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龍の血を引く者  作者: また太び
7章 第二の神の遺産
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真実

目を開けると、そこは空中都市だった。都市と言っても過言ではないこの広大な建物は先が見えない。


クリスタルのような輝きを放つ建物は永遠に等しい時が流れても錆びることはない。



「む?何故我らは龍の里にいる」


「あれ…?ダハーカ…?」


「どうなってんだよ!?もうここには戻れねぇと思ってたのによ!」


「グリンデルも……」



そう、紅哉の後ろにはかつて死闘を繰り広げた邪龍がいた。

アジダハーカ、グリンデル、リヴァイアサン、ファーヴニル、ヴリトラと全員が最大顕現している。舞香はユニゾンもしていないのにこれはどういう事なのだろうか。



「言っただろう。ここは龍しか入れないと」


「龍以外は強制で弾かれるのよ?舞香のユニゾンで召喚するケルベロスもヘルハウンドも例外じゃないわ」


「舞香よ、これはどういうことだ」


「お母さんの病気治すために龍の秘薬を取りに来たの……」


「ふむ……野草はあるかもしれないが、秘薬自体は残っていないだろう」


『え!?』


「お、おい!それはどういうことだ!?」


「神はありとあらゆるものを奪った。もちろん秘薬も例外ではない」


「え……んじゃ、どうするんだ…?」



紅哉の泣きそうな疑問には誰も答えなかった。



「大丈夫だよ!野草さえあれば私がどうにかして見せる!」



紅哉達が通って来たゲートに新たな人影があった。ここは龍しか入れな聖域。世界で2人しかいないと言われる紅哉と舞香以外に誰が入って来れるのだろうか。



「癒理ちゃんからメールがあったから、仕事全部キャンセルして紅くんの家に来たの。でも、誰もいなかったから、とりあえず紅くんの部屋に行ったらうちのパートナーが一瞬で理解してくれた」



光が収まると、そこにはこちらに歩いてくる瑠璃がいた。その真上には白く美しい東洋の龍、神龍がいた。



「瑠璃…?お前のパートナーは龍だったのか…?」


「うん。ごめんね、ずっと黙ってて。紅くんを変に混乱させたくなかったから、黙ってたの」


「紅哉よ、龍の秘薬が必要なのだろう?なら、野草を私に持って来い。そうすれば秘薬を調合してやろう」



長い髭を揺らしながら神龍は面白そうに笑う。



「なるほどな、確かにこれは驚いた。お前の主が瑠璃だったとは」


「アタシは予想がついていたわよ。紅哉の知り合いで未だにパートナーを明かしていない奴と言えば瑠璃しかいないもの」


「まぁ驚きではあろう?さて、行こうではないか」



神龍は話を切って紅哉達に先を促した。



「ここって誰もいないのか?」


「いないはずだ。ここはもう誰も入れぬ場所だからな」


「龍でもない限り入れるわけがないぜぇ!?それに龍はもう今の時代にはオレ達しかいないからなぁ!」


「相変わらずうるさい邪龍よ。貴様、翼龍でもいいのではないか?」


「あぁん!?てめぇ、このオレに喧嘩売ってんのか!?龍神さんよぉ!?」


「貴様こそ私を誰だと思っている。貴様のような下等種とは違うのだ」


「ぶっ殺す!」


「そこまでにしておけ。神龍もそこまで角を立てるな。グリンデルは元からこうなのだ、勘弁しておいてくれないか」


「ほう、随分と仲間想いの邪龍になったものだな。ダハーカ」


「我は争いを好まぬ。ただそれだけよ」



さっそく後ろで喧嘩を始めた2体に紅哉と瑠璃は先が思いやられた。ニルもヴリトラもリアも止める気はないし、龍の生活がよく分かったと人間3人は思った。



「それにしても広いな~」


「当たり前です。私やダハーカ。そしてミドオルガズが通れるように設計されましたからね」


「今となってはただ広いだけの道だ」


「これ今日中に野草の元まで辿りつけるのか…?」


「あぁ、それなら心配に及ばないわ。この龍の里は時間軸から外された空間よ。ここで1ヶ月過ぎても現実世界では1秒も過ぎてない」


「マスターはいいだろう。オレの肩に乗っているのだからな。何も疲れることはない」


「そうだけどさ、こう景色が変わらないんだ」


「はん!なんつってもここは水龍エリアだからな!水龍はでかい奴ばっかだから道も広いんだよ!」


「んじゃ……他は?」


「龍人エリアは普通の道です。余り大きいのはいませんからね。地龍エリアもここと似たような感じですね。翼龍は言わなくてもいいかもしれませんが、飛んでますから道はありません」



リアの背中に乗る舞香の質問にリアが答えた。



「でも、長い事には変わりないよね……」


「そうだとも。だからこそこうやって急いでいるわけだが、なんせここは広すぎる」



ニルとグリンデルと神龍は飛んで移動し、ヴリトラは地上。リアは水龍エリアという事で道の真ん中を流れるもはや海としか思えない川で泳ぐ。ダハーカは呪いの波を作りだしてリアのすぐ隣を水龍と言わんばかりの速度で泳ぐ。



「ねぇ神龍!野草はどこにあるの!?」


「私の種族しか入れない王の間だ」


「王の間だと!?」


「ニル知っているのか?」


「王の間はバハムートと龍神種しか入れない龍の里で最も厳重に警備されているエリアだ。まさかそこに野草があるとは」


「私たちは入れるの…?」


「可能なはずです。神龍がいれば私達も自動で許可が下りるはず」


「本当は邪龍など入れん領域だが、緊急事態だ。私が特別に許可を出す」


「我も入った事のない聖域だ。少々胸が躍る」


「王の間に入れるのは近衛兵でも無理だぁ!だからぁ!王の間に入れることは龍族にとって光栄な事なんだぞぉ!」


「そうなのか。少し楽しみだ。本当に瑠璃には感謝しないとな。もし瑠璃がいなかったら全て無駄に終わってた」


「えへへ、良かった。紅くんが困っていると思って来たんだ~。本当はまだ打ち明けようとは思ってなかったんだけど、秘密と未来のお義母さんを取ったらそんなの考えるだけ無駄だった」



そう言って瑠璃は笑う。そして紅哉心から瑠璃に感謝した。



「神龍、王の間まであとどれくらい?」


「ふむ、あと10kmと言った所か。もう少しだ」


「10km!?なんでそんなに遠いのおおおおお!」



瑠璃の叫びに龍は全員同じ答えを出す。


『龍の里だから』と。



「あのね瑠璃。ここは正直言うと日本なんかより大きいわよ?」


「うむ。下手すると地球より広いかもしれん」


「なんでそんなに広いんだあああああああ!」



紅哉の叫びにこれまた龍たちは同じ答えを出す。


『龍の里だから』と。



「紅哉よ、これでも私たちは相当なスピードで進んでいるのだぞ?」


「マスター。オレたちは龍族でもトップクラスの力を持っている。それがこんなに集まっているのだ。名前を与えられていないような龍共は逃げていくだろうな」


「確かにな。お前ら相当龍の里では名前を知られている存在だよな」



紅哉は周りを見渡す。

まず漆黒の龍戦士ファーヴニル、その隣を飛ぶ狂龍のグリンデル、それと龍の神に属する神龍、そしてその下には呪邪龍ヴリトラ、ヴリトラの隣の川を泳ぐ冥王龍リヴァイアサン、それに並ぶ邪龍王アジダハーカ。

この龍だけでひと国簡単に沈められそうだった。



「誰もいない龍道を走ってもつまらんがな」


「みんな本当にいなくなっちゃったのねぇ……」


「バハムートの宝玉は無事に発揮したようだな。我は最後に旅立ったからな、みなの消えていく姿をよく覚えている」


「私もです。でも、あなたより先に旅立ちましたが」


「オレは最初だぁ!」


「私は旅立っておらぬよ」


「なに…?そういえば貴様ら龍神種はあの場にいなかったが、何をしていた」



ダハーカは黄色い瞳を神龍に向けた。



「いいだろう。今となっては過去の話しだ。バハムートが私達龍神種に言ったことを話そう」



神龍の言葉に誰もが耳を傾けた。ニル達にとってはバハムートの行方を知る事になるのだから騒ぐ事など出来るはずがない。



「そうだな、どこから話したものか………ふむ、なら宝玉で貴様らがいなくなった後の話しから始めよう。瑠璃は我がどのような状態で見つかったか知っているな?」


「う、うん。玲奈ちゃんの家で白い宝玉を見つけたの」


「それは私だ。私達神龍は現代に生き残るために己の身体を宝玉へ変えた」


「何のためにだ?」


「バハムートは未来が見えていた。長い歳月の先に私達龍族を蘇らせる者が現れることを」


「それって……俺達か?」


「そうだ。そこでバハムートは私達龍神種の心臓を抜き取り、殻の輝きも何もない宝玉に力として私達を埋め込み、そして現代まで飛ばされた」


「し、心臓って!?マジかよ!」


「でも……伝承ではあなた達の姿が中国とかに伝わっている…」


「それは過去の龍神種の誰かだろう。私より先に目覚めた龍神種が暴れたか、従ったのか知らんが」


「ほう、それで?何故バハムートは貴様らだけをこの現代へ送ったのだ?」


「さあ、私には分からない。私達もバハムートに集められた理由が分からなかったからな」


「え?んじゃ、お前らは集められたと思ったら心臓抜き取られたのか?」


「そうなる。未来のためだ、とか言って心臓を抜き取られたな。私の予想だが、バハムートはまた龍の里を復活させるつもりだ」


「はぁ!?あいつは死んだんじゃないのかよ!?」


「死んでいない。あいつはしぶとい。どこまでもな」


「なるほどな……それで貴様らを生かしたわけか」


「ダハーカ、あなたには分かったのですか?」



一人で納得しているダハーカにリアは問いかける。



「我も予想くらいしか出来ぬ。だが、我と同じ思考を持つバハムートならこうするとなんとなくだが、分かるのだ」


「流石龍族ナンバー2だな。龍神種にも劣らぬ力を持つダハーカ様はどうお考えで?」


「紅哉、瑠璃、舞香よ。心して聞くがよい。バハムートはこの現代に復活する」


「なんだって……?いま神龍が死んでいないって…」


「死んでもいないが、死んでいるとも言える。バハムートはどこかで目覚めの時を待っている。誰かが目覚めさせるのを」


「まさか……触媒として誰かに蘇らせてもらうのを待っているの…?」


「舞香よ、当たりだ。それで蘇った後は主を縛り付けるなりしてエーテルだけ貰えばいい。そして私達龍神種を味方につけて龍の里をこの現代に創るつもりなのだ」


「だからオレはバハムートが嫌いなのだ。あいつはどこまでもしぶとい」


「バハムートが考えそうなものねぇ……もし、舞香の言うとおりになったらこの世界危ないわよ?」


「なんでだ?そんなにやばいのか?」


「マスター考えてもみろ。あいつは龍の王だぞ。死んだ龍族をこの世界に集めることもできる。そうすればどうなるか…分かるな?」


「龍だけの世界になりますよ。ただの龍でもAランクに該当するほど強い。人類が滅亡するのは時間の問題です」


「やばいな………どうすればいいんだ…」


「紅哉ぁ!まだ安心しとけ!あいつが蘇ったとしてもその主に問題がある!あいつは強大な力を持っているからな!そんじょそこいらの魔術師じゃ召喚する事もできねぇ!」


「うむ。舞香ほどの魔術師でなければ召喚した所でエーテルが枯渇するのが目に見えている」


「そ、そっか……まだ大丈夫なんだな」


「紅くん、今は直海さんのために野草を採りに行こう?」



瑠璃の言葉に紅哉は力強く頷く。そう、今は直海を助けることが最優先事項なのだ。今はまだバハムートの事は頭の隅に入れておくだけでいい。

人間は現代いまを生きるだけで精一杯。何故かこの言葉が頭に浮かんだ。


なんだか伏線が盛りたくさんの話でしたね。なんだか先の話です、と言っておいて神龍あっさり出ましたね。そろそろ隠し通すのは難しいかな、と思って登場させました。まぁもうここまで読んでくださった方々にはバレているかと思いますが、これで神龍が紅哉のパーティーにレギュラー入りしました(ドラク〇の仲間加入BGM)。神龍は誰もいない場所なら顕現しますが、基本出ない方向で行きます。

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