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龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
72/162

エリナール学園AチームVS翡翠魔術育成学校Cチーム

『さて!本日最後の第20試合目ですが、ここには翡翠のCチームが入っていますね』


『そうですね。ここには三原豊姫選手とその弟子の上条美波選手が入っています。豊姫選手は紅哉選手の右腕と言われても過言ではない実力を持っています』


『三原と言えば、全国的に有名なあの三原財閥のですよね?』


『はい。三原財閥の長女にして翡翠が誇る最強の要塞崩しの守護神ですね』


『ほう?それは白銀の理江選手のような、そんな立ち位置なのですね?』


『理江選手はユニコーン。豊姫選手はペガサスと馬同士ですから、ライバル心がありそうです』


『美波選手のパートナーはイクシオンとこれも馬ですね』


『雷馬と天馬。面白い組み合わせです』


『玲奈さんに翡翠のコメントをいただいた所で、対戦相手にはエリナールのAチームが出場しています』


『遂にタテミカヅチが出てくるのですね』


『イフリートが炎の魔神ならば、こちらは雷の魔神と言った所ですね』


『タテミカヅチとイクシオンですが、イクシオンには避雷針と言って角に電気をためることが出来るそうです。もしかすると、タテミカヅチの雷は無効化されるかもしれませんね』


『相性的にはイクシオンの方が勝っているのですか?』


『ただそれだけです。試合はどうなるか分かりません』



「み、右腕って……私はそんなんじゃ…」



プレッシャーに弱い豊姫はVR空間でため息をついていた。



「よう!おっひさ!だな!」


「あ、晴樹くん。元気してた?」



黄色いサングラスと逆立てた金髪の元気そうな少年は軽いノリで豊姫の肩を叩いた。

この少年こそタテミカヅチの主、梧桐ごとう 晴樹はるきだ。



「いや~前回はティアっちにやられてさ、俺も悩んだもんだわ」


「ティアさんは強いもんね。タテミカヅチでもサタンは難しい?」


「あぁ、あれは受けたくないわ。まぁ紅哉に矛先が行っているようで俺は嬉しいけどね。あいつ紅哉のこと好きだからな~」


「え!?そうなの!?」


「お?なんだ気付いてなかったんか?あんなに気にかけてたら誰だって分かるだろ」


「理江さんも気付いてなかったけど…」


「ありゃ?俺だけ慧眼な感じ?んじゃ、これシーッ!ね?」


「う、うん…」


「だってさ……そんな事言ったら確実に俺殺されるっしょ」



声を潜めて晴樹は豊姫にこっそりと自分の身の危険を伝える。



「だね。ティアさん容赦ないもん」


「ま!そういう事で今回のレースしくよろな!豊姫ちゃんには全部技バレってから正直加護耐性辛いけど、1位取らせてもらうぜ?」


「うん!私も負けないよ!」


「それいいね!こういう学校のいがみ合いじゃなくて、こう純粋に勝負したいんよ!分かる?」


「分かるよ。皆お金のことしか見えてないから、理江さんと紅哉くんの勝負羨ましかった」


「そう!俺と豊姫ちゃんでバッチグーな戦いをしようぜ?俺の弟子も強いからさ!ノリに乗って行こうぜ!」


「うん!」


『それではスタートします!よーい!ドン!』


「ひゃっほー!カモン!?タテミカヅチ!」


「おいで!ペガサス!」



開始早々に凄まじい雷撃と共に現れたタテミカヅチの攻撃を豊姫は完全に防ぐ。



少し前、スタート位置に立った美波は少し緊張していた。

隣にはエリナールのエンブレムを付けた男子生徒が立っており、美波はどうすればいいか迷っていた。



「あ、あの……あなたがエリナールの生徒さんですよね…」


「そうだよ。僕はファルス。留学生としてエリナールに来たんだ。君はあの三原豊姫先輩のお弟子さんだよね?」


「はい、上条美波と言います……せ、正々堂々戦いましょうね?」


「もちろん。僕の師匠ももっと派手に行こうぜー!とか言ってましたから」


『あ、良い人っぽい……』



怖い人だったらどうしようかと思っていた美波は身体の緊張が少しほぐれた。



『それではスタートします!よーい!ドン!』


「来てください!イクシオン!」


「来い!ガルム!」



イクシオンが激しい稲妻と共に現れ、美波は騎乗し一目散にかけていく。

ファルスはガルムという巨大な狼を呼び出した。

灰色の毛並みに胸元は赤黒く、目は赤く爛々と光っている。



「ウオオオオオオオン!!!」


「ガルム!行け!」



ガルムはイクシオンを捉えると、涎を垂らして襲い掛かった。



「おっきい!?イクシオン!疾走!」



ガルムの牙がイクシオンに襲い掛かる前に美波はイクシオンに命令し、一定時間風を置き去りにする速度でコースを走る。



「ダメだね。あれじゃ追いつけない。ガルム、他の生徒をリタイヤさせることにしよう」


「オオオン!!!」


「ひい!?」



ガルムは立ち止まってこれから来るであろう生徒を迎え撃つ。

悲鳴を上げた生徒がどうなったか、それはご想像にお任せする。



「さっすが豊姫ちゃん!俺っちの攻撃全然きかないや~!あれ?俺ピンチじゃね?」


「ちょっと!こっちだって厳しいんですよ!」



稲妻のマントに金棒を持つ晴樹の身体はバチバチと放電している。

そんなタテミカヅチの猛攻を何とか防いでいる豊姫は息絶え絶えだ。



「いやいや!そんな冗談は俺には通じないぜ?だって余裕ありそうじゃん?」


「ないですってばぁ!」



紅哉はその試合を呆れてみていた。



「あいつら……仲良いな…」


「あぁ、晴樹は元からああいう性格だしな。争いが嫌いな豊姫さんと合ってるんじゃない?」



ベットに寝ながらモニターを見ている俊介はそんな事を言う。



「晴樹はいつも通りテンション高いな。俺はあいつのテンションに合わせずらい。お前は仲がいいよな?」


「まぁな~あいつも部活動やってるし、何かと話が合うんだよ」


「師匠、あのガルムという狼。危険ですね」



晴樹の話しで盛り上がっている紅哉と俊介の所に癒理がモニターを指差す。

そこにはガルムが他の生徒のパートナーの首を噛みちぎっている所だった。



「ガルムは北欧神話に出てくる女神ヘルの飼い犬だ。冥界から逃げ出す死者を見張ってたりと番犬らしいが、強さは指折りだな」


「舞香さんのケルベロスと似ていますね」


「まぁな。あっちは地獄、こっちは冥界と言った所か」



舞香はケルベロスの事をケロちゃんなどと愛犬のように可愛がっているが、本当は神すら恐れる番犬なのだ。



「ヘルハウンドもオルトロスと同視されることもあるが、オルトロスはケルベロスの弟らしい」


「へぇ?なんだか神話って複雑なのな」


「お前な……これは授業でやった所だぞ………」


「すまん、寝ている……」


「馬鹿め。学年順位―――」


「待て待て!もう俺のハートはゼロだから!」


「ふむ。お前がやめて欲しいのならやめてやろう」


「はい、ありがとうございます」



レースは中盤に入った。

1位は晴樹とファルスであり、その後すぐ2位の豊姫と美波が追う。



「ファルスくーん!ガルムの咢でやっちゃいなYO!」


「はい。ガルム!」


「んじゃ、これは俺からのプレゼントー!」


「雷なら任せてください!」


「私はこっち!」



ガルムより先に飛んできた雷をイクシオンは全て角に集めて無効化する。

そして更に今の稲妻でイクシオンの力が上昇した。

ガルムはイクシオンに噛みつこうとするが、ペガサスに攻撃を防がれて憤慨する。



「ワオオオオオオン!!」



攻撃の速度が上がり、ペガサスの盾が徐々に削られていく。



「イクシオン!あなたの力を見せなさい!」



イクシオンは稲妻を纏った角を巨大な狼の脇腹へ突き刺す。

すると、そこから激しい稲妻が迸り、ガルムはこれにはたまらず晴樹の元まで後退する。



「ちょっと晴樹先輩!イクシオン強化してどうするんですか!」


「ありゃ?俺っちの稲妻吸収されちゃった?」


「されてガルムも怖がっているじゃないですか!」


「うわー!あのイクシオンやばくない!?というか俺さ、豊姫ちゃんに技を防がれ、そのお弟子ちゃんには無効化されるって……相当相性悪くない…?」


「悪いんです!もう何もしないでください!」


「ええええ!?エースとしての威厳ゼロじゃない俺!?紅哉のように弟子に頼られたいよおおお!おい紅哉!見てるんだろ!?これどう思うよ!?俊介も分かるよな!?この状況!」


「あの人達遊んでいるんですか……」


「うん…晴樹くんはそういう人だから…気にしないで」


「でも、追いつけないんですけど…」


「遊んでいても強いからね……晴樹くんは…」



そう、遊んでいるように見える晴樹を必死に追っているが、全く追いつけない。

伊達にエースなだけある。



「豊姫ちゃ~ん!君達の敗因を教えてあげよう!それはね、攻撃に欠ける事だい!紅哉とか俊介のような攻撃力があればファルスくん突破出来たかもね~。んじゃ、俺は一足先にゴール行ってるぜい!」



晴樹は「じゃあね!」と言うと、豊姫たちを置き去りにして行った。



「あぁ……これじゃ勝てそうにないね…」


「速すぎますー!」


「ごめんなさい……こんなダメな師匠で…」


「ううん……君が悪いわけじゃないんだよ。ただちょっと晴樹くん遊びすぎかなぁって……」



1位はエリナール学園。2位は翡翠学園という結果に終わった。

1位のインタビューでは晴樹が元気いっぱいに『この祭りを遊びつくす!』という大会の成績など関係ないように言っており、会場は笑いの渦に包まれた。



「ようよう!紅哉!俊介!元気にしてたかー!?」


「暑苦しい、離れろ」


「まぁまぁそう言わずにさー!」



晴樹は自分の控室に帰るわけでもなく、東京チームの控室に来ていた。

紅哉と俊介は驚き、晴樹は久しぶりにあった友人との再会に喜んでいる。



「おおう、お前よく敵チームの控室に入って来れるな」


「敵?ノンノン!みんな仲間よ!これは楽しいパーティーさ。1日目終わったらお前らのホテルに遊びに行くからな!飯も一緒に食おうぜ!」


「お、おう……」


「でさ、俊介。うちの陸上部が全国行きそうなんだけどよ」


「お、マジか!うちも行くぜ!またお前と走れると思うと熱いぜ」



紅哉の肩から腕が離れると、そのまま晴樹は俊介の元へ行く。

そして勝手に余っているスポーツドリンクを開けると、飲み始めた。



「晴樹くん流石だね。完敗だったよ」


「いやいや!豊姫ちゃんはこういう競技は合わないっしょ?本番は要塞崩しYO!」


「そうだな。お前とやり合えるのは1年で1回だけだからな」


「おうおう!俊介は出るよな!」


「いや……俺は出ないんだ…」


「何故よ!?ノーン!お前と紅哉の拳は俺にビンビン響くんだぜ!?あれをもう一度味わいたいのになぜだ!?」


「それは県のお偉いさんに言ってくれよ……」


「分かってねぇな……ホントあいつらはランクだけで決めやがって……ちょっと待っていろ!俺が東京知事に話つけてくらぁ!」


「待て待て!そんなことすればお前は失格だぞ!?」


「そうだ!待てって!今度皆で集まってやろうぜ!?」


「嫌だああああ!俺は!紅哉と俊介と拳で語り合いたいんだあああ!」



紅哉と俊介が全力で晴樹の身体を掴んで止めに入る。だが、晴樹は何に動かされているのか、じりじりとまた一歩部屋の入口へ進んでいく。



「晴樹先輩帰りますよ。ホントご迷惑かけてすみません…この馬鹿な師匠には言って聞かせますんで…」



突然現れたファルスは晴樹の頭を叩いて気絶させると、そのまま引きずって部屋を出て行った。



「よくできた弟子だな」


「あぁ……つうか、俺と紅哉が止めに行っても止まらないのか…」


「恐ろしい奴だな」



20試合目で1日目は終了した。

ケセラルトのAチームと北栄のAチームはまだ出ておらず、明日に持越しとなったのだ。



俊介と晴樹が合わさってちょうどいいかなと思いまして、熱いキャラを入れました。ふざけているけど強い!そんなキャラです。

色々なキャラが増えてきて私は超大変です。何が大変かと言うと、名前が大変なのです。

アイディアがこう、ぱっと浮かばなくなってきてやばいですね。話はポンポン出るのに名前が難しい。そんな時期になっております。

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