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龍の血を引く者  作者: また太び
6章 平和な日常?
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刀條玲奈

『紅くん!明日玲奈ちゃんの家に行くよ!』


「なんだって!?急だな!!」



と、突然瑠璃から電話がかかって来たと思ったらこれだ。まぁ明日は土曜日なので問題はないが。


それで紅哉はいま瑠璃のマネージャーの渡辺さんに車を運転してもらい、玲奈の家へ向かっていた。



「少し急すぎるぞ」


「ごめんね~。渡辺さんが仕事ばっか入れるもんだから」


「あのねぇ瑠璃………仕事をするのが普通なのよ?あなたは学生という本分もあるからこうやって休めているけど、本当は仕事尽くしよ」


「昨日からこうなんだよ?紅くん」


「いや…あぁうん…そうだね」


「それで紅哉さん。聞きましたよ。エヴォルトに至ったのですね。おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「もちろん誰にも言う気はありませんよ」


「渡辺さんにならいいかな~って思ったの」


「信頼しているんだな。渡辺さんのことを」


「渡辺さんとは付き合い長いからね!私が小学6年生の頃からの付き合いかな?」


「その頃はまだ無名でしたけどね」


「お、少し気になりますね。瑠璃とどうやって出会ったんですか?」


「瑠璃とはオーディションで出会ったんですよね。これが歌が下手で下手で」



渡辺さんは面白かったのか、クスクスと笑う。それを見て瑠璃は頬を可愛らしく膨らませる。



「あの瑠璃が下手だったのか。今じゃ考えられないな」


「ひっどいんだよ!試験監督の渡辺さんの含めた3人全員笑ったんだよ!?」


「もちろん不合格にしましたけどね。でも、私だけは彼女に何かあるような気がして、不合格になった瑠璃を引き取ったんです」


「あ、そっか。瑠璃は一人だもんな…」


「ええ。それで歌のレッスンをしていくうちにこの子なら売れる!と確信を持てるようになったんです」


「瑠璃はいつにデビューしたんだっけ?」


「私は中学2年生の頃だよ~」



瑠璃は幅広いジャンルをこなす。熱い歌も泣ける歌も、それが全てこの人類に受け入れられている事に紅哉は誇りを持っていた。

もちろん彼女のライブは必ず参加している。



「瑠璃はなんで歌うようになったんだ?」


「えっとね、お母さんとお父さんが褒めてくれたからかな」



瑠璃は恥ずかしそうに群青色の髪を弄りながら答えた。



「結果は不合格の試験監督に笑われましたが」


「そこうるさい!でも、お父さんとお母さんが褒めてくれた歌だから、諦めたくないと思ってオーディションで頑張って、歌のレッスンも頑張って、今があるんだ」


「あ、私が事務所に推薦書を出したわけじゃないですよ。あくまで私は彼女の手助けとして歌のレッスンを行っただけです。オーディションは彼女の実力で合格したんですよ」


「瑠璃は凄いな。ナイスガッツだ!」


「うん!紅くんが応援してくれているから最近ホント調子がいいんだ!」


「そ、そうなんですか?渡辺さん」


「そうですよ。瑠璃は最近ホント歌の調子がよくって、今日休暇を取れたのもスケジュールが思ったよりも早くなって空きが出来たからなんですよ」



瑠璃は芸能活動も頑張っているようだ。最近テレビに出ることも多くなっているし、彼女は仕事に生きがいを持っているようにも思えた。



「もう紅くん家に引っ越そうかな~」


「おう、別にいいぞ」


「だよね~。そうすれば電話なんかしなくていいし~」


「俺も瑠璃がいれば毎日楽しい」


「そうだよね!んじゃ、今日から荷物まとめて紅くんの家に引っ越す!」


「待ってくださいよ!そんな事したらマスコミ対策が大変じゃないですか!?」


『あ、そうだった』


「全くあなた達は………あなた達は自分の身分が分かっているんですか?アイドルと龍人ですよ?そんな二人がいれば問題でしょう……正直あなたの家に泊まる事自体危ないのです。記者からは瑠璃さんってどこに住んでいるんですか!?とか聞かれるし、瑠璃だって覚えているでしょう?家の前で待ち伏せさせられたこと」


「そんな事があったのか…」


「うん……あれは怖かったね……どこから漏れたのか分からないし、本当に家を出るのが怖くなったよ…」


「そいつはどうなったんだ?」


「ストーカーで訴えましたよ。私は瑠璃のマネージャーでもあり、親戚の方から任された親代わりなのですから」



渡辺さんは本当に怒っているようだ。どこか紅哉とセレナの関係に似ている気がした。厳しいながらもどこか優しさを秘めた接し方に。



「渡辺さんの言うとおりだ。なら、俺が高校を卒業したら一緒に暮らしてもいいんだな!」


「は…?」


「うん!紅くんが卒業すれば結婚出来るもんね!それなら文句は言われない!私の事務所は恋愛自由だし!」


「だから瑠璃。いまは待っててくれ。もう少ししたら一緒に暮らせる」


「うん…!私待ってるね!だから、今はお仕事頑張る!」



瑠璃と紅哉は抱き合ってバカップルぷりを見せていた。

渡辺はもう頭をハンドルにぶつけて突っ伏してた。

ちゃんと運転しているのは流石と言うしかない。



「さあ!着いたよ!」


「おお……大きい神社だ…」



紅哉と瑠璃は渡辺に乗せられて空港へ着いた後、そこから飛行機に乗って鹿児島へ来た。

上まで続く長い石段の端にはテントが張られている。



「これはね。占いを頼みに来る人が多いから、雨の日でも濡れてしまわないように設置したものなんだよ」


「そうなのか。今日はいないんだな」


「私と紅くんが来るからお休みにしたんじゃないのかな」



瑠璃は懐かしいのか、ピョンピョン跳ねながら石段を昇って行く。紅哉は周りの景色を見ながら昇る。

一言で言うと鹿児島は田舎だった。交通機関は余り発達しておらず、車の音など全然聞こえない。

聞こえると言えば鳥のさえずりだろうか。春の風独特の香りや温かい気候が優しい風を運ぶ。

石段を昇り切ると、大きな鳥居の先に一人の巫女が箒を持って掃除をしていた。



「あ、お待ちしておりましたよ。紅哉さん、瑠璃ちゃん」


「こんにちは、玲奈さん」


「やっほー玲奈ちゃん」


「では、こちらへ」



玲奈は軽い足取りで敷地内を歩きだした。瑠璃は勝手を知っているせいか、さっさと歩いて行ってしまう。



「俺は遂に日本最強の魔術師の家に来たんだな」


「玲奈ちゃんはね、日本最強って言われるのが嫌いなんだよね」



俺の独り言が聞こえたのか、瑠璃は歩くスピードを落として俺と並ぶ。



「どうしてだ?名誉な事だろう?」


「玲奈ちゃんはもっと静かに暮らしたいんだってさ。だから、紅くんにエヴォルトの扱い方を教えるのは本当に運がいいよ。玲奈ちゃんは魔術を使う事は余り好きじゃないし、護身用で習った剣術も使う事も嫌い。争い自体が嫌いな子だから」


「珍しいな。佐鳥先生から天狐について聞いたが、相当強いんだな」


「うん。本当の神様だもん。私も見た事あるけど、とても友好的な関係にはなれそうにないね」


「どういう奴なんだ?」


「ん~……全てを悟っているような?そんな感じだね。というか、実際視えているんだけど」


「ん、ん~?会ってみない限り分からないな」



敷地内を進んでいくと、少し開けた場所に出た。そこで玲奈は待っていた。



「ここでいいですかね。では、パートナーを出してください」


「はい」


「あ、敬語じゃなくていいですよ。瑠璃と同じ風に喋ってくださいね」


「玲奈ちゃん?なんで急に紅くんにフレンドリーに接するのかなぁ?」


「何でもないよ?ただなんだか堅苦しいな~って」


「玲奈がいいのなら、それで」



紅哉はニルを呼び出した。



「大きいですね。では、天狐!来なさい!」



光と共に現れたのは巨大なキツネだった。全体で6mはあるだろうか。体毛は青く、もちろん尾は9つあった。



「お主が龍族の戦士か…」



しわがれたお婆さんの声だったが、どこか秘めている力を感じる。



「お前が日本に住む神の化身か」


「ふっふっふ…わしゃあそんなもんじゃない。ただこの目で龍を視たかったのだ」


「天狐。どう?」


「ダメじゃな。こやつ、主にいらん意地を張っとる」


「あ~あ………紅哉さん。ファーヴニルと何かあった?」


「ん?何のことだ?」


「分からないんだ……なら、ファーヴニルに言ってあげる。あなた、紅哉君のエーテル貪るだけ食って態度改めようとしてないでしょう」


「ぬッ!?」


「エヴォルトは、マスターとパートナーの信頼が強ければ強いほどエーテルを消費する量が減るの。つまりこの前電話で十数秒しか持たないって言ったけど、それはファーヴニルがどこかで紅哉さんを信頼してないからだと思います」


「え?そうなのか?こんな十年近く一緒にいたのに、お前はまだ俺を認めていないのか…?」



紅哉はショックだったようだ。瑠璃もバツが悪そうに顔を背けている。ニルの表情は険しい。その見つめる先は老いた九尾の狐だ。



「言葉が過ぎるぞ。キツネ」


「ほっほっほ。わしは本当の事を言っただけじゃ。わしの眼はありとあらゆるモノが見える。お主が歩いてきた道筋もな」


「………何が言いたい」


「ユニゾンを手に入れたのは協力関係が初めて成り立った時のようじゃの。そうじゃの、そこの小僧の妹が暴走したときじゃ」


「お前見えるのか!?」


「見えるとも。例えばそこの邪龍が緑の龍に負けた時の事とかじゃ」


「下らんな。オレはマスターを信頼している。この言葉に偽りはない」


「嘘じゃの。わしが言っとるのは心からではなく龍としてじゃ」


「龍としてだと…?」


「あのですね、紅哉さん。実は君に用があったんじゃなくて、ファーヴニルに用があったのです」


「え?ニルに用があった?」


「うん。エヴォルトはパートナーのリミッターを外す一種の暴走です。そのためにはパートナーが己の心と向き合う必要があります。そのために天狐にはサポートをしてもらうのです」



「紅くん、パートナーはこの現世に呼ぶ前に何らかの制限を設けるんだって。一番例えやすいのは舞香ちゃんのリアかな。あれは海より大きいっていう伝説を持つけど、そんな大きくなかったでしょ?」


「まぁ、そうだな。リア本人も言っていた。元の大きさに比べれば豆粒に等しいって」


「それが制限。世界に異常をきたさない程度に制限されるんだって。そして全パートナーにかせられるのが潜在能力の封印。まぁそれがエヴォルト」


「天狐。後はよろしくね」


「うむ。こやつは少し時間がかかるかもしれん。小僧、あと12時間は覚悟しろ」


「エーテルなら大丈夫だ。ニルは燃費が良い」



ニルは胡坐をかくと目を閉じた。どうやら修行を始めるようだ。


その間紅哉は玲奈による説明を受けることになった。



「人類最初の禁忌魔術師は120年前にいたと言われていました」


「120年前!?結構昔なんだな」


「そうだよ~。オーストラリアに住む青年だったらしいよ」


「彼の名はゴルバン。ゴルバンは人類最初の禁忌魔術師にして、人類最強の魔術師でした。しかし、彼の力を研究しようとした研究者によって彼は死亡。暴走したパートナーによってオーストラリアは8割がた崩壊しました」


「い、いきなり壮絶な話に……」


「実際の記録があります。これが120年前の新聞の写真です。見えずらいと思いますが、地図と比べると地形が変わっている事が分かりますよね」



地図に載っている120年前のオーストラリアの地形と今のオーストラリアを比べてみる?

もちろんここまでです。あれ以上書くと大変なことになりますからな!はっはっは!まぁこの先はご想像にお任せします。ぎりぎりセーフですよね。というかセーフですよね。

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