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龍の血を引く者  作者: また太び
6章 平和な日常?
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娘のための戦い

翌日。紅哉は修行をさせて貰った玲奈の家の方に恩を返したいと言って玲奈、美雪、瑠璃と共に神社の掃除をした。



「ふぅ!こんなもんかな」


「お疲れ様です、紅哉さん」


「あ、玲奈か。大分綺麗になったと思うんだけど、どうかな」


「はい。結構ですよ」



雑巾をバケツに入れると、スポーツドリンクを持ってきた玲奈が歩いてきた。

紅哉は玲奈からスポーツドリンクを受け取ると、ぐぐっと飲む。



「ぷはー!やっぱ動いた後に飲むジュースは違うな!」


「喜んでもらえて光栄です」


「いや~ホント玲奈にはお世話になったな」


「いえいえ、妹の美雪のパートナーの開花を手伝ってもらえましたし、ホントは礼などいらないのですよ。むしろこちらがすべきことです」


「いや…美雪ちゃんのは………名前間違えていただけだしな…」


「はい?どうかしましたか?」


「いや、何でもないぞ。よし、居間に戻るとしよう」



パートナーの呼ぶべき名を間違える事は恥ずかしい事なのだ。美雪もそれを分かっているからこそ姉の玲奈にうまく誤魔化して開花した、と言ったのだろう。

なら、紅哉も黙っているのが筋だと思った。



「なんだかのんびりしてていいね~」



居間に戻ると、先に掃除を終えた美雪と瑠璃がお茶を飲んでいた。



「そうだな。うちの家とは違う和みがある」


「なら、一生うちにいらしていいんですよ」


「あぁ!紅哉さんお姉ちゃんの冗談だから気にしないでください!そんな瑠璃姉ちゃんも立ち上がらなくていいから!」



瑠璃は何も言わず座り直す。ホントこの二人は紅哉関係の事だとすぐ喧嘩が始まる。

何と出来た妹だろうか。事前に喧嘩を止める辺りが素晴らしい。



「紅くん。いつ帰るの?」


「ん、もう行こうと思っていた。そろそろ帰らないと舞香が心配するからな」


「そうだね~、舞香ちゃんは紅くん大好きだもん」


「妹さん?ですよね」


「あぁ。なんだかいつまでも兄離れが出来ない妹でさ。この前アメリカから帰って来た時も数時間くらい離してくれなかったんだ」


「紅哉さんが大好きなんですね」


「あ、それならこれ持って行ってください!」



美雪は立ち上がって台所へ行くと、たくさんの野菜と魚を持ってきてくれた。



「せめてのお礼です。紅哉さんには本当に感謝しています」


「俺に礼を言うのは筋違いだ。ニルに言ってやれって」



瑠璃の前でせんべいを食っているニルに美雪は近寄った。



「ニルさん!本当にありがとうございました!」


「うむ。余りパートナーを困らせるなよ」



礼儀正しく頭を下げた美雪に対してニルはテレビを見たまま生返事で返した。

ニルの態度はもうどうしようもないので、紅哉は「こんなやつですまん」と逆にこっちが頭を下げた。



「いえいえ!そんな滅相もございません!ニルさんは龍ですから、人間の常識が通用しないのは分かっていました。これは私のけじめみたいなものです」


「だってよ、ニル」


「ちっ……何かしないといけないみたいに言うな」



ニルは手の平を前に出すと、そこに口から黒炎を吹きつける。すると手の平には七色に輝くクリスタルが出来ていた。



「エヴォルトが自分のモノにしてから聖属性の炎も操れるようになった。これは龍に伝わるお守り。そしてオレの特製だ。聖なる審判による効果で太陽の光を吸収して暗い場所でも明るく光る。これをお前にやろう」



ニルはポケットから紐を取り出してクリスタルに通す。ペンダントになったクリスタルを後ろに放り投げて美雪へ渡した。



「わぁ……綺麗…」


「良かったね、美雪」


「はい!ニルさん!大事にしますね!」


「ねぇ紅くん。私もあれ欲しいなぁ…」


「え?瑠璃もか?」


「ふん、リアにでも作ってもらえ。アイツなら青いクリスタルだろう。瑠璃のお前にぴったりだ」


「なら、アタシは玲奈にプレゼントしようかしら」


「な!?ヴリトラ出て来るなよ!」



突然ニルの隣に現れた人間姿のヴリトラはニルと同じく黒紫の炎を手の平へ吹きかけると、紫色のクリスタルが完成した。



「さ、あなたのよ。アタシは生粋の邪龍だからこんな色で申し訳ないわね。アタシのクリスタルは邪悪な気配をすぐに察知する能力よ。でも、あなたには天狐がいるから余り意味がないわね」


「それでもありがとうございます。ほのかにですが、このクリスタルから龍の波動を感じます」



玲奈はクリスタルを見てうっとりし、瑠璃は羨ましそうに見ている。美雪はさっそく首にかけて鏡にその身を映してくるりと回る。



「むー!やっぱりニルちゃん作って!」


「ぬあ!抱きつくな!」


「アイス買ってあげるからぁ!」


「む……いいだろう」


「お前安いな!さっきはリアに作ってもらえとか言ってたくせに!」


「アイスを交渉の場に出されたら話は別だ」



ニルは同じく炎を吹きかけると、金色に輝くクリスタルが出来上がった。

その結果にニルは首をかしげた。



「む……おかしいぞ。さっきと同じ用量でやったのだが」


「あなたこれ幸運のクリスタルじゃない。アタシたち龍が純粋な気持ちでお守りを作る時に稀に出来るそうよ」


「お前どんだけアイス好きなんだよ……」


「聖龍でも作る事はほとんどないらしいわ。ましてやアタシ達のような邪龍には到底出来ない芸当なのだけれど」


「邪な龍と書いて邪龍だもんな」



ニルは紅哉の言葉に顔を歪ませつつも美雪にした時と同じ風にペンダントを作った。



「ニルちゃんありがとうね!」


「うむ。約束を忘れるなよ」


「うん!帰りに買ってあげるね!」



ご機嫌な瑠璃はそのままスキップしながら荷物をまとめに行った。



「んじゃ、短い間だったが、お世話になった」


「またね、玲奈ちゃん、美雪ちゃん」


「ええ、また会いましょう。紅哉さん、瑠璃ちゃん」


「また来てくださいね。紅哉さん、瑠璃姉ちゃん」



紅哉は瑠璃の荷物と自分の荷物を持って玲奈の家を後にした。途中のコンビニでアイスを山のように買ってニルに与えると、ニルは目を輝かせて食らいついた。

そして紅哉の住む東京へ飛行機が到着する。空港の駐車場で渡辺さんが待っていると言うので、最後まで渡辺さんにはお世話になった。



「渡辺さん、ありがとうございました」


「紅くんまたねー!ホントは今日もゆっくりしたかったんだけど、お仕事があるから。水曜日くらいから一緒に学校に行けると思う」


「分かった。また水曜日会おう」


「んじゃ、まったねー!」



紅哉を降ろしてすぐに瑠璃は仕事へ戻った。アイドルは忙しいものだな、と紅哉は改めて実感する。



「本当に俺のために時間を割いてくれたんだな…」


「あ、紅哉君おかえり~」


「ただいま、朱音さん」



花に水をまいていた朱音さんが手を振って紅哉に挨拶をする。

そして水を止めると、紅哉の元に走って来た。



「ねぇ紅哉君。こう、身長2mくらいの男の人でやたら筋肉モリモリのサングラスにスーツ着た人知らない…?」


「え?身長2mくらいの筋肉モリモリのサングラスをかけたスーツ着た人?」



そんな知り合い。心当たりがあるわけ―――と言おうとしたところでただ一人だけ該当した。



「いる……………それ凄い知っている人…」


「ええ!?だ、だだだ誰!?あのね、昨日その人来てさ、喧嘩になったんだよ!」


「なんだって!?」



そう、それは昨日の午後のこと。

その日は四条家の皆さんが紅哉の家に来たという。丁度紅哉は玲奈の家に行っており、留守にしていたのだが、セレナと舞香がいるので特に問題はなかったそうだ。



「セレナー!来たぞー!」


「コラ!もっと品よくしたらどうなのですか」


「セレナお姉ちゃんアイリが来たよー!」


「来ましたか。しかし、呼んだのはアイリと母上だけなのですが」


「なっ!?父ちゃんが娘に会いに来るのに理由が必要なのか!?」



娘に呼ばれなかったこの大男の名は四条クロフィード。身長2m強ある男でロシア人。Bランク程度の魔物なら素手で倒す炎道家最強のガードマンであり、セレナの師匠でもある。



「まぁそれはいいですから、どうぞ入ってください」


「お邪魔しまーす!」



久しぶりに姉に会えたのが嬉しかったのか、アイリはセレナに抱きついたまま一緒に中へ入って行った。

それに続いて麗華とクロフィードも火神崎家へ足を入れる。



「いらっしゃい……みんな久しぶり…」


「おお!お嬢久しぶりだな!」


「クロフィード……相変わらず大きい…」



舞香はクロフィードに持ち上げられると、そのまま肩車の形になる。



「舞香も久しぶりね。元気にしてた?」


「うん……お兄様も私も元気………アイリも久しぶり…」


「やっほー!舞香ちゃん!アイリも元気だよ~」



もはや四条家と炎道家は家族と言っても過言ではない。幼いころから紅哉と舞香を見てきた四条家の人間はもう二人は息子と娘同然だ。



「それで、神の遺産のありかは分かりましたか」


「うん!すっごいんだよ!あの紅哉くんが貰って来たプログラムね!アイリでも関心しちゃうほど高度なものだったの!でもアイリはそれを改造して察知できる範囲を伸ばしたけどね~」


「あ~アイリが言うには神の遺産の反応が日本であと7つあったそうだ。その遺産をどこから攻めればいいのかというのを紅哉と相談して決めたかったんだが」


「生憎紅哉は留守のようね」


「ええ。いま紅哉は刀條玲奈の家でエヴォルトの修行をしています」


「おお!?坊ちゃんがエヴォルトに至ったと!?」


「確か瑠璃ちゃんは刀條家と従姉の関係にあるそうだったわよね」


「流石母上、その通りです。それで明日らへんには戻ってくるのですが」


「別にお兄様がいなくても大丈夫……」


「そうだな。坊ちゃんにはセレナの方から後で伝えておいてくれい」


「分かりました。それで、まず一番近い神の遺産はどこでしょうか」



そこで火神崎家にインターホンが鳴り響いた。

話しを聞いていた龍一もメイド達も今日の来客は四条家だけで終わりだと思っており、これは不意を突かれた形となる。



「あ、私が出ますね」



メイドの一人が玄関の扉を開けると、その男は入って来た。



「ここが火神崎家か……確か彼の旧姓は炎道のはずだが…」



大男だった。身長2mくらいで筋肉モリモリのサングラスをかけてスーツを着た男は火神崎家へ足を踏み入れた。



「あ、あのどう言ったご用件で…?」


「む……火神崎紅哉に娘の結婚について話がしたい」


『……………は?』



誰もが唖然とした。何事だとセレナ達も玄関に出ると、クロフィードはその男を見るなり目の色を変えた。



「お前……アディーニか…!」


「貴様……クロフィードか」


「え?お知り合い…?」


「えっと、私もよく知らないんだけど、クロフィードの古い友人らしいわ」



朱音の言葉に麗華がひそひそ話で答えてくれた。



「んで、お前さんあろう方が坊ちゃんの家に何の用だ」


「もう一度言おう。私の娘との結婚について話があってきた」


「なぁ、俺の耳がおかしいのか…?こいつ娘との結婚とか言っているんだが…」


「いえ、わたしもはっきりと結婚と聞きましたね」


「お兄様はいないよ……」



クロフィードが困った反応を見せている間に舞香が小首をかしげながら男に答えていた。



「なるほど。どこに行ったのだ?」


「それ言う必要があるのか?」



そう、エヴォルトの事を知られるわけには行かない。

クロフィードも分かっているからこそ皆を庇うように前へ一歩出る。



「私も予定が詰まっているものでな。出来れば穏便に済ませたいのだが」


「ほう、俺とやるってか」



ガキン――――!クロフィードのストレートが男の顔に突き刺さった。丁度扉が開いていたのが幸いか、男はそのまま外へ飛んで行く。



「ちょっとクロフィード!」


「というか今金属みたいな音しなかった?」



クロフィードはそのまま服を脱ぎ捨ててワイシャツだけになり、外へ出て行った。



「あれは…父上は本気ですね。それほど油断のならない相手なのでしょうか」


「というかいきなりお父さんぶん殴るの!?」



皆クロフィードを追って外へ出ると、何かが飛んできて壁に激突し、派手に壁は崩壊する。



「お父さん!?嘘!?あのお父さんがここまで飛ばされるの!?」


「ええ!?あの化け物みたいな強さのクロフィードさんが吹っ飛ばされるの!?」



アイリと朱音はほとんど同じコメントをしてクロフィードが飛ばされた事実に驚く。

煙の向こうには右拳を前に突きだしたままの男がおり、首をゴキリと鳴らす。



「クロフィード。随分と腕がなまったようだな。その程度ではロシアの荒熊を名乗れんぞ」


「ぬかせぇ!」



今ので頭に来たのか、クロフィードは弾丸のように飛び出し、そこからクロフィードと男の殴り合いが始まった。



「あの父上と互角に殴り合えるとは……」


「クロフィードの拳はBランク程度の魔物なら即死よ。それを何度も受けてビクともしないなんて……」


「お前も仕事ばっかしてたるんでいるんじゃないのか!?」


「私は娘のために頑張っているのだ。娘のためなら何でもしよう」



激しい攻防は続く。二人の服はボロボロになり、額からは既に血が流れている。



「父上が押されている…!?」


「そうね…このままじゃクロフィードは負けるわ」


「むむ……この化け物たちの嵐に突っ込むのはあたしでも気が引ける…」



流石の超人たちもこの化け物と化け物の戦いに首を突っ込む気にはならなかった。



「お父さん頑張ってー!負けたらアイリ許さないよー!」


「むう!?」



娘の応援が届いたのか、クロフィードに活力が戻ったような気がした。



「父上。弟子の前で負けることは許しませんよ」


「クロフィードが負けるのはちょっと嫌……」


「うおおおおお!」



娘を思う気持ちがクロフィードに力を与える。オーラを纏ったかのように見える闘志はクロフィードの力そのものだ。



「これで終いじゃあああああ!」



クロフィードのアッパーは男の腹に突き刺さった。

そして男はガクリと膝をつく。



「ぬぅ………まさか貴様も…」


「俺には大事な娘と息子がいる。その前じゃあ負けるわけにはいかねぇ」



男は膝をつくのも短時間で回復し、背を向けて来た道を帰って行った。



「何だったんですか……?あの男の人は……」



龍一の疑問に誰も答える事は出来なかった。





「という事があったんだよ~」


「それ……豊姫のお父さんだ…」


「えええええええええええええ!!!!」



朱音の絶叫が山に何度もやまびことなって反響した。


言ってしまえば、どちらも親ばかということです。ちなみに豊姫の父親はロシア人です。ということは豊姫のハーフということですが、彼女の見た目から日本人よりのハーフということですね。

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