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龍の血を引く者  作者: また太び
7章 第二の神の遺産
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指輪の遺産

先手はスフィンクスだった。灰色のブレスを吐きだし、紅哉たちを攻撃するが、この程度の攻撃など、当たるはずがない。



『紅哉くん!絶対当たっちゃダメだよ!これ石化になるみたい!』


「うお……やだな~。お~い!みんな!こいつのブレスは石化しちゃうから当たるなよ!」



紅哉の言葉にみんな頷くと、スフィンクスに朱音が攻撃を仕掛ける。



「迅雷…!」



閃光の如くすれ違いざまに切りつけて行く。スフィンクスは足踏みして朱音を潰そうとする。そこへ空中を走るスレイプニルがスフィンクスの顔を踏みつけた。



「これも!」



足踏みを中断させられて倒れたスフィンクスへ彰は光の弓矢を放つ。



「魔槍突き!」



倒れたスフィンクスへ癒理が近づき、短く息を吐くと同時に乱れ突きがスフィンクスへ襲い掛かる。



「さっきから返事ないけどよ!ヴリトラ来い!」


「もう反応がないと思ったらいきなりこれはどういう状況よ!」



ヴリトラは空中で顕現するとスフィンクスへ全体重を乗せたストンプをした。

余りの地響きに遺跡が壊れてしまうのではないかと思われたが、それは大丈夫のようだ。



「なるほどね。この空間はパートナーとの通信がシャットアウトされるみたい」



踏みつけた後すぐ紅哉の元に戻ったヴリトラが遺跡を見渡しながら語る。



「それで神獣を倒すのかしら?」


「そうだ。これを倒せば神の遺産をゲットというところ」


「分かりやすいじゃない」



起き上がったスフィンクスの口から石化ブレスが吐きだされるが、これをカオスブレスとプリズンブレスで押し返す。



「癒理!ゲイボルグは使えるか!?」


「分かりました!発動に入ります!」


「ヴリトラ。癒理のゲイボルグが完成するまで守っていてくれ」


「分かったわ。あ、そうだ紅哉。ニルが返事をしてくれなくて拗ねているわよ」


「知らんがな!!」



紅哉は朱音と彰の援護に入った。後でアイスでも買ってやるかな、と考えた。



「オラァ!」


「紅哉兄さん!」



彰は紅哉に襲い掛かる右足を光の槍を投擲して位置をずらす。

紅哉はスフィンクスに出来た隙を利用し、顔へ龍の拳を叩き込む。

紅哉へ敵意をむき出しにしたスフィンクスだが、その直後に朱音が空中から真っ逆さまに落ちながら回転切りでスフィンクスの身体を切り裂く。



「さあ、どっちに攻撃するのかな?」



朱音は楽しそうに剣舞を踊る。紅哉と彰には朱音の動きが稲妻にしか見えない。

そう、紅哉と彰でさえ朱音の動きを捉えることなど出来ないのだ。



「紅哉君!」


「分かった!」



朱音はスフィンクスに攻撃しながら紅哉に呼びかける。紅哉は一瞬で理解し、背中の翼を展開する。

翼には光が集まりだし、翼をつたって光は口に集まる。



「オーディン!君の力を!」


「我が主の期待に応えよう」



彰はユニゾンを解いてその隣にはオーディンが聖槍グングニルを構えた。



「今だよ!」



朱音はスフィンクスの顎を打ち上げた。



「シャインシャワーブレス!」


「我に勝利をもたらせ!グングニル!!」



紅哉は光のブレスを放った。光は途中で6つに分かれ、スフィンクスに襲い掛かる。

グングニルを放ったオーディンの床は抉れ、スフィンクスの身体を撃ち抜いた。

シャインシャワーブレスがスフィンクスに直撃すると、光が爆発し、スフィンクスは真後ろへ転倒する。



「まだ生きているのか…!」


「ほう、流石は神獣だ」


「癒理ちゃんどう!?」


「行けます!離れてください!」



癒理のゲイボルグは赤黒いオーラを纏っており、見るだけで魂が底から冷えるような感じがした。



「運命を切り裂け!ゲイボルグ!」



禍々しいオーラを纏った死の魔槍が放たれた。黒い閃光はもう相手の運命を死へと導いていた。

必殺必中の魔槍はスフィンクスの心臓を貫き、スフィンクスはゆっくりと消えて行った。



「あら、なんだかアタシはいらなかったようね」


「すまないな。でも、癒理が攻撃されたら俺達は勝てたかどうか怪しいんだぞ?」


「そう、ならアタシは仕事がなかっただけでしっかり役目をこなしたのね」



ヴリトラは欠伸をしながら霊体化していった。



「オーディンもゆっくり休んでいてくれ。グングニルかっこよかったよ」


「ふっ……では、主のお言葉に甘えるとしよう」



オーディンは満足したように笑い、そして霊体化していった。

スフィンクスが倒された事を知った遺跡は奥へ通じる最後の扉を開いた。

紅哉はほっと胸を下ろし、歩き始めると勝手にユニゾンが解けた。



「ん?」



目の前には機嫌が最悪に悪い人間姿のニルがいた。



「この空間はどうやら顕現したパートナーではないと会話が出来ないとかそうで」


「アイスだ。アイスで勘弁してやる」


「はいはい。買ってきてやるよ」


「ふん」



ニルはそれだけ言いたかったのか、それを言うなり鼻を鳴らして霊体化した。



「あれ?そうなの?あたしのゲオルギウスは普通に会話が出来たけど」


「え?それ本当なのか?ニルとヴリトラは俺に呼びかけたけど反応がなかったって」


「どうなっているんだろうね?」


「僕もそうかもしれませんね。まぁオーディンはおしゃべりではないので気にはなりませんでしたが」


「リンもそうでしたね。リンも退屈だったようです」



癒理もユニゾンを解除した姿で紅哉の元まで歩いてきた。

一同で頭を捻っても答えは出ない。



『紅哉くん、何はともあれ、この奥に神の遺産があるみたいだよ。強いエネルギー反応を感じる』


「分かった。みんな行こう」



朱音だけ大剣を背負っている。万が一に備えているのだろうか。

紅哉たちは黄金の階段を上り、開いた扉の奥へ進んだ。中は薄暗く、そして何より目を引いたのは奥の台座に輝く指輪だ。



「あった!」


「良かった…今回はアヴェンジャーズに先をこなされなかったようだね」


「あれが神の遺産ですか……」


「兄さんやりましたね!これで舞香姉さんの感情が戻りますよ!」



紅哉は台座の元まで走った。そしてついに指輪を手に取り、神の遺産を手に入れたのだ。



「神の遺産!ゲットしたぜ!」


「良かったね紅哉君。これで舞香ちゃんの感情が戻るね」


「師匠……おめでとうございます………ん…?」



癒理は目頭の涙をふくと、すぐに周りをキョロキョロと見渡し始めた。



「兄さんこれは…お約束の…」


「だな。遺跡が………崩れる…」


「万歳するのはこの遺跡を抜けてからだね!」



朱音はそう言うなり部屋を出て行った。それに続いて紅哉達も部屋を出る。



「な!?」



部屋を出ると、そこはもう海だった。水が溢れ出し、どんどん水の量は増えて行く。



「水を走るしかないようだねぇ……」



朱音は紅哉たちの方を振り返った。



「彰君。君のスレイプニルなら空も走れるね?」


「はい。問題はありません」


「なら、スレイプニルに癒理ちゃんを乗せて」



彰はよく分からないなりにもスレイプニルを召喚し、彰は癒理を乗せて自分も搭乗した。



「スレイプニルはあたしが導く。皆は絶対目を開かないでね?これはお姉さんとの約束」



朱音の目はいつもの冗談とは違っていた。本当に皆を生かすつもりで言っているのだ。これには紅哉たちも頷くしかなく、何も言わなかった。



「あれ?朱音さん、俺は?」


「紅哉君は……あたしがお姫様抱っこするの♪」


「はい………よろしくお願いします…」



可愛らしくウィンクをした朱音に紅哉は複雑な気分になった。男がするならともかく、女の人からされるのはちょっと恥ずかしい。



「それじゃあ、今から目と耳を塞いでね!」


「え?耳もか?」


「ほらほら早く!」



紅哉たちは目と耳を塞ぐ。それを確認した朱音は大剣を取り出す。



「Set.002!リヴァイアサン!」



朱音の髪の色と瞳の色が変わる。そして朱音の周りをまわりだした青い宝玉が大剣に入る。

すると刀身は青くなり、朱音が纏う雰囲気も変わる。



「よし。耳はもういいよ~」



大剣を背中に刺し、紅哉たちの手を退かしてあげる。そして朱音はそっと紅哉をお姫様抱っこする。



「スレイプニル!あたしについて来て!」


「ヒヒイーン!!」



朱音は水上を走り出した。それに続いてスレイプニルが走りだす。



「紅哉君!あたしにもっと掴まって!」


「わ、分かった!」



朱音は紅哉を右手だけで支え、左手に聖剣アスカロンを構える。



「Set.002!インストール!」



青い聖剣アスカロンは青いオーラをにじませ、それに水が反応する。

水はまるで生きているかのように落ちてくる瓦礫に食いつき、朱音たちが走る通路の安全を取ってくれる。

これはまさしく、冥王龍リヴァイアサンの力そのものだ。



「一本道なのが幸いかな……もうすぐだよ!」



水中にはアヌビス達が朱音を見ており、サーベルを振り回していた。



「残念だったね。あたしにその常識は通用しないよ」



にやりと朱音は笑うと、入り口まで一気に走りきった。

その瞬間遺跡の入り口がガラガラと崩れ出した。その衝撃で紅哉が落ちそうになる。



「おおお!?」


「わわっと」


「え…?瑠璃…?」



一瞬だけ紅哉は朱音の姿を見た。群青色の髪色と青い瞳。紅哉はダメだと分かっていてももう一度だけ目を開く。しかし、そこにはいつもの赤い髪をした朱音の姿があった。



「もう邪魔だな~」



崩れた瓦礫を一閃すると、瓦礫が吹き飛んで入り口が顔を出した。



「彰君!もうスレイプニル出さなくても大丈夫だよ」


「はい。ご苦労だったね」



スレイプニルは彰に顔を撫でられると、ひと鳴きして光となって消えた。

丁度地上へ上がる階段の所でスレイプニルを解除したので、癒理と彰は濡れずに地上へ上がれた。

彰と癒理が外に出ると、既に紅哉と朱音は外に出ていた。

紅哉の手の平には黄金の指輪。強大な力を感じる宝石は美しく輝いている。



「相変わらずミストは濃いままだね」


「これは細工なのでしょうね。神による」


「だろうな。こうやって遺跡が発見されないようにカモフラージュをかけているんだろう」



紅哉はポケットから端末を取り出して起動する。こんな霧の中をただ普通に歩った日には迷子確定だ。



「アイリ!神の遺産を入手した!これから帰る」


『ミッションコンプリート!だよ!んじゃ、雅文さんに連絡して帰りの用意させるね!』


『紅哉、よくやりました。それを持って帰るまでがミッションですよ』


「分かっているって。んじゃ、さっさと帰る」



今まで静観していたセレナが優しい声音で紅哉を労った。



「よし!帰るか!」


「うん!帰ろう」


「帰りましょう。師匠の家に」


「兄さん、帰りましょう」



前は濃い霧で見えないが、紅哉にとっては晴れて見えた。

そんなはずはないのだが、何故か霧が晴れて見えたのだ。


朱音の力がフルに発揮された7章でした。あ、いえ、まだ7章は続くのですが、遺跡はこれで終わりです。

あとこれからショートコーナーをちょくちょく入れていきたいと思います。

ニルとヴリトラのショートコーナーです。

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