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龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
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未来からの伝言

紅哉はホテルの自室にいた。

昨日からここにおり、ニルとヴリトラはアイスと飴を食べている。



「今日は疲れたな」


「そうね、見ているだけで疲れたわ」


「明日もあるんだぞ。お前らがだらけられると能力下がるからしっかりしろ」


「大丈夫だ。この後のバイキングで復活する」


「いいわねぇ……紅哉、世間にアタシの名も発表してくれないかしら」


「ダメだ。面倒事に巻き込まれるのは好きじゃない」


「いつも巻き込まれているくせに何を言っているのか…」



ニルは早くバイキングに行きたくてうずうずしていた事は紅哉もヴリトラも分からない。



朱音は一人夜道を歩いていた。

セレナたちとは既に別れて、いまは少しやるべきことがあるので一人で行動中だ。



「こんばんは、アヴェンジャーズの皆さん」



そこには祭り気分の章仁たちがいた。




悪の組織?アヴェンジャーズの幹部たちは本田組の組長の部屋にいた。



「え?あたしたちも行くの!?」



綺麗な和服に身を包んだ黒髪の女性が組長と将棋をしながら綾香の提案に驚いていた。



「お菊さん!そんなお爺ちゃんと将棋ばっかじゃなくて一緒に遊びましょうよ!」


「ん~綾香ちゃんと遊ぶのもやぶさかじゃないけれど……章仁、アンタは行くの?」


「うん、僕は行くよ。たまには幹部皆で出かけるのもいいかな~って」


「組長にはお世話になっているし、あたしはいいわよ」


「わしもいいぞ。綾香の願いなど久しぶりじゃからのう」



お菊と呼ばれた女性はタン!と将棋の駒を置く。

そして部屋の隅で刀を抱えて座っている巌のような男は綾香が言う前に参加してくれることになった。

この男の名は江ノ島という。



「お、江ノ島さんも行くんですか?なら、俺も行かないとダメだな。綾香ちゃん、俺も参加していいぜ」


「わーい!江ノ島さんも葉隠さんも大丈夫だって!お爺ちゃん!」


「おお、嬉しそうじゃの。よしよし、お爺ちゃんがお小遣いを上げるから待っていなさい」



本田豪三郎は懐から万札を取り出した。



「く、組長!待ってください!綾香ちゃんはまだそんなお年じゃ」


「ふむ……なら、これで我慢してくれ」



5000円札になり、彰たちはほっと息をつく。

みな綾香の事を心配しているのだ。これでも親代わりとして。



「沖田さん、うちの組織は僕たちがいなくても大丈夫そう?」


「あぁ、元から幹部がいなくても運営できる組織だからな」


「よし、出かけるとしようか!組長の護衛は僕たちがするから大丈夫だよ。世間から見れば、僕たちは組長の孫に見えるだろうし」


「そうじゃの。お前さん方に守ってもらうとしよう」



そうして綾香の願いは聞き届けられてアヴェンジャーズ幹部は祭りの東京へ繰り出した。



「うっはー!人がいっぱい!」


「まぁお祭り状態だしね。江ノ島さん、沖田さん。君達の刀は?」


「問題ない。竹刀入れに入れたぞ」


「うん、大丈夫そうだね」


「章仁さ~ん!このチョコバナナおいしいです!」


「早速あの子食べているわね」


「お菊も久しぶりじゃろう?」


「そうねぇ……毎日していると言えば本屋で将棋の極意を学んで組長に挑むくらいだわ」


「うわ、お菊さんが本屋で将棋の本を買っている所を想像したら…」



アヴェンジャーズの中で3番目に若い葉隠はお菊からゲンコツを貰う。



「す、すんません……」


「分かればよろしい」


「沖田ぁ。わしらは何をすればいいのじゃ?」


「組長の護衛。綾香と章仁が迷子にならないように見るくらいだな」


「うむ」


「あんたらホントつまらない男ねぇ……ほら、あの若さを見なさい」



そこには組長が綾香のために金魚すくいに挑戦している所だった。



「組長は綾香を甘やかしておるからのう……」


「孫がいない分余計に可愛がっているのだろうな」


「アンタらもそうなるんじゃないのかしら?」


「わしらがか?うむ………想像できんな」


「そういうお菊はどうなんだ?」


「あたし?う~ん……甘やかしそうね…」


「お菊さん達もまだ若いじゃないですか!」


「あのねぇ……葉隠はまだ20代後半も行ってないじゃない。もう少し世の中を見なさい」


「そういうお菊さんも2―――ぶべ!」


「次言ったらどうなるか、分かるわよね?」


「すみませんでした……」



弁慶の泣き所を思いっきり蹴られた葉隠はその場にうずくまる。

通行人は何事かと見ては過ぎて行く。



「わしらも童心に返ってみるとするかのう」


「いいだろう。私達もあのチョコバナナというものを買ってみるとしよう」


「あなた達が買うとどうも犯罪臭がするわ……」



財布を取り出して列に並ぶ顔に傷がある男二人にお菊は引き気味だった。



章仁たちはたこ焼きなど買って近くの公園にレジャーシートを敷いて全国魔術師運動大会の中継を見ていた。



「お~白熱してますね」


「ははは、そうだね。この中で魔術が使えるのは葉隠とお菊だけだから、まだうまく魔術が使えない綾香ちゃんにとっては新鮮かい?」


「はい!いつかこうなりたいですね」


「綾香はどこの高校に入りたいんじゃ?」



モニターを見ながら本田は隣でたこ焼きを爪楊枝で刺している綾香に聞いてみる。



「近いとこなら翡翠かな~」


「綾香ちゃんは適正ならAだからね。もしかすると入れるかもしれない」


「私はまだパートナーがいませんから…」


「綾香ちゃんにはちゃんとしたものを与えたいからね。触媒が見つかるまでもうちょっと待ってね。いま組長と僕たちで探している」


「ありがとうございます。お爺ちゃん大好き!」


「おおおう………お爺ちゃん綾香のために頑張るからの」



無邪気な笑顔で大好きと言われて本田はハートを射抜かれたようだ。



「ホント章仁は綾香に好かれているわよね」



その光景を見ていたお菊が団子を食べながら呟く。江ノ島はチョコバナナにはまったのか、左手にはチョコバナナがあと4本もある。

沖田は焼きそばを食べており、『うまい…』と心の感想が漏れだしていた。

最後に葉隠は豚玉というお好み焼きに卵が乗ったものをソースとマヨネーズをかけて食べている。



「仁徳というものじゃろう。うむ!はむ!うまい!」


「この焼きそば…Bグルメというのか……葉隠がおすすめしただけあるな」


「いや~この時期には全国のうまいもんが集まりますからね。これを食べ歩いているだけで満足ですよ~」



江ノ島は夢中になってチョコバナナを食べている。大男のがチョコバナナに夢中というのは少々いただけないシュチュエーションである。



「うええええええん!!」


「む?」



江ノ島はチョコバナナを食べる手を止めて周りを見渡した。



「いま、男の子の声がしたわね」


「そうだな。この人盛りでははぐれもするだろう」


「江ノ島さん、あそこですよ。ほらほら、丁度警備員の人が」


「ならいいのだ。一番悪いのは泣いている子供を見て見ぬふりをすることじゃ」


「江ノ島さん男ですね~。俺憧れますわ」


「そういえば江ノ島。今日の釣りはどうだったんだ?」


「今日はまずまずじゃのう。ちょいと山まで行ってみたのじゃが、余り釣れんかった」


「あら、江ノ島にしては珍しいわね?」


「今日行ったところは流れが強い感じでして、大物を狙うつもりだったんですよ」


「途中で熊に出くわしたが、特に問題はなかったぞ」


「熊ってアンタ……」


「お菊、熊は珍しいぞ。もう魔物に食い荒らされて天然記念物になっているのだからな。良い物が見られたじゃないか、江ノ島」


「うむ。可愛かったんじゃぞう?まだ小熊でのう、釣った魚をくれてやったわい」


「嬉しそうに持っていきましたよね。あれ、俺も見てて可愛かったですわ」


「小熊でも十分大きいわよ……」



葉隠はその時撮った写真を見せてくれて、丁度熊が魚をくわえている所だった。



「大きいじゃない…」


「兄弟でもいるのか、その場で食わず持って帰ったようじゃったの」



熊の話しでここまで盛り上がれる大人たちはどこかおかしい。



「お~い!みんな紅哉君が出場するみたいだよ~」



章仁はお菊たちに呼びかけて、みんな一度話を中断してテレビに注目した。



「これがお前さんが言っていた龍人かの」


「ええ、紅哉君は面白い人でね。会うたび僕に新しい発見をくれるんだ」


「何の発見なんだ?」


「この前、僕はアメリカに行ったでしょ?そこでたまたま紅哉君と会ってさ、その時の紅哉君は女装していたね」


「何をしとるんじゃこの赤髪の小僧は……」


「ほええ、新しい道でも見つけたんですかね」



江ノ島は『若いもんが…』と言っており、葉隠はにやにやしているだけだ。


紅哉のレースが始まると、その場の全員の顔が険しくなった。



「画面越しでも龍の威厳が伝わるのね……ブルっと来たわ」


「魔術を使う俺とお菊さんならびりびり来ますね。こりゃ恐ろしい」


「わしでも感じれる」


「うわぁ……私もちょっと怖い感じですね」


「それを近くで聞かされる生徒に同情するよ。僕も浅見ランドパークでファーヴニルの威厳を喰らったけど、少し頭が混乱したよ」



そして言い争いをしている紅哉と理江のカメラが次は癒理の方を捉える。



「あら?この子だけかしら?」


「ん~カメラが紅哉君を映していたから分からなかったね。でも、この子は槍を使うようだ。葉隠と似ているね」


「まぁ俺も槍の英雄だしな~」



そして癒理のゲイボルグが生徒の心臓を貫く。



「ん?こいつクーフーリンだな」


「ほう、葉隠分かるのか?」



自分も買った焼きそばを食べようとした葉隠の手が止まる。

沖田は興味深そうに葉隠に尋ねた。



「ええ、あの槍は危ないでっせ。一撃必殺を得意とするスカアハの死の槍です。投げたら必ず心臓を抉る槍。だから、今の生徒も心臓を確実に狙われましたしね」


「危険な英雄ということでいいんだな」


「そういう事ですね。一番相手に回しちゃいけない英雄ですわ。まぁ、俺なら見切れない事もないんすけど」



葉隠はそう言って焼きそばを食べ始めた。



「紅哉君たちの圧勝だったね」


「この白銀って強いんですか?」


「うん。実況でも言った通り、紅哉君の学校とは因縁の関係でね、相当強い学校だよ」



綾香は興味深そうにテレビを見ていた。

彼女は組織のお金。つまり組長のお金で学校に通っており、今年で中学1年生だ。

そろそろパートナーを与えなくてはならない時期という事で、章仁たち幹部は既に綾香のパートナーを用意しているのだが、綾香の誕生日が近いからその日に渡そうと決めていた。



「お爺ちゃんまったねー!お爺ちゃんと遊べて楽しかった!」


「そうかそうか。わしも綾香と遊べて楽しかったよ」


「では組長。今日はお疲れ様でした」



既に夜という事でここで本田とお別れになった。

黒塗りの車乗って本田を見送ると、章仁たちは夜道を歩いていた。



「こんばんは、アヴェンジャーズの皆さん」


「なんじゃお前さんは……」


「お前、ただ者じゃないな……」



沖田と江ノ島は章仁を庇うように前へ出る。



「君は誰だい?」


「あたしは朱音。紅哉君の家のメイドさん」


「その紅哉君の家のメイドさんが僕に何の用かな?それに幹部は世間には知られていないはずだけれど」


「幻影使いのお菊、格闘家の綾香、チョコバナナ大好き鬼切の江ノ島、章仁の右腕の沖田、英雄ディルムッドのマスター葉隠」



朱音の言葉に章仁を含む幹部全員は警戒の色を高めた。



「おい、俺は過去でも数回しかディルムッドを出したことはないぜ。どうしてそれをあんたが知っている」


「知っているから、としか言えないね」


「答えになってないな」



沖田と江ノ島が刀を抜くと、幹部全員が武器を手に持ち始める。



「あたしは話し合いに来ただけだから、ちょっと黙っててよ」



朱音の声はどこまでも冷えていた。

それを聞いた幹部たちは震えながら膝を地面につけてしまった。



「な、なんだこれは…!?」


「りゅ、龍のオーラ!?だけど、これはけた外れの…!」


「あわわわわ!?あ、あの人怖いです!」


「おいおい、冗談じゃねぇぜ……」


「なんてことじゃ…!わしもまだまだ修行不足という事か…!」



章仁は驚いていた。彼らは章仁が最も力を信頼しており、その仲間が震えて膝をついているのだ。

綾香は気を失いそうになっており、お菊が肩を叩いて意識をとりとめている状態になっていた。



「それで、君は僕たちに何の用かな」


「話を聞いてくれるの?」


「そうだね。どうやら僕たち幹部が全員で君に戦いを申し込んでも負けそうだ」



素直な感想を口にすると、朱音は一つ息を吐いた。

すると、幹部たちの震えも止まり、少しずつ立ち始めた。



「今のはファーヴニル、リヴァイアサン、ヴリトラ、グリンデル、アジダハーカ、神龍のオーラを君達に少しだけぶつけたの。よく意識保っていられたね」



朱音は何度か咳をする。



「単刀直入に言うよ。章仁、あなた達は火神崎家と炎道家に協力して」


「どういう事かな?僕たちアヴェンジャーズは形として紅哉君と敵対関係にあるわけだけど」


「今じゃなくていい。そう遠くない未来、世界は滅亡する」


「なんでそんな事言えるんですか!」


「そうよ。そんな事言われても実感がわかないわ」



朱音の言葉に綾香とお菊が食らいつく。さっきの龍の威厳が効いているのか、足元は少しだけ震えている。



「まぁ待って。もう少し彼女の話を聞こうじゃないか。話を聞くだけなら無料だ」



章仁は赤いサングラスをかけ直して朱音を見た。



「信じないか信じるかは自由だけど、あたしは未来から来た」


「その証拠は?僕には信じる判断材料がない」


「そうだね。あたしの手を見て貰えばいいかな?」



朱音は右腕にまかれた包帯を解く。

すると、ごく僅かだが、朱音の手から銀色の光が砂のように零れていた。



「最近はこんなことなかったんだけど、どうやら未来の運命が決まって来ていて、あたしの存在が上書きされていっているみたい」


「それはもう止まらないのかい?」


「うん。新しい命には負けるみたい。まだこの世には生まれてはいないんだけど、近い未来あたしは生まれる。その時にはもう世界はどうしようもなくて、火神崎家と炎道家だけじゃ抗えないの」


「そこで僕たちに協力を求めてきたわけか」


「紅哉君には心配かけたくないからさ、こうやってあたしが動くしかない」


「どうして君はそこまでして紅哉君を助けたいのかい?」



章仁の言葉に朱音は押し黙る。しばらくの沈黙が流れ、朱音の瞳が潤んだ。



「おいおい……お前さんが泣く事なのかのう?」


「ううん、何でもない。私のお父さん、火神崎紅哉は未来では生きていないの。ある魔物と戦ったからね…」


「紅哉君が君のお父さん……?紅哉君がやられる程の魔物って……僕たちでも敵うかどうかだよ?」


「1体の魔物にやられたんじゃない。何千万という魔物と戦って死んだの」


「な、何千万!?おいおい、冗談じゃないぜ」



葉隠はそれを聞いて腰が抜けそうだった。

葉隠の他にも幹部全員が驚きを隠せなかった。



「君達があたしを未来人だと信じてくれると判断して話すよ。あと4年すると、世界のパワースポットのエーテルが全てなくなる」


「分かった。人類と魔物の大戦争ってわけね」


「うん。お父さんは東京を守る総帥で街に魔物が侵入しないように炎道家、火神崎家、四条家、三原家が協力して街の護衛にあたっていた。でも、ある日いつもは数体くらいしか来ない魔物がその日に限っては大地を埋め尽くすような数だったの。それでお父さんとあたしのお母さん、須野原瑠璃は街の人々を逃がすために自分を犠牲にして戦った」


「嘘を言っているようには思えないわね……実際本田組の組長もパワースポットの事を気にかけていたわ」


「あ、あの私達アヴェンジャーズは生きているのですか?」


「聞いてどうするの?辛い現実になるよ?」



綾香の言葉に朱音は冷たく突き放す。

沖田は綾香の頭をポンポンと叩いて彼女の代わりに問う。



「綾香以外はみんな死んでいるよ。これ、未来のあなたからの手紙だよ」



朱音はメイド服のポケットからしわくちゃの手紙を取り出した。

そしてそれを沖田へ渡す。



「なんて書いておるのんじゃ?」


「これは……私の字だ………読むぞ」



過去の私へ。これを読むという事は火神崎朱音が過去の私と接触に成功したという事だろう。彼女の言っている事は本当だ。我らアヴェンジャーズは火神崎紅哉と共に戦うべきと未来の私は判断する。信じられない事だろうが、これは事実なのだ。

いまこの手紙を書いている私も綾香を除く最後の幹部となってしまった。まさか魔物がここまで猛威を振るうとは思わなかったのだ。

もっと早く火神崎紅哉と協力していれば、章仁も江ノ島もお菊も葉隠も失わなかっただろう。今の私は後悔の念でいっぱいだ。

綾香は火神崎豊姫の元で暮らしている。安全な地に逃げたようで私も一安心だ。

彼女の師匠は栞奈癒理に任せたのだが、彼女は立派に綾香を育ててくれるだろうか。

しかし、私は手紙を書いたことがなく、まさか人生初の相手が過去の自分だと思わなかった。過去の私も初めて貰った手紙が未来の自分というのはさぞや滑稽なことだろう。

最後になったが、この手紙を火神崎朱音に託す。彼女は四条アイリが発明したタイムマシンで過去へ行くそうだ。この腐れ切った未来を変えてくれることを私は切に望む。

もし、こんな未来が来ないのであれば、お酒も飲めるようになった綾香を連れてどこか飲みにでも行きたいものだ。

では、私もこれから住民を逃がすために魔物と戦って来よう。さらばだ、過去の自分よ。



「と、こんな感じだ。変な気分だな。書いた覚えはないのだが、書いたようなそんな錯覚にとらわれる」



読み終えた沖田は静かに手紙を懐へしまった。

それを聞いた幹部たちは未来の事を想像して何も言えなくなってしまった。



「もう、あたしにも時間はないんだ」


「どうやら本当のようだね。分かった、僕たちは火神崎紅哉に協力しよう。でも、直接協力する気はないよ」


「それでいい。変に思われてもあれだし、さりげなくでいいよ」


「僕はアヴェンジャーズのリーダーとして部下を生き残らせるために協力するんだ」


「分かった。あたしは最後までお父さんとお母さんを守るから。それでなんだけど、お父さんが一夫多妻な事は秘密ね?」



朱音は可愛らしく口元に人差し指を立てた。

章仁は少しだけ笑って「了解」と答える。朱音は天使のように笑ってから、右腕に包帯を巻き直し、来た道を帰って行った。



「紅哉君も随分と恵まれているようだね」


「二人の奥さんってやるじゃない。あの坊や」


「綺麗な娘が生まれて幸せそうじゃのう。じゃからこそ、悲しみを生む未来をわしらが潰すしかあるまい」


「あ~結局俺達って綾香ちゃんを守って死ぬパターンなんですね。まぁ俺にとっても妹みたいなもんだし、何も思わなかったんだろうなぁ……未来の俺は」



章仁は幹部の方へ振り返った。



「もう僕たちは暇なアヴェンジャーズではなくなったようだ。これからはパワースポットを重点的に調べよう。それと綾香ちゃん」


「は、はい!」


「君はもっと強くならないといけない。きっと綾香は未来で必要な存在だ。だから僕たちは命を捨ててでも守ったんじゃないかな。紅哉君の弟子さんの癒理さんが君を鍛えようとしたのもきっと意味がある。だから、強くなるんだ」


「はい!!」


「紅哉君が結婚して子供が出来たというから……恐らく5年か6年後それか少し先の話しだと思う。それまで休む暇はないよ!」


『了解!』



アヴェンジャーズは気たるべき未来へ準備を進めるのであった。

だが、今だけは―――――



「その前に今日だけはいっぱい楽しもう。さ!そろそろ花火の時間だよ!」


「章仁さん!私ネットで調べた絶好のポイントがあるんです!」


「お!いいねいいね、んじゃそこに行こう」


「綾香!わしが肩車してやろう」


「え?いいよいいよ。私もうそんな歳じゃないですし」


「いいんじゃ。わしがしたいのだ」


「江ノ島さんが言うなら……」



今だけは、今だけは暇な組織アヴェンジャーズでいたかったのだ。

幹部と章仁は部下を生き残らせるためにと言ったが、本当はこの無邪気に笑う娘のような存在の綾香を守るために未来へ挑むのだ。


下っ端の部下もそうだ。みんなどうしようもなく綾香が大好きなのだ。


朱音の秘密が解明された今回、どうだったでしょうか?

まだ彼女の謎が残っていますが、それは朱音編でやりたいと思います。

それと、最近お気に入りと読者が増えて私は本当に嬉しいです。ほかの方々に比べれば雲泥の差ですが、高い評価をつけてくださったお方。誰だかわかりませんが、本当に心から感謝しております。

皆様の評価が私のやる気に繋がっていると言っても過言ではありませんので、どうかコメントのほうも気軽に言ってください。今後の話の展開の参考にしたりしたいので。あと人物の名前も募集していたり………

では!今回はこの辺でさようならですね!

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