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龍の血を引く者  作者: また太び
8章 全国魔術師運動大会
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聖ケセラルト学園CチームVS翡翠魔術育成学校Bチーム

『さて、ケセラルトのCチームに続き、この試合には翡翠学園のBチームが入っているようですね』


『はい。各校から3チームまで出場できる種目ですから、このレースは2日まで伸びる予定ですね』


『はい。さて、このBチームにはCランクの師匠とSランクの弟子という異色のコンビですが、玲奈さんはどう見ますか?』


『普通に考えればSランクの弟子が師匠をカバーしながら戦うかと思いますが、このCランクのマスター朽木俊介選手は火神崎紅哉選手のクラスメートであり、何度もリヴァイアサンの首を落としているという情報があります。ただのCランクだと侮ると痛い目を見るかもしれませんね』


『なんと!?あの冥王龍の首を落とすほどの実力者ですか!?』



玲奈の言葉に会場はざわめきに包まれる。



「火を得た俊介は強い……攻撃だけならお兄様と私を上回る…」


「そうなの?」


「うん……でも、近くに凪咲がいないからどうするんだろう……」


『そろそろスタートするようですね。これはどう出るのか楽しみな試合です』



会場全員が息をのんで俊介に注目していた。周りはAランク揃いの上級魔術師。その中で下級魔術師の俊介がどう出るのか。



『よーい!スタート!』



みな一斉にスタートする。だが、凪咲と俊介は止まっていた。



「凪咲ああああああああ!」


「聞こえていますよ熱血先輩~イフリートさ~ん。ほいじゃ、行きますよ~」


『オオオオオオオオオオオオン!!!』



イフリートが大地に呼びかけるように吠えると―――その瞬間VR空間の森は火の海に包まれた。



『なんという事でしょう!VR空間ごと炎で包みました!』


『これは…!魔神イフリートの能力ですね!それに森ですから、相性は抜群です』



会場は凪咲の技で一気に盛り上がる。この大がかりな結界を展開出来るのは凪咲とイフリートのコンビがあってこそ出来るものだろう。



「なるほどね……俊介は火がないとどうしても他の魔術師に劣る……でも、凪咲の結界なら付近まとめて炎で満たせる……それで炎を吸収するつもりなのね…」



俊介は火の海になった森の炎を走る毎に片っ端から吸収して行く。

最初はコンロ並みの火が今では竜巻を起こすほどに膨れ上がっていた。



「凪咲!もっとカモン!」


「はいは~い」



途中で凪咲と合流すると、凪咲はイフリートの口から炎を吐きだす。それも吸収し、俊介のボルテージが最大まで上がった。



「んじゃ後れを取り戻しますか~」


「おう!ついてこい!」



凪咲の結界内では常に上から炎のメテオが降り注ぐ。それは前を走っている生徒を狙い続け、当たったら消えない地獄の火炎が待っている。

それにこの結界内ではとにかく暑いのだ。



『おや?なんだか選手の動きがみるみる遅くなっていますね』


『氷の魔術で、ある程度緩和しているのでしょうが、イフリートの結界内だと軽く200度は超えているでしょう』


「流石だな、凪咲は」


「そうだね。俊介くんとのコンビだから出来る技だよね、これ」



控室では凪咲が発生させた炎の結界を見て紅哉はこれなら勝てると思っていた。



「これホント暑いですからね!模擬戦としてこれ使われましたけど、本当に死ぬかと思いましたよ!」


「凪咲のクラスとやる時は必ずこの結界を使いますから、私と美波はいつも汗だくです」


「俺も喰らったが、敵に回したくないな……」


「凄い暑いよね……でも、暑いで済んでるぶんまだマシなのかな……」


「師匠は龍の鎧を着てますから、ある程度緩和出来るのでは?」


「いや、そうでもない。魔神の炎は伊達じゃないぞ?龍の耐性を持ってしてでも暑い」



モニターでは更に体感温度を上げるべく、俊介が熱風を起こし、凪咲がそこに赤黒い炎を吐きだす。



「俊介よ、このまま押し切るぞ!」


「おう!おっさんも頼むぜ!」



イフリートは俊介を抜かして前方の生徒へ襲い掛かる。

暑さでいつもの調子が出ない生徒をあっさり狩り、イフリートが魔神の力を振るう。



『凄まじい力ですね。大地が震えているようです』


『そうですね。彼女は1年生でありながら大会独特の雰囲気にのまれていないようです』


『むしろ自分の力を見せる時だ!って感じがしませんか?』


『はい、元気いっぱいでよろしいですね。俊介選手もCランクとは思えない強さを持っています。炎を得て力が上がるようですね。今の彼はSランクと言っても過言ではないでしょう』


『凪咲選手とだからこそできた技、ということですね?』


『はい。彼女の魔神の炎を吸収して力を上げる。師匠と弟子が共に手を取り合う良いコンビです』



俊介は1位を走るケセラルトの生徒に迫った。



「お前を抜かして俺達が1位だぜ!」


「もう!あなた達だけ目立って許せませんわ!」


「お!?やるってか!」



ケセラルトの生徒はユニゾンして俊介を迎え撃つ。

弟子の方も凪咲と走りながらぶつかり合っており、イフリートの攻撃を耐え凌いでいた。


ケセラルトの女生徒は騎士のような姿になり、剣を俊介に向ける。



「へぇ、英雄種か。癒理ちゃん以外見た事ねぇからどんなもんなのか見せてくれよ!」


「いいでしょう!この剣の錆びになりなさい!」



俊介の拳と女生徒の剣がぶつかり合う。



「なんですって!?私の剣と互角!?あなたは確かCランクのはず!」


「へへ!今の俺はリヴァイアサンと張り合えるんだぜ!オラオラ!!」



俊介のラッシュに女生徒は防戦一方となる。



「ほいほい~っと避けてばかりじゃ凪咲は倒せませんよ~」


「くっ!流石魔神ね!」


『1位と2位のデットヒートが繰り広げられています!どちらも優勝候補として譲れない戦いなのでしょう!』


『ケセラルトの師匠の名は筈木はづき ネルタ。そしてパートナーはオジエという英雄です。ですが、その武器は聖剣ディランダルと同じ鍛え方と同じ鉄で作られたという武器コルナタというものです』


『ということは、隠れた名剣使いということですか?』


『そうですね。剣だけならばディランダルと並びます。その剣と同格の俊介選手には評価を改めなくてはなりません』



「オジエか。コルナタは相当優秀な剣だが、リヴァイアサンと張り合った俊介なら怖くもないだろうな」


「というか、舞香さんと張り合ったうちのクラスは皆大丈夫なんじゃないかな…」


「それに結界の熱で相手の動きが鈍っています。凪咲は良い策士になりそうですね」


「気付かないうちにどんどん体力は奪われていく。凪咲さん結構策士で怖いですよね」


「ええ、私達も何度要塞崩しで敗北したか」


「なるほど、凪咲は俺達で言う舞香ポディションってわけだな。良い目標が出来たじゃないか」


「うまい具合に分かれたんだね。直人くんはどこなの?」


「直人君は1組ですね。直人君の評判は余り聞いたことありません」


「まぁ直人だしな…」


「直人くんは仕方ないね…」


「直人君ですから」



誰もフォローしなかった。



「ヘックション!」


「直人……風邪?」


「いや、凄い誰かから批判を受けているような…」


「直人さん、気のせいですよ」


「ゆ、遊佐先輩がそう言うのなら……」



カタカタとパソコンを高速でタイピングしている遊佐はぶっきらぼうに答える。



「遊佐先輩は何をしてるっすか?」


「魔術制御システム解析の練習です」


「それってどんな競技なんすか?」



遊佐はパタンとパソコンを閉じて直人に説明をすることにした。



「一言で言えば見ていてもつまらない競技ですね。魔術とは別にこういう競技だけに使われるものではありません。電子機器にも応用され、人がエーテルを加える事によって動くものもあります」


「あ、遊佐ちゃんが使っているそのパソコンってエーテル補給装置付きだよね?それアイリが発明したものだ~」


「っ!?ホントですか!?」



アイリは朱音からキャラメルポップコーンを貰って食べており、なんとなく遊佐のパソコンを見て子供のようにはしゃぐ。



「うん!後ろのマーク見てみな~!A4ってあるでしょ~?これアイリのAと四条家の4って意味なんだよ~」


「凄いです!今度色々お話を聞かせて貰っていいでしょうか!」


「うん!いいよぉ!アイリが色々発明したの見せてあげる~」


「というように、このパソコンはエーテルを補給して電気代わりに使う事も可能なのです」


「凄い……癒理ちゃんよりギャップが凄い……」



目の輝きがいつも通り冷めた目に戻った事に直人は苦笑いを浮かべていた。



「それで私が出る競技ですが、複雑に絡まった電子魔術回路をいかに早く解いてその機械を動かせる事が出来るか、という地味な競技です」


「なるほど。確かに見ていてつまらそうな競技っすね」


「直人君。確かにつまらない競技だけれど、あれは研究者から見れば大変興味深いものなのだよ」



会話を聞いていた雅文は補足説明をする。



「そうね。私や雅文、アイリが見ていれば結構面白く見えるのよ。学生が解くにはかなりの難問なのだけれど、それをいかに早く解くか。見ものなの」


「つまり、その道に通じている人しか分からない競技ということですよ」



最後にセレナが締めくくる。



「アイリなら数秒で出来るけどね~」


「是非後でご教授ください!」



瑠璃と舞香と直人は遊佐の意外な一面が見れて驚いていた。



『ちっ!攻め手に欠いているな……このままじゃ2位になっちまう。凪咲は押しているが………試してみるか!』


「凪咲!」


「はい~?」



人差し指と親指を立てて手首をくるくると回す。これはチェンジという合図だ。



「了解です~凪咲なら行けるかもですね~」



凪咲は一瞬でイフリートを纏い、ユニゾンする。

巨大な戦斧を俊介に当たるのも構わず投げつけた。


それが合図で俊介は斧の下をかいくぐるようにネルタの弟子の方へ抜ける。



「なっ!?」



ネルタは突然の攻撃に咄嗟に剣を盾にする。

凪咲の斧によってネルタはコース外の森へ吹き飛ばされるが、木を足で蹴ってすぐコースへ戻る。



「あなたの相手は凪咲ですよ~」


「イフリート…!」


「お前の相手は俺だあああああ!」



弟子も意表をついた形となり、俊介は炎の拳を叩きつける。

弟子の男子生徒は魔術障壁を生み出すが、俊介の攻撃を受け切れず後方へ飛ばされる。



「よし!凪咲!このまま1位を取りに行くぞ!」


「あいあいさ~。なら、もう少し本気出しますよ~」



凪咲は斧を地面に引きずりながら先を駆けて行く。そして道に斧を勢いよく叩きつけた。


ドン!ドン!ドンドン!ドオオオオオオオオン!!!


火柱が1本、また1本2本そして天へ突きぬけるように道を塞ぐ炎の壁となる。

俊介はそれを吸収しながらくぐり、事なきことを得るが、ネルタはそう行かなかった。



「きゃあ!熱い!」


「おや?リタイヤしないんですか~?」


「しませんわ!私一人でもゴールしてみせます!」


「大した根性ですね~」


「だが!俺たちの勝ちだ!」


「え!?」


『ゴール!1位は師匠朽木俊介選手と弟子火宮凪咲選手のお二人です!そして続いて2位は師匠筈木ネルタ選手――――』



ネルタは負けた事が信じられなかった。

まだ彼女には策があった。しかし、出す前に終わってしまったのだ。



「私が負けた?」


「いい勝負だったぜ」



地面にへたり込んでいるネルタに俊介は子供のような笑顔で近寄った。



「納得が行きませんわ!」


「と言ってもな……決まったもんは決まったし」


「私はあそこから逆転するところでしたのに…!」


「なら、今度また勝負しようぜ!」


「え?」


「もう俺達は2年生で今年が最後の大会だけどよ。それでも、またどこかで集まってやろうぜ」


「それ本当ですか?」


「あぁ、男に二言はないぜ」


「約束ですよ。今度は負けません」


「凪咲は面倒事は嫌いなんですけどね~」



ネルタは俊介から差し伸ばされた手を取って立ち上がった。

VR空間なので聞こえないが、会場は温かな拍手に包まれていることだろう。



「あ、あの……俊介さんとお呼びしてもよろしいですか?」


「ん?あぁ、いいぜ?なら、俺もネルタって呼ぶからな」


「はい…」


「うわ…この熱血師匠フラグ立てましたよ~」


『ふっ…若いな…』



頬染めているネルタに気付かないまま俊介はVR空間を出て行った。

それを見た凪咲はドン引きしながら後に続く。



『いや~魔神の力には驚きでしたね』


『そしてあれだけの結界を維持し続ける彼女のエーテル保有量にも驚きましたね』


『どちらも素晴らしい戦いを見せてくれました。次の試合は―――――』



「ふう!今日の試合は終わりだぜ。後は豊姫さんコンビと紅哉コンビだな」


「あぁ、良い戦いだった。もしあそこで凪咲とお前がチェンジしなかったら負けていたな」


「そうだな~どうも英雄種はやりずらい」



控室に入ると、俊介はベットに横になった。

汗が物凄く、スポーツドリンクをがぶ飲みしていた。


俊介と凪咲が奮闘した回でした。そして俊介に春が!?俊介は自覚がありませんが、下級生と同級生の女子に人気があるのですが、本人はいつも紅哉の周りを見ているせいか全く気が付きません。

今回はお祭りということで……何かあるかもしれませんね(ゲス顔

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