龍の種族
「案外あっさりエヴォルトをものに出来たのな」
「何を言っている。それはマスターが辛い思いをしていないからそう思うだけだ。実際オレは8時間戦っていたのだぞ」
「8時間もか!?あ~実際は辛かったんだな」
紅哉は布団にくるまりながらゲームをしているニルに話しかけた。ニルからの返答は苛立ちを含んでいたが、ヴリトラとのゲームで忙しいらしい。
「なァ、どうやってエヴォルトをものに出来たんだ?」
「龍の理性を捻じ伏せた。龍戦士としてのオレはまだマスターを認めていなかったらしい。そこで身体の主導権を持っている今のオレが無理やり従わせた。マスターのエーテルを馬鹿食いしてたのもきっとこの龍の方のオレなのだろう。実際オレにはマスターのエーテルを馬鹿食いしている理由が思い至らなくてな」
「あ~なんだ?お前が初めてエヴォルトした時に数十秒しか持たなかったのもそのせいだと?」
「そうなるな」
ニルはそれっきり答えなくなった。
ニルとヴリトラはアクションゲームをしている。いわゆる格ゲーという奴だが、ヴリトラは吸収力が高いのか、最初こそはニルに負けっぱなしだったが、今ではニルと互角に戦うゲーマー力を見せた。
そのせいでここ最近紅哉の学校についてこないで二人して家でゲームをしている。
要塞崩しがある場合は霊体化してすぐ飛んでこれるので、何も不自由はないのだが、紅哉は少し寂しかったりしている。
「お前ら随分と人間の世界に馴染んだよな」
「そうね。このゲームというの?面白いわね。舞香とかニルが夢中になるのが分かるわ。でも、どうしてリアはゲームをしないのかしら」
「アイツは寝てばっかだからな。水以外興味のないつまらない龍だ」
「そうだ。ヴリトラは龍の里でリアと会ったことあるのか?」
相変わらず顔はゲームの画面だが、どうやら話には乗ってくれるそうだ。
「あるわよ。でも、ほとんどニルと同じ答えよ?」
「あ~寝てばっかって?」
「ホントつまらない子だったわ。湖を支配するミドオルガズなら何か知っていると思うかもしれないけれど、何も接点のない邪龍のアタシたちは彼女の事は何も知らないわ」
「ほう。そのミドオルガズって?確か伝承だと悪神ロキから生み出された龍だとか」
「そうなっているな。アイツも龍の里では寝てばかりだ」
「でも、あの龍はダハーカに匹敵する力を持っていたわ。寝てばかりで皆彼の事を馬鹿にしていたけれど、ダハーカとバハムートは彼の事を買っていた」
「実際アイツは強かった。龍の里が崩壊する時も湖に攻めてきた天使と神を一瞬で葬ったそうだ」
「おお!やれば出来る子って奴だな!」
「聞いた話だがな。本当の所は分からない。アイツと一番親しかった奴などいない。なんせ寝てばかりの奴だったしな」
「そうねぇ。湖に住む龍全て寝てばかりじゃないかしら」
「それに比べて翼龍どもはうるさくて敵わん」
ニルとヴリトラは昔の思い出を楽しそうに語る。滅多に聴けない事なので、紅哉はそのまま黙って話を聞くことにした。
「アンフィスバエナとかうるさかったかしら?」
「あぁ、あの顔二つある龍か。どっち喋っているのか分からん奴だ」
アンフィスバエナとは顔が二つある龍だ。尻尾にも顔があるそうで、これも邪龍だ。
「紅哉、良い機会だから龍の種類について教えておきましょうか」
「お、是非頼む」
「まずアタシの種族は地龍という種族よ。翼を持たず4足で地を高速で走り回ったり、地に潜る事が出来るわ」
「地龍にしか地に潜る事は出来ない。オレはどうしても翼が邪魔になる」
「次に翼龍よ。翼があるけれど地を素早く歩くことが出来ない年がら年中空を飛んでいる龍だわ。でも、翼龍は空にかけては誰にも負けない」
ヴリトラはどこからかホワイトボードを取り出してキュッキュと簡単な絵を描いて説明してくれる。
「次に水龍。水龍はその名の通り水で生きる龍だ。もちろん陸も歩くことは出来るが、そこまで速くはない。空も飛べないし、一番不遇な種族と言われている」
「そうね。リアも本来は水があってこそ生きる龍だと紅哉も身を持って知ったでしょう?」
「あぁ。水を得たリアは誰にも止められない」
「うむ。水を得たリアは恐らく龍族でもトップクラスの実力だろう。だが、本人が自分は弱いみたいな事を思っているのが気に食わんが」
紅哉は思いだした。確かにリアは自分は龍族でも弱い方だと言っていた。
「つまり、水を得た水龍は種族の中で一番強いのよ。水龍と戦う時は水からどれだけ引き剥がすかで勝敗が決まるわ」
キュッキュとリアを模した絵の上に『強い!』と書かれた。
「最後に龍人種よ。そこにいるニルが良い例ね。龍人が一番種族内で優秀だと言われているわ。陸ももちろん、空も飛べるオールラウンダーな戦士よ。バハムートもこの龍人種に属するわ」
「へえ、ニルって優秀だったのか」
「そうだ。オレは水龍と戦う事が多かったせいか、水にも少しの間だが、潜る事も出来る。だがまぁ、水の中で戦うのは自殺行為には変わらない」
「なァ、東洋とかの龍いるだろ?あの身体の長い龍。あれはどこに属するんだ?」
「あれは例外よ。あの種族はどこにでも属することが出来る。水にも潜れるし、空も飛べるし、土にも潜る事が出来る。その分個体数は少ないけれど」
「そこでつけられた名が龍神種だ。全てを制する事から龍の神という位置づけというわけだ」
「龍の里じゃあ龍神種に喧嘩を売ろうとする奴はいなかったわ。なんせ彼らは別格なんだもの」
「滅多にオレ達の前に姿を現さない。ただ例外が一体いたがな」
「ん?例外って?」
「いや、何でもない」
ニルは何でもないと言ってその話を打ち切った。
「龍神種はほとんどバハムートの近くにいたし、アタシたちが拝めるようなものではないわ」
「えっと、簡単に言えば俺達の世界で言う貴族みたいなもんか?」
「そうね。その言葉が合っているわ。龍の里の危機が訪れても知らんぷりだったし、宝玉を使う時もいなかったわ」
「え?んじゃ既に死んでいるんじゃ…?」
「それはないな。アイツらは神の攻撃を受けてもビクともしない奴らだ。少なくとも生きている」
聞けば聞くほどその龍神種の事が気になりだした。会って話がしてみたいと紅哉は思った。
しかし、今はもう既に龍など失われた存在。今いる彼女らもいること自体が奇跡なのだ。
今は彼女らの話を聞くだけで我慢した紅哉だった。
「真実は全てバハムートが知っているということか…」
「バハムートが龍の里がどうなったかを知っているし、龍神種がどういう存在なのかも知っている。しかしまぁ、もうバハムートはいないだろうが」
「流石にあの数の天使と神を相手に生き残る事は絶望的よね」
「バハムートが生きていたとしても何をしでかすか分かったもんじゃないが」
「ん?バハムートって良い奴なんじゃないのか?」
「まぁ聖龍の王様だから一応良い龍よ。でも、略奪が好きなお方ではあったわね」
「アイツが集めた財宝も全て奪ってきたものだ。龍の里の治安を守るためにオレたち近衛兵に暴力で解決を求むような奴だったしな」
「邪龍に寝返った龍のほとんどがバハムートの支配する里が嫌いな奴ばっかよ。ニルもそれで邪龍に落ちたのでしょう?」
「グリンデルに負けたのもあるが、元々アイツのやり方が気に食わなかったのもある」
なんだかバハムートは暴君だったそうだ。龍を逃がしたエピソードから良い奴だと思っていたが、実際はそうでもないようだ。
「ま、龍の事はこんなもんだ。今更いない奴の話をしてもしょうがないし、今日は寝るとしよう」
「アタシも眠くなってきたわ。先に寝させてもらうわね」
「うむ、オレも寝るとしよう。ヴリトラ、明日また勝負だ」
「いいわよ~。それじゃ紅哉。また明日」
「おう、おやすみ」
そう言って二人は消えて行った。
「ニル達も色々あったんだな~」
ニルとヴリトラが住んでいた龍の里がまた少し聞けて紅哉は嬉しかった。
余りニルは喋りたがりやではないので、ヴリトラがパートナーになってくれていい感じに話が進む。
舞香には少し感謝しなくてはな、と紅哉はそう思って眠りについた。
なんだか最近読んでくれる人が多くなってきて嬉しい限りです!ホントこの小説は自分が書きたいから書き始めて、少しでも誰かに見て貰えるのならそれでいいかな~程度に思っていたのですが、やっぱり多くの人に読んで貰えるというのは本当に嬉しいものですね。
上にいる大先輩方には敵いませんが、少しでも読んでくれる人がいる。これだけで私は十分ですね。
あとがきはこんなものでいいのでしょうかね。小説の内容に何も触れていませんが。




