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龍の血を引く者  作者: また太び
2章 師弟制度
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弟子が出来るようだけど……

ホールに戻ると柱に寄り掛かって麗華さんが待っていた。紅哉と舞香に気付くと笑顔で迎えてくれる。



「麗華さんどうしてここに?直海のとこにいなくていいのですか?」


「はぁ……私は流石に一日中直海の傍にはいないですよ。まぁあなたの言うとおり用事を終わらせたら直海の所へ戻りますけど」



昔のようにプライベートの時は直海と紅哉の事を下の名を親しみを込めて呼んでくれる。

寄りかかっていた柱から離れると麗華さんは紅哉の所へ歩いてきて一つのUSBを渡してきた。



「直海から地図は貰っているでしょうけど、一応USB内にも地図データはあります。それとセレナ」



麗華さんは次に紅哉の後ろにいるセレナに目を向ける。



「今日から再び紅哉と舞香を護衛しなさい。あなたの大人としての知識はきっと紅哉と舞香の役に立つはずです。クロフィードが悲しむでしょうが、そこはお母さんに任せてください」



麗華さんはセレナの言葉を待たずに直海の部屋に行くための階段を昇って行ってしまった。

取り残されたセレナに紅哉と舞香は振り返る。



「え、えっと、これからよろしくお願いしますね」



今の状況に戸惑いつつもセレナは二人に頭を下げた。そして紅哉と舞香もこちらこそ、と言って同じく頭を下げた。





紅哉の家は普通の家に比べれば何倍も大きい。雅文の屋敷ほどではないが、使用人20人ほど雇うくらいの大きさだ。



「ただいま」


「あ、おかえり~紅哉くん」



フレンドリーなメイドさん達が次々と紅哉と舞香に挨拶し、セレナにも誰だろう?という顔をしてからきちんと挨拶をする。



「やっと帰って来たね!紅哉君!」



昔の舞香のように長く美しい赤い髪を揺らして一人のメイドが走って二人を出迎えた。支給されたメイド服を勝手に改造して袖を肩まで切り、長かったスカートは今では物凄く短い



「朱音さん、俺と舞香がパーティーに行っていること知らなかったのか?」



この赤髪の人の名は朱音理沙あかね りさと言ってメイド副長だ。朱音さんは20人いるメイドの中で一番若く、メイド専門学校を卒業してすぐうちに来たメイドさんという事らしい。

簡単に言うと朱音さんは完璧人。何事も最後まで完璧にこなさないといけない人ではなく、何をやらせても常人以上に出来る人だ。

趣味でバンドをやっているようだが、そんな姿一度も見たことがない。



「あ~龍一さんがそんな事言ってたね。あたしいつも忙しいから余り龍一さんの長い話聞かないんだよね」


「龍一さん、呆れてたよ。朱音さんはもう少し人の話をちゃんと聞くべきですってさ」


「あはは……でも、龍一さんの話長いよね?」


『朱音ちゃ~ん!こっち来てくれないかしら~!』


「はーい!んじゃ、紅哉君!また後でね!」



ホールから厨房へ風のように駆けて行った朱音さんを苦笑して見送り、セレナの事は舞香に任せて紅哉は部屋に戻った。



「ふぅ……」



どうも部屋に入ると脱力してしまう。そのままベットに倒れると今日一日の事を思い出す。



「今日は色々な事があったな」



ピピピピピ―――――電話だ。紅哉は机に置いた端末をベットから手を伸ばしてなんとか取る。



「はい、もしもし」


『あ、師匠。夜分遅くすみません』


「ん、なんだ癒理か。どうしたんだ?お前が俺に電話してくるなんて珍しいな」



水のように静かな声でありながら、透き通るような声は中学時代の後輩である、神奈かんな 癒理ゆりだった。中学2年生の頃、苛められていた癒理を助けた紅哉はそれから苛められてもやり返す力を得るために、少し徒手格闘を教えたらいつの間にか紅哉の事を師匠を呼ぶようになっていた。

今ではAランクのパートナーを持ち、それでいて自分と互角の力を持つ癒理に少なからず焦りを感じていたりもする。



『大した用事ではないのですが……あ、あの…私、師匠の学校に入学することが出来ました』


「おお、流石だな。まぁAランクは希少だし、なによりお前の戦闘力は俺が太鼓判を押すほどだしね」


『い、いえ!私なんかまだ師匠の足元にも及びません……』



この子は全く喋らない。だが、紅哉との会話には普通にこうやって答えてくれる。シャイなのか元から寡黙な性格なのかは、紅哉自身も余り喋らないから分からない。



「謙遜するのは時と場合だ。お前は普通に強いよ。もう俺が師匠じゃダメなんじゃないのか?」


『わ、私はまだ師匠は師匠でいいです。で、では!また明日』



ブツ―――――――癒理の方から一方的に電話が切れて紅哉はよく分からないまま端末を机に再び置いた。



「なんだったんだ。あいつ」



紅哉は着替えを持って風呂場に行くのであった。



「あ、紅哉さん」


風呂から上がり、リビングでゆっくりしていると後ろから龍一さんに話しかけられた。

本名は浅野あさの 龍一りゅういち。メガネが似合う知的エリートと言った風のイケメンの龍一さんはメイド達をまとめる長でありながら、この屋敷にいる数少ない男性だ。

学生時代はパートナーの亀型の魔物ギルガメと共に数々の戦いを勝ち抜き、いつの日か呼ばれるようになった名は鉄壁の貴公子。



「どうかした?」


「今日の依頼が1件来てますが」



この人だけは紅哉に敬語を使う。別に呼び捨てで、年下だから敬語を使わなくていい言ったのだが、どうも彼の性分は真面目さんらしく、様がさんに変わっただけだった。



「どんな依頼?」


「舞香さん宛てですね。日本政府直属の研究所から純度の高いエーテル結晶の製作が1個。期限は2ヶ月です」


「純度結晶か。舞香ならすぐかな」



エーテルを作り出すのは簡単だ。出来るだけ雑念を入れずに身体の内にあるエーテルを現実に溢れださせて、それを凝縮すれば出来る。

しかし、先ほど言ったように雑念が入れば結晶の輝きはくすみ、一番悪い結果が真っ黒だ。

だが、舞香ならば感情がないので雑念などとは一切無関係だ。



「報酬額は50万。規定ランクAより高い場合は追加報酬があります」


「うんうん、悪くないな。んじゃ、舞香に製作を頼んでおいてくれ」


「了解しました。では、明日でも頼んでこちらで持って来ますね」


「うん、それでよろしく頼む」



今のは高校生になれば受けれるようになる依頼だ。普通は学校などの掲示板に張り出されているのだが、腕の立つ魔術師には個人依頼としてその家に直接依頼が来るときがある。

魔術師の死因の多くは依頼による事故死だ。自分の力に合わずに目先の依頼報酬の金に目が眩み、それで死んでしまう魔術師が後を絶たない。

学校のうちは依頼を受ける際に一度先生に伺いしてから受けるのだが、社会人となれば話は別なのだ。


紅哉と舞香が通う学校はこの辺で名門と呼ばれる翡翠魔術育成学校と呼ばれる学校だ。

学校のモットーは協調性という団結力を大事にしている学校で、この学校は40人と40人が互いの城を攻撃してその深部にある旗を取るという要塞崩し、と呼ばれるスポーツに力を入れている。

これは世界中で認められている競技であり、個々の強さより集団での強さが目立つ競技として注目が集められている。

今も紅哉が見ているテレビは社会人による要塞崩しだ。どちらも互角と言った所だが、指揮者で差がついている。

そして数分後には赤チームの勝利となって幕を閉じた。



「指揮者ねェ……」



紅哉は2年3組。1年生の頃から同じだったクラスメートがほとんどそのまま持ち上がりのようになり、顔見知りの仲でありながら舞香のクラスには酷い惨敗記録を誇っていて雪辱を晴らしたい気持でまとまっているようなクラスだ。


舞香のクラスは2年2組。基本的にBランクの生徒が多く、バランスの取れたクラス。

これがなかなかに手強い。紅哉達がが手こずっている間にリアによる超遠距離ブレスが飛んできてまもなく撃沈といういつもの流れ。



「指揮者もくそもないな……あれはバランスブレイカーすぎる」



紅哉の独り言に誰も答えるまでもなく、彼はソファから立ち上がりリモコンを操作してテレビの電源をオフにする。



「豊姫にも限界があるからな……俺達が頑張らないと」





「………はぁ…」


「なんだかお疲れのようだね?紅哉くん」



学校で机に突っ伏していると隣の席に座っている三原豊姫みはら とよひめが心配そうに話しかけてきた。

長い黒髪は艶やかで美しく、並みのモデル以上の顔を持っていて腰はくびれがあり同姓ならばきっと自分の魅力のなさに嘆いたことだろう。

彼女は学校でも1位2位を誇るほどの顔立ちに勉学、魔術技術共に学年2位なので人気が高い(ちなみに1位は舞香)が、どこかお嬢様風の雰囲気があるので近寄りがたい存在となっていて友達が少ないのは本人が一番気にしている。

豊姫にとって紅哉は1年生の頃からの付き合いで、男友達第一号なので話しかけやすいのだろう。

このクラスのメンバーも去年と同じメンツが揃っているが、積極的に豊姫と話そうとしている奴はいないのが現状だ。



「まぁ家の事でちょっとな……今日は何かあったか?なんだか皆そわそわしているが」


「紅哉くん忘れたの?今日は1年生から2年生宛てに志願書が来る日だよ?」


「だから授業なくて喜んでいる奴がいるのか…」



そう、高等部に上がると魔術師は遂に犯罪者取り締まりや住民などの頼みごとなどを依頼という形で受けて単位や生計を所得していくのだ。

しかし、中等部の訓練からいきなり高等部での実践は厳しいので一つ上の学年である、2年生を師匠として仕事の手ほどきを受けることになるのだ。

これは高校を卒業してもよっぽどの理由がない限りその人を生涯師匠としなければいけない。

だから、1年生はより優秀な2年生を求めて自己アピール文を師匠になってもらいたい2年生に送る。もし優秀な2年生が師匠になれば頼りに出来るし、色々魔術の技術を教えてもらう事も可能なのだ。ある意味ここで人生の4割程度決まると言っても過言ではないかもしれない。



「豊姫辺りには、かなり来るだろうな。才色兼備とはまさにお前の事だもんな」


「そ、そんなことないよ。紅哉くんの方がよっぽど来ると思うよ?」


「俺はもう中学時代に教えていた奴がいてな、未だにそいつ俺の事師匠師匠言うから俺はもうそいつを選ぶしかないんだよ」


「中学校の頃から教えているなんて凄いね。私なら、なに教えていいのか分からないよ」


「お前だったらその時その時でうまく対応してみせるだろ?お前のそこは俺は買っているつもりだがな。臨機応変っていうのか?」


「そうかなぁ?私、一生懸命すぎてたまに途中の記憶抜けることがあるよ」


「……とにかく今日は師匠選びの日って事でいいんだな?」



自ら話をずらしにかかってしまったので、紅哉は少し強引に話を戻して豊姫に再度確認する。



「うん。多分佐鳥先生が持ってくるんじゃないかな?」



ちなみにこの後輩による師匠選びは去年から導入された新しい制度だ。近年犯罪が増えてきたこともあり、貴重な魔術師の卵を早々に失う訳にはいかない、ということなのだ。

まぁ憧れの名門校に入ってすぐに死んでしまうのは余りにも無念すぎる。


そこで鐘が鳴り二日酔い全開のうちの担任、佐鳥天音さとり あまねが教室に入って来た。美人なのだが、深酒の癖があるため全てが台無しにしている。

それと余談だが、紅哉を含む2年3組は1年3組の頃から担任が佐鳥だったため、ある事件をきっかけに佐鳥の恐怖が身体に染みついて絶対に逆らえないようになっている。



「あ~だりい……んじゃ、出席は豊姫、お前が確認しろ」


最初から委員長に仕事を丸投げして教卓に突っ伏す佐鳥。ここで仕事をしろ、と言ったら間違いなく殺される。

クラス委員長なのにほとんど出番がない豊姫はここぞとばかりに張り切って出席を取っていく。



「うし、終わったな。今日の連絡も読め」



お前の仕事だろ!?と口から出かけてなんとか言葉を飲み込む。

さっき言った通りの事を豊姫がクラス内によく響く声で説明して行く。



「んじゃ、こればっかりはあたしがやらないとダメだな。出席番号順から呼んで行くから、早く来いよ」



ギロリと1番の子が睨めつけられて萎縮する。しかし、そんな暇もなくすぐ呼ばれて脱兎の如く走って佐鳥の元へ行く。

次々に呼ばれていく中で紅哉と豊姫は会話をする。



「お前、委員長として余り役に立ってないよな」


「うん……自覚はしているんだけど、どうも私って目立ちたがり屋でもないし、どちらかと言うと人見知りの方だから、今でもたまにどうして私が委員長になったんだろうって自分に問いかける時があるよ」


『重症だな……』



豊姫の家は一言で言うと超お金持ちだ。

三原財閥と呼ばれる日本を代表する財閥の一つで、豊姫はそこの長女。5つ違いの兄がいるが、兄は今は財閥を継ぐために父のもとで秘書を務めているそうだ。


豊姫は幼い頃から家庭教師を雇っていたため、学生生活は中学3年生の頃からであり、軽いコミュ障を持っているようなもので複数人と話す時はどうも怯えてしまうようだ。実際豊姫が俺以外と積極的に話している姿は見たことがないし、本人も長時間話したことがあるのは紅哉ともう一人の友達である女子だけとのこと。


この委員長になった事も紅哉が進めたもので、もう少し人前で話す事に慣れたらどうだ?と言って推薦した。

進んで委員長という面倒な役所に就きたい奴などいるわけもなく、あっさりと豊姫はクラス委員長になった。まぁ一番の理由は佐鳥に近づきたくないからだろうと紅哉は思っている。


最初の頃は書かれている事すら読めないダメダメっぷりだったが、今では佐鳥が自分の仕事を豊姫に押し付ける癖があるので、よく人前に立って読むことがあり、かなり喋れると思う。



「おらぁ、豊姫~!さっさと来い」


「す、すみません!」



ドスの効いた声で佐鳥に呼ばれてすぐ佐鳥の所へ豊姫は向かった。



「まぁ1年の頃に比べればまだマシか」



紅哉はそれだけ呟いて自分の番まで待つのであった。

なかなか忙しくて投稿できないです><

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