希望の花
「はっはっは!やっぱオレのブレスは強いぜえええ!」
「アンタのはもう暴発でしょ!あんなのはブレスじゃないわ!」
「あぁん?ヴリトラ細かいこと気にすんなよ」
「力任せでも天使は突破出来るようだな。ダハーカ、天使が来ない今がチャンスだと私は思うがね」
「うむ。グリンデル、ヴリトラ。そこらにしておけ」
「はいはい。ほら、さっさと殿努めなさいよ」
「へいへい」
「余り狂乱されても困ります。グリンデル、ほどほどにしてくださいね」
「いいぜ。オレもさっき一発打ってスッキリしたからな。ここから先は逃げに徹するぜ」
紅哉たちはゲートに向かって進みだす。
ゲート付近まで行くと、そこにはおびただしい天使がいた。
「うわ……完全にあのゲートに興味持たれてるじゃない……」
「あるはずがないものがあればそうなるだろう。ダハーカ、これはどうするのだ?」
ヴリトラが嫌そうにしており、ニルはダハーカに問う。
「我らはあのゲートからしか帰れぬ。人間を放り込めば我らは霊体となって消えれるのだが……あの天使をどう突破するか…」
策士のダハーカと神龍も悩んでいるようだ。
幸いここに来るまで天使を全て倒しているため、紅哉達がここにいることはばれていないようだ。
「この中で最も機動性に優れているのは……ニル、貴様か」
「うむ。オレがエヴォルトすればこの中で一番速いだろう」
「ならば、ニルはこの人間3人を抱えて一直線であのゲートに飛び込め」
「了解した」
「我らは天使をかく乱するぞ」
「いいわよ。足止めならアタシに任せちょうだいな」
「足止めと言わず全部殺してやんよぉ!」
「深追いは危険だぞ?グリンデル」
「マスター、オレに力を」
紅哉は胸に手を置く。すると白い炎が生まれ、ニルを包む。
炎が消えるとそこには神々しいまでの聖龍がいた。
「ニル。貴様は最後に来い。我らが十分かく乱したと思ったら行くのだ。では!行くぞ!」
「ちょっとそこの天使さん?アタシと遊ばないかしら!」
ヴリトラが建物から飛び出すと同時に身体の炎を矢の如く飛ばす。
突然不意を突かれた天使は炎に当たると、飛ぶ力もなくなり、ばたりと地上に落下する。
「オオオオオオオオ!!」
「キシャアアアアアアア!」
ダハーカとリアによる混沌の波と轟津波が天使たちの襲い掛かる。
ダハーカの力によって天候は曇り出し、赤い雨が降り注ぎ始めた。それに続いてリアの力により天候は嵐となる。
「はっはっは!私の力が存分に発揮できる環境ではないか!」
神龍は天へ雄叫びを上げると左足の宝玉が輝きだす。そして次の瞬間には雲から氷の刃が降り注ぐ。
「りゅ、龍だと!?馬鹿な!こいつらは過去の記録にある奴ら!さ、散開して挟み撃ちにしろおおお!」
天使の隊長らしき者がやっと天使たちに命令を出す。だが、既にもう遅かった。混乱の極みに陥った天使たちに命令など伝わるわけもなく、各自己の意思に従って逃げたり、攻撃をしている。
グリンデルは大勢の天使に囲まれるが、狂乱化して襲いかかる天使を残酷なまでに殺す。
「ダハーカ!道を!」
「うむ!」
リアとダハーカは数多くある首にブレスをチャージする。
そして一気に――――
『バアアアアアアアア―――――!!』
青いブレスと黒より濃い闇のブレスがゲートまで続く道を一気に切り拓いた。
「行け!ニル!」
ダハーカが叫ぶと同時にニルは音を置き去りにする速度で壁から飛び出した。
翼から漏れ出す光は軌跡を描き、天使にニルの姿を捉える事は出来ない。
だが、僅かに反応した天使たちが行く手を塞ぐ。
しかし、それで止まるようなニルではない。
「聖龍王圧殺!」
ニルの肩に白い球体が生まれ、そして潰れる。その瞬間目の前にいる天使たちは一斉に床へ叩きつけられる。
「メルトカオスブレス!」
ニルはいつもと違ったカオスブレスを吐きだした。ブレスが当たった天使はたちまち蒸発したのだ。
「いつもより酸が強いブレスだ。カオスブレスだと思うなよ」
そう残してゲートへ突入しようとした所で紅哉は大変な事を思い出した。
「ニ、ニル!このまま入ったら家が壊れる!」
「はッ!?そうだった!?」
「あ………」
「ニ、ニルちゃああああん!!」
ニルはゲートへ突入する直前で顕現を解くと、空中に放り出された紅哉たちはそのままゲートへ入って行った。
「うがッ!?うお!?いでッ!あべしッ!」
紅哉はまず自分の身体を壁にぶつけ、そして次にニル、舞香、瑠璃が次々ぶつかり、ずるずると床に倒れた。
「か、帰って来たのか…?」
「そ、そのようだね…」
「うぅ……痛い…」
変な格好で現状を理解する紅哉たちはとりあえず立ち上がった。
そして舞香と瑠璃は同時に目を閉じる。
「うん……私の所はみんな帰って来た…」
「私も大丈夫!神龍も帰って来たよ!」
「あぁ、ヴリトラも帰ってきたようだ」
脳内でさっそく会話をしているニルとヴリトラの帰還を喜ぶ。
すると、部屋の壁に開いていたゲートが閉じようとしていた。
「ッ!?お兄様…!退いて……!」
「舞香!?」
舞香は紅哉を退かすと、ゲートへ向けて舞香が扱う最強の魔術を放った。
「ま、舞香何をしたんだ!?」
「天使がこっちに来ようとしていた……危ない…」
「え!?危なかったぁ……私達って見られちゃダメみたいだからね…」
「ニルがこのゲートで消えたから気になって来たんだろうな……危なかった…」
「見られてはいないと思う……これでゲートは閉じた…」
いつもの壁に戻った紅哉の部屋は急に静けさを取り戻した。
「お兄様……時間やっぱり過ぎてないね…」
「だな……でも、ちゃんとここに」
紅哉はポケットから赤い小瓶を取り出した。振ってみるとチャプチャプと水が揺れる音がした。
「明日直海さんに飲ませに行こうね!」
「あぁ、その前に枯れちゃうから植えておこうぜ」
「うん……鉢は…?」
「外だ。ちょっと寒いかもしれないが、行こう」
「あ、私も手伝う!」
紅哉たちは外に出ると、一つずつ植えられる苗を3つ持ってきた。
「あれ?一つずつなの?一気に植えてあげないんだ」
「いや、瑠璃にもプレゼントしようと思ってな。龍人同士だし、なんだかそう思った」
「ありがとう紅くん。大事に育てるね」
「舞香も育ててみようぜ。お前が欲しいって言ったんだから、責任持って育てろよ?」
「うん……」
「よし、良い子だ。俺も頑張って育ててみるよ。なァニル。これって花とか咲くのか?」
「咲くと言われている。オレも今日初めて見たわけだしな。こういうのは神龍に聞いた方がいいんじゃないのか?」
「瑠璃、どうなんだ?」
「うん…………あ、咲くって!七色の花が咲くとか」
「いや、もう既に七色………ってあれ!?さっきいた場所だと七色だったよな!?」
そう、さっきの龍の里で見た野草は七色だったが、今は黒い色をしている。
「あ、それ時間帯で変わるんだって。龍の里には夜とか朝はないからいつも七色なんだけど、こういう時間帯の場所だとその時間によって色を変えるんだって」
「ほええ……綺麗なもんだな」
「でも、これ名前がないだって。だってこういう野草があることはバハムートと龍神種しか知らないから、誰も名前を付けようとは思わなかったらしいよ」
「そっか……名前がないのも悲しいな。舞香、どうだ?名前を付けてみないか?」
「私…?私でいいの…?」
野草をじっと見ていた舞香は無表情だが、どこかきょとんとした顔で紅哉と瑠璃を見ていた。
「うん。私も舞香ちゃんがいいと思うよ。私はネーミングセンスないからね~」
「そう………それじゃ……ホープフラワー……」
「ん?ホープフラワー?どんな意味なんだ?」
「虹は……希望の象徴という意味……そしてこれは花だから…希望の花って事でホープフラワー……」
「すっごくいいよ!なんだかかっこいいね!神龍も悪くないって言ってるし!」
「いいんじゃないか?この花に相応しい名だ」
ニルも満足げに頷いていた。紅哉も妹が付けた名に満足する。
「んじゃ!これは今度からホープフラワーだ!」
8章は短いですね。もう少しで終わりになるかと思います。紅哉は基本生き物が大好きなので、火神崎家の花壇にある花も全部紅哉が選んだものだというのは余談。
さて、私が最後にこの花の名前を出したのは理由があるかと思われちゃうのかな?わかりませんが(笑)
ぶっちゃけるとここまで序章に過ぎないのですが、これはあくまで紅哉編であります。
これからの展開をお楽しみください。




