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龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
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彰とオーディンの出会い

オーディンは人の目を引く。

カリスマとかそういうのではなく、ただ単純に人間離れした容姿だからである。

金髪よりも深い黄金の髪は太陽の光を浴びてより一層輝きを増す。

道行く男は振り返り、そして諦める。

その隣にいるのがこれもまたお似合いな美形の男子であるからだ。

二人は楽しそうに街を歩いて行く。パートナーとマスターという関係だが、二人にとってはそんなの些末な事である。愛し合っているというわけではないが、一番心を許せる仲であり、恋愛に一歩届かないような関係だ。



「オーディン、今日はどこに行こうか?最近忙しくてどこにも出かけられなかったから久しぶりだよね」


「ふむ。彰が行きたい所であれば我は構わんぞ。彰が一緒ならば我も楽しい」


「オーディンは相変わらずだなぁ。もっと自己主張あってもいいと思うけど」


「我は余りこの街を知らぬのだ。彰が我を導いてくれ」


「そっか。んじゃ、男子高校生らしく身体を動かそうか」


「何をするのだ?」


「ボーリングさ」


「ほう、あのテレビでやっていたものか。ボールを転がし、ピンを倒すものだろう?」



オーディンは新鮮なのか、テレビでやっていた動作を思い出して手で表して見せた。



「そうそう、それ。見てるぶんにはいまいちかもしれないけど、やってみると凄い楽しいよ」


「なるほど。彰がそう言うのだから楽しいのだろうな。して、その場所とはどこだ?」


「もう少し行った先だよ」



紅哉、ニル、ヴリトラ、俊介は彰とオーディンから少し離れた場所でそのやりとりを聞いていた。



「アイツらボーリングをするのか」


「紅哉、ボーリングってどうやるのかしら?舞香が余り興味ないせいでアタシは分からないわ」


「行ってみればわかるさ。いや~しかし、ボーリングは久しぶりだな」


「俺もだ。部活動の後輩と1回か2回行った程度かな~?」


「ゲームでボーリングが何か知っているが、実際やるのは初めてだな」



紅哉たちも彰たちに続いてボーリング場へ行く事になった。

そしてそしてそれを見ていたティアとネルタは………



「ボーリング……ですか」


「ティアさんやったことがないの?」


「ええ、まぁ……私は物心付いた時から勉強と身体を鍛える事だけでしたから……こういう一般の学生が遊ぶ事には疎いのです」


「あなたの家ってお金持ちなのね……」


「そこそこある程度、ですよ」



謙遜しているが、ティアの服装はかなりお金がかかっていると見える。

確かに三原財閥の長女などに比べればそれは劣るが、少なくとも紅哉の家並みにはあるだろ。



「それで、入りませんか?ここでいつまでも見ていたら見失いますよ?」


「そ、そうね。行きましょう」



電柱から見ているティアとネルタを通行人は怪しむように見て行くが、二人には関係がない。

そして二人は人生で初めてのボーリング場へ入って行ったのであった。



「オーディン、見ててね?こう、投げるんだよ」



彰は基本なんでもできる秀才だ。料理も出来るし、家事も出来るし、勉強もできるし、運動も出来る。

しかし、そんな彼でも昔は何も出来ないような落ちこぼれだった。それを知っているオーディンは今の彼を愛おしく見えるのだ。子を見る親のように、というわけではないが、姉のように見守っているのだ。


パコーン!とボールがピンを倒し見事ストライクを取った彰はオーディンとハイタッチをする。



「見てた?」


「見ていたとも。さて、次は我の番だな」



恐らくボーリング場で最も重いと思われるポンドを涼しい顔で持つオーディンは、彰がやってみせたように綺麗なフォームを描いてボールを指から離す。

安いボーリング場ならば磁器が入っていないボールでろくに曲りもしないが、ここは高級なボーリング場。プロが使うようなボールが当たり前のように置いてあるため、コツさえ知っているものならばカーブを使う事も可能だ。


オーディンのボールは一度右へ外れて行くように見えたが、コース後半でまるでピンにひきつけられるように曲がりだし、先頭のピンと2列目のピンの間に当たり、全てのピンを倒した。



「ふむ、なるほど。これは面白い。ただ投げているだけだが、何故ここまで高揚するものなのか」


「やったねオーディン。見事ストライクだ」


「彰、これは何故こんなにも面白いのだ?人間の考えるものとは何故ここまで面白いのだ?」



口元に手を当てて真面目に考えているオーディンに彰は苦笑いを浮かべる。

これは彼女の悪い癖だ。分からない事が怖い、自分の知らない感情に戸惑っているのだ。


彰とオーディンが出会ったのは孤児院だ。孤児院の理事長が海外の掘り出し物から買って来たというボロボロの青い帽子。それがオーディンハットだったという事は売人も、理事長も、彰も知らなかった。


オーディンの帽子はただの帽子ではない。魔法の糸で出来た丈夫なものであり、それが奇跡的に現代にも残ったのだろう。

その売人はただ綺麗だったから売っていたのだが、魔術師ではないため帽子に込められた強い魔力を感じる事が出来なかった。理事長も無能力者であり、孤児院で唯一Aランクの適性を持つ彰だけがなんとなくだが、その帽子に惹かれて行く。それで彰はこの帽子の持ち主に会いたくなり、それに反応した帽子が触媒となってオーディンを召喚する。

それが彰とオーディンの出会い。


理事長はなくなった帽子の居所を彰に聞いたが、彼は既に触媒として使ってしまったため知らない顔をするしかない。

そして皆がお昼の休憩時間の時に2時間ほどお昼寝の時間があるのだが、その時間はオーディンと過ごしていた。


最初の頃のオーディンは一言も喋る事はなかった。彼女はオオガラス2匹と足元に2匹のオオカミを召喚して平和なこの日本の情勢や、景色を楽しむだけの日々。


だが、彼女の隣にはいつも絵本を持ってきて無言で読み続ける少年がいる。

パートナーはこの世に召喚される時に一般知識として社会の物事や、名前が頭に元から知っていたかのようにインプットされる。

それでこの少年が自分のマスターなのだと知っているのだが、納得がいかない。

彼女は昔北欧の神を統べる主神であり、何故このような下界の人間の命令に従わなくてはならないと思っていた。


それが今ではこうして彼には毎日色々な事を知らされる。



「オーディン、楽しいと思うならそれでいいんだよ。深く考える必要なんてない。これを作った人も楽しかったから作ったんじゃないかな?それがいつの間にか皆に広まって、こうしてスポーツにもなるほど皆で楽しく遊べるものになったんだよ」


「楽しいと思うのならそれでいい……か。確かにそれでいいかもしれないな」


「そういうこと。さて、オーディン。僕とスコアを勝負しようじゃないか」


「いいだろう。勝負事は我の得意分野だ。いくらマスターとはいえ、負けるつもりはないぞ」


「いいね。僕だって負けるつもりはないよ」



彼と彼女のエピソードはまたの機会に語るとしよう。



「あいつら楽しそうだな」


「デート………パートナーとデートか…」


「おいマスター!ストライクだぞ!見ろ!」


「あぁ、分かっている。彰とオーディンはスコアが凄いなァ……」



紅哉、俊介、ニル、ヴリトラは隣のレーンでばれるかばれないかの瀬戸際な状態でボーリングをプレイしていた。

俊介は己のパートナーが一言も喋れないエレメントだと思い出し、少しだけ悲しくなる。

紅哉のパートナーは幼女だ。世間から見れば兄と妹が仲良く散歩しているようにしか見えない。



「お、おかしいわね……ボールがうまいこと曲がらないわ」


「くっくっく。もう何連続ガーターだ?ヴリトラァ?」


「い、言わせておけば!見てなさい!今から逆転して見せるんだから!紅哉!あなたの番もアタシの番よ!」


「はァ!?ちょっと待てよ!それじゃ俺暇になるじゃん!」


「まぁ待てマスターよ。こいつがマスターの番を使ってもオレに勝てないという事を教えてやる」


「だからって俺が待つ理由にならないんだけど!?」



早速ヴリトラが紅哉の番を使ってプレイする。

やはりというか、ガーターとなり紅哉は『俺の輝かしい成績がァ……』と泣き崩れる。

俊介はそのやり取りを見ていて、ふと思った。



「なぁ紅哉。俺、朝から思っていたんだけどよ。このグラマーなお姉さんは誰だよ?」


『あ……』



俊介に説明をしているうちに彰とオーディンがボーリング場から出たことをこの4人は後から知り、後悔する。


少しだけ語らせていただきました。彰と奏の昔は話で全然出していないので、これから少しずつ彰と奏の話を出していきたいと思います。

ちなみに前にも言ったような気もしますが、オーディンが女性なのは私の都合上です。そんなWIKIに載っているような、片目失っているおじいさんが悪いというわけではありませんが、女性の方が皆さんもいいですよね?(笑)

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