切れ長の眉に瞳は闇のように黒い。身長もなかなか長身で紅哉とそう変わらない。

自分の弟子を見てこう思うのも失礼だが、写真写りが悪いな、と思ってしまった。



「紅哉くんどうしたの?その子に決めた?」


「こいつが俺の弟子だよ。なんで写真撮影でマフラー外さないんだ…」



このマフラーは元は紅哉が愛用していた物で、何故あげたのか少し忘れてしまっているようだ



「総合評価A+……術式構成以外は高評価なんだね。凄い子かも」


「まぁ俺が術式自体苦手だから癒理にも影響して、この結果なんだよ」



すすっと紙を取り出して鞄からハンコを出す。



「えっと、ここでいいんだな。よいしょっと!」



ハンコを押して紅哉は寝ている佐鳥に持っていく。机をトントンと2回叩くと突っ伏したまま勝手にハンコを押せ、と言わんばかりに教員用のハンコを紅哉の前に持ってくる。

それでいいのかよ、と今更な感じで紅哉は勝手に拝借して教員が押すべき場所へハンコを押し、これで午後から始まる師弟顔合わせの時までには間に合った、というか安心感から安堵の域を吐くが、まだまだ時間は余っている。



「さて、どうしようかな」


「私も早く決めないと」


「焦るなよ。一生の弟子を2日で決める学校もどうかと思うが、まぁまだ時間はあるから、じっくりやれよ」


「うん。でも、ある程度候補は挙がっているから、もうすぐ決まるかな」



それだけ言うと豊姫は真剣な表情でファイルと向き合い始めた。



休み時間になる頃に豊姫は数多くの志願書の中から1枚を選び出し、1日目の師弟顔合わせには間に合うと言って脱力していた。

まだまだ時間はある、と言ったのだが、豊姫は置いて行かれるのを極度に嫌うため紅哉が先に決めてしまったことで焦りを感じつつ選んでいたのだろう。



次の時間、先に決めてしまった人はまだ選んでいる人の邪魔になるという事で佐鳥が食堂でうるさすぎない程度に休んでいろ、と言った。

そこで紅哉と豊姫は食堂の椅子に座ってこれからの事について話していた。

普通はプリント学習とか何か用意すべきだと思うが、佐鳥本人は「プリント用意するのが面倒」というかなり教師としてどうかと思う言葉を口にして、まだ教卓で寝ているのだろう。



「豊姫はどんな子に決めたんだ?」



紅哉は向かいの席でコーヒーを飲んでいる豊姫に尋ねると、豊姫は選んだ子の志願書を見せてくれた。

少し長めの茶髪に元気そうな女の子だ。中学を首席で卒業したという子でオールA評価を貰っている。



「生粋のウィザードタイプっぽいな」


「うん。私もウィザードタイプだから、コンバットタイプの子はちょっと遠慮させてもらったの」



魔術師の戦い方を大きく分けると2つで、まず己の肉体を強化して近接攻撃を仕掛けるコンバットタイプ。離れた距離から持前の魔術を使って敵を制圧するウィザードタイプの2種類がある。

紅哉と癒理はまさに脳筋と言われるコンバットタイプでそもそも肉体強化自体行わない。

癒理は槍の扱いに長けており、パートナーは槍の英雄だ。英雄種の最大の特徴と言えば、何の修練をしたことがない者でもその英雄が剣の達人であれば、剣を手足のように扱うことが出来る継承という能力を得る。

紅哉は龍なので一から鍛錬しなくてはならなかったが、癒理は槍の技術を持ちながらも日々のトレーニングを欠かさすことがなかったいい子だ。

まぁそのせいで女の子のくせに腕力がおかしかったり、腹筋が割れていたりするのだが。



上条美波かみじょう みなみか。どんな子か楽しみだな」


「う、うん。優しい子だといいんだけど…」


「おいおい、師匠が弟子にビビるってなんだよ……人見知りの性格治すんじゃなかったのか?」


「そ、そうだけど……」



口籠る豊姫を見て紅哉は、これはまだまだダメそうだな、と一人心の中で呟く。



『次のニュースです。最近世界各地で魔物が大量に発生している事件で――――』



ふと、食堂にある大型のモニターテレビが目に入り、ニュースに見入った。



『なお、政府はこの大量の魔物発生についてはパワースポットが大きく関係している事を示しており―――』


「どうりで掲示板の魔物討伐依頼が多いわけだ」


「うん。最近急に増えたよね。魔術自衛隊も派遣されているようだけど、余り成果は得られていないみたい」



端末を操作しながら豊姫が答える。次元の壁を越えて人間の住む人間界に来る魔物の大半は住む場所がなくなって腹を空かせた魔物達だ。

魔物の主食はエーテルなのでエーテルを体内で生成できる魔術師を好んで魔物達は食す。

パワースポットには常時無限にエーテルが沸き続けている泉には数えるのもアホらしくなるほどの魔物がいると言われている。



「ある教授は言ったな。パワースポットは無限にエーテルを沸かせてはいないと」


「そうだね。その発言によって一時期騒然としたけど、その教授は何者かに殺されたんだよね」


「あぁ、口封じかな。俺もあの教授の言葉には同意できる。エーテルは無限に沸いてはいない。あれにはいつか終わりが来る。そうなると、そこにいる魔物達はどうなる?ってことだが、その時は魔物と人間の戦争だな」


「余り考えたくない事だね……もしそうなる日が来たら」


「俺達も出ないといけないようになる」


「なんだかラグナロクみたいだね」


「俺達はエインヘリヤルってとこか。神に尽くす気はないけど、自分の身くらいは守らないとな」


「まだそうと決まったわけじゃないけど、心構えくらいはしておかないとね」


「ほとんどの者は目先の事柄から目を背けている。俺と豊姫のように正面から見据えている奴が逆に珍しいんだよ」


「いつまでもつのかな……」


「心配してもしょうがないよ。パワースポットを人間が管理出来れば色々研究して判明したかもしれないけど、今は魔物が多すぎる」


「核兵器でも死なない魔物も確認されているようだよ。多分、長年エーテルを吸い続けて進化してるんじゃないかな」


「核兵器でもか……勝てるのか?そいつに」


「難しい……何百人と死ぬかも」


「本当にエーテルがなくなるなら志願者を集めるのだろうけど、まだエーテルが底を尽きると分かっていないからな。そんな曖昧な事のために何百人も死ねない」


「ん~、それ以前に志願者を集めるのかな?そんな自ら死ににいくような…」


「そうだなァ……自分から死にに行きたいとは思わないよな…」


『新種の魔物が多数発見されています。付近の方はくれぐれも洞窟などの未開拓の地に足を運ばないようにお願いします』



紅哉と豊姫はそう遠くない未来にそんな事が起きぬよう切に願うのであった。


そろそろバトル入れようかな~

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